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あいつは俺の仇!  作者: 方結奈矢
第一部 四年生編
10/58

初詣


 「ママ、最近ね、痛いと思うことが多くなったの」


 「えっ、どこが、どこが痛いというの、リクちゃん?」


 「この辺が痛いの」


 「えっ、胸が痛いの?」


 「うん」


 「どんな時に痛くなるのリクちゃん?」


 「どんな時?それがよくわからないの・・・でもいつも翔介が一緒の時なの」


 「翔介君といる時にいつも胸が痛くなるの?」


 「うんうん、いつもじゃないよ」


 「いつもじゃないけど、翔介君と一緒の時に胸が痛くなるんだ」


 「うん、そうなの」


 「痛くなる時とならない時の違いは何かわかる?」


 「なんだろう・・・」


 「学校にいる時といない時、どっちが痛くなる時が多いの?」


 「学校の時だよ」


 「学校にいる時だったら、授業中、それとも休憩時間中?」


 「う〜ん 休憩時間中かなぁ・・・」


 「休憩時間中は、前みたいにいつも翔介君とニ人きり?」


 「うんうん、最近は違うよ。最近はみんなが翔介の周りに集まってくるの」


 「どんな人が集まってくるの?」


 「どんな人・・・最初は、隣のクラスの長谷部さん。そして長谷部さんのお友達の篠崎さんも最近はいつもついてくるようになったし・・・クラスの小糸ノンちゃんと本多千佳子ちゃんは、私よりピアノが上手で翔介に教えてもらいたくてすぐに来るの。それに上級生の音楽部の宮郷さんも来るんだよ」


 「なんの為に翔介君の所に集まってくるの」


 「なんのため・・・皆、翔介と話をしたがるの。長谷部さんなんか、話すだけじゃなくて、いつも家に、遊びに来てとか言って誘ってるくるし、篠崎さんは服とか髪型とか誉めてもらいたいみたいでいつもくるし、ノンちゃんと千佳子ちゃんはピアノの話をするし、上級生の宮郷さんは翔介に頼みごとをしてくるし、下級生の子たちは遊んでもらおうと思ってくるし・・・」


 「それをリクちゃんは、怒らないの」


 「怒る?どうして」


 「だって翔介君は、ついこの前まではリクちゃんだけに優しかったんでしょう」


 「翔介は、今でも優しいよ。さっきも勉強で忙しいのに、本を読んでくれたし」


 「他の子たちには」


 「・・・優しいよ」


 「それをどう思うの、リクちゃんは?」


 「どうって・・・翔介は集まってくる子じゃなくても皆に優しいよ。私のクラスからイジメがなくなったのは翔介がクラスのみんなに気配りするからだよ。河島君だってあんなに意地悪だったのに、もう私には意地悪してこないし」


 「リクちゃんは、リクちゃんにだけに優しかった翔介君と、皆に優しい翔介君のどっちがいいの?」


 「どっち?そんなのわからないよ」


 「本当に?本当にわからないの」


 「うん・・・」


 「本当に本当?何も隠さなくてもいいのよ、ママには」


 「うん・・・本当は前みたいに私だけに優しかった方がいいけど、今も前と変わらず翔介は私に優しいから我慢できるよ」


 「我慢してるんだ、リクちゃんは」


 「だって、みんな私と同じで翔介が好きで集まってくるんだよ。それをわがまま言って、私だけと一緒にいてなんて言えないよ。皆、私にも親切だし、こんど長谷部さんと篠崎さんとはお買い物に行く約束もしたし、もうお友達だもん。クラスのノンちゃんと千佳子ちゃんもお誕生日会に呼んでくれたし、もうお友達だもん。上級生の宮郷さんは、私も音楽クラブに入ればって誘ってくれるし」


 「だったらどうしてリクちゃんは胸が痛くなるの?翔介君と二人で過ごしていた時はなかった胸の痛みが、友達ができたけど翔介君が独占できなくなったことで出てきたんでしょう。どうしてだろうね」


 「そんなのわからないよ」


 「だったらママが、リクちゃんの胸が痛くなった時にすぐに直す方法を教えてあげるね」


 「本当に?」


 「ええ本当よ。リクちゃんよく思い出してごらんなさい、翔介君といつも手を繋いでいるのは誰?」


 「私だよ。でも時々だけど長谷部さんとも繋いでるし、反対側の手は篠崎さんが繋いでいる時もあるんだよ」


 「一番多いのは誰かな?」


 「それはもちろん私だよ。でも・・・」


 「だったら翔介君のお部屋にお泊りしたり、翔介君のお爺ちゃんの所に連れていってもらったりしたのはリクちゃん以外にもいる?」


 「いないよ」


 「リクちゃんは、翔介君とお泊りするときいつもどこで寝ているの?」


 「翔介の隣だよ。手を繋いで寝てもらったり胸の中で抱っこしてもらって寝てるんだよ」


 「翔介君がそんなことをするの、リクちゃん以外にいると思う?」


 「うんうん、いないよ」


 「絶対?」


 「うん絶対だよ」


 「どうしてそう思うの」


 「どうしてって、翔介は何でも私に話してくれるもん」


 「なんでも?たとえばリクちゃんの知らないところで他の女の子たちと遊びに行ったこととかも」


 「うん、ちゃんとそんな話もしてくれるよ。お習字教室の時は長谷部さんの所に寄るとか、上級生の宮郷さんの歌の伴奏を放課後に音楽室でしているとか、篠崎さんにデートに誘われているとか、なんでも話してくれるよ」


 「その篠崎さんと翔介君はデートするの?」


 「断ったんだって。でも私と長谷部さんと一緒ならいいよって言ったんだって」


 「だったらリクちゃん以外とデートしたのは幼稚園からの幼馴染の長谷部さんだけじゃない。それもリクちゃんも誘われたのに断ったのはリクちゃんだったわよね」


 「うん、そうだよ。でも、あれは長谷部さんにその前にお願いされたの、二人で行きたいから私は来ないでって」


 「そうだったわね、ママ知ってるんだ。あの日からリクちゃんが胸を押さえて苦しそうにしだしたのを、そうでしょう」


 「うん・・・」


 「でもリクちゃんは、翔介君が戻ってきて何もかも、長谷部さんと手を繋いだことも含めて全部隠さず話をしてくれたらすぐに痛みはなくなったよね」


 「うん、だって翔介、戻ってくるとすぐに私を抱きしめて言うんだよ、寂しかったって」


 「リクちゃん以外の女の子を翔介君は抱きしめたりする?」


 「それはしないよ、私とノッコだけだって翔介も言ってる」


 「でしょ、リクちゃんだけが翔介君にとって特別なのを胸が痛くなったら思い出してごらんなさい。そんな痛みすぐに吹き飛んでしまうわよ」


 「本当に?うん、だったらこんどからそうしてみるね」


 「リクちゃんにとっても翔介君は特別なんでしょう?」


 「そうだよ、翔介はいつでも私が困ったときには助けてくれる私の神様なの」


 「神様ね、それでリクちゃんは、その神様に自分にとって特別なのをちゃんと伝えているの?」


 「うん、初デートの日からパパとママにするように翔介にもキスしてるよ。最初は恥ずかしかったけど、もう平気。それに・・・」


 「そうよね、リクちゃんの初潮の処置を聞いてママもびっくりしたのよ、さすが翔介君だって、感心したわ」


 「うん。私も、恥ずかしがる暇がないぐらい翔介が何から何まで全部してくれたの。そしてクリスマスプレゼントで買ってくれたお洋服を着たら全部恥ずかしかったことなんか忘れちゃって、楽しかったな~また明日はデートなんだよ」


 「ほらね、リクちゃんだけの特別まだまだあるじゃない」


 「うん、私だけにオリジナルの曲も弾いて聴かせてくれるし、ピアノも教えてくれるし、お泊りの時は寝る前に本を読んでくれるし、そろばんも教えてくれるんだよ」


 「ママとパパもリクちゃんのピアノの演奏を翔介君の部屋で聞かせてもらって感心しちゃった。パパ、リクちゃんのためにピアノを買うつもりよ」


 「本当に!」


 「リクちゃん、もうこれで胸の痛みは出てこないわね。もし、また出てきたらすぐに翔介君との特別を思い出すのよ」


 「うん、わかった」


 「それじゃ、おやすみリクちゃん。明日は、それこそ翔介君と田中山神社に初詣デートに行くんでしょう。おせちより先に着付けですからね。お着物姿を翔介君に見せつけてやりましょうね」


 「うん、そうだね、翔介をびっくりさせるんだ。ママおやすみなさい」


 「ハイ、おやすみ・・・」


 ◆


 (どういうこと・・・どうして翔介君が宇津伏さんと二人きりで、初詣に来ているの?どうして私を誘ってくれなかったの?)


 昨年は、クラスの皆で初詣をしたというのに、

 その中に翔介君もいて一緒にお参りしたのに、

 そしてクラスの皆とわざとはぐれて二人でお店をいろいろ周って楽しかったのに、

 綿菓子にリンゴ飴も美味しかったのに、

 最後は家までおくってくれたのに、


 今年もきっと神社で昨年と同じで私を見つけてくれるはずだったのに、


 四年生になって急に翔介君は変わってしまった。


 三年生までは、翔介君と一番仲良し女子は私だったのに、


 クラスが別々になると急に相手をしてくれなくなった。


 翔介君は私の事が好きだって皆が言っていたのに、


 それが嬉しかったのに、


 四年生になったらあの転校生のせいで、私の事を好きじゃなくなってしまった翔介君。


 私のライバルは坂之下さんだけだったのに、


 今では四年一組の女子は皆がライバルよ。


 うちのクラスの女子も翔介君好きが多くなったし、上級生にまでライバルがいるじゃない、どういうこと?


 オキョンは、ハンカチ騒動から翔介君の事が好きになってラブレターまで書いたのよね・・・


 私はオキョンから、「手紙を渡したい」と相談された時は、「絶対にうまくいくわよ」なんて言いながら翔介君がオキョンなんか相手にするはずがないと思って応援したけど、今では私より仲良しになっているじゃない、どういうこと?


 あのハンカチ探しだって、翔介君は私の頼みだから一緒に探してくれただけだったのに、それをオキョンは、幼馴染だからと勘違いしているだけだったのに、


 オキョンは、もう宇津伏さんと同じで邪魔な子!


 今は、翔介君の側にいたいから友達のふりをしているけど本当は大嫌いよ!


 私の好きだった翔介君と私より仲良しだなんて、気に入らない!


 今日だって、せっかくの晴れ着姿だというのに、翔介君は宇津伏さんと仲良く手を繋いで初詣だなんて、気に入らない!許せない!


 私の周りの男子も宇津伏さんを見かけるとデレっとしてそっちばかりを見ているのも、気に入らない!


 栗林君なんて坂之下さんが一番好きだって言ってくせに、今では宇津伏さんばかり見ているじゃない、バカじゃない!


 六年生女子たちに、宇津伏さんの周りをうろつく六年生男子達の事を教えてあげたのに、それが翔介君にばれてしまい六年生の教室殴り込み事件を起こしてしまったのも、格好いいと思ったけど、私の事じゃないから、気に入らない!


 あの時は、六年生女子たちから、「篠崎さんが、」なんて言われるかもとドキドキしたけど大丈夫だった。


 そして一番気にいらなかったのは、クリスマスイブのデートに私から翔介君を誘ったのに、


 「リクとオキョンちゃんが一緒だったら行く」

 なんて言って断られた事よ。


 宇津伏さんと本通りをデートした事はもっと、気に入らない!


 ちゃんと見た人がいたんだから。


 その事を追及しようにも冬休みなのが、気に入らない!


 三学期になったら、こんどは六年生男子を使って新しい作戦をするんだ。


 見てなさいよ、宇津伏さん、必ず酷い目に合わせてやる。そして翔介君を返してもらいますからね。


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― 新着の感想 ―
[一言] カレンちゃんが黒幕でしたか…… もうすぐ暗黒面に落ちそう。
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