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後朝の文、じゃぁないけれど。

 男児と女児では圧倒的に女児の方が無事に育つ。

 とくに昨今の貴族の間では生まれおちるのも女児が多く、結果成人の男女差は開く一方だ。

 であるから。

 待望の男児を授かったのち幼少の折は女児の格好をさせて育てる親というのは多く、それは一種の信仰となっていた。

 かくいう自分も子供の頃は姫宮に混じって育てられたのだが、それにはもう一つ別の理由もあったのだが。


 貴族に生まれた者であっても成人前の子の名が人の口に登ることは無い。どこそこの娘や、誰々の長子、などという呼ばれ方はするものの、それ以上の話はタブーであったのも、生まれた子が無事成人まで育つことが当たり前でないこの時代であればこそ、なのかも知れない。


 だからこそ姫のように育ったとしても元服の時には無事に育った男子として盛大にお披露目をし、除目を受け官位を授かり貴族社会の構成員となることを目指すのだ。




 しかし。


 目の前に楚々として佇む麗人が、あの時の弥勒であろうというのは疑いようがなかった。


 頬を染め、扇を天に掲げるその姿は天女のようで。神楽の舞を観るような、そんな気持ちにさせる。


 ああ。本当に美しいな。


 令はそう、ここにきた目的も忘れ目の前の光景に見惚れていたのだった。


 ☆


 月が傾くまでそのまま悠久に感じる時間を過ごし、そして。


「少し、長居をし過ぎたようです。名残惜しいですがわたしはこれで」


 そう言ってその公達は去っていった。


 最後まで、笑みを絶やさず。その所作も高貴な雰囲気を醸し出して。




 結局抜け出すタイミングを逃し、っていうか、あのままこの人と一緒に月が見たい、そう思ったのがほんと。

 わたしは離れるのが寂しい、そう感じながら去っていくあの人を見送った。


 ああ。胸の奥が熱い。


 火照ったままの頬に手をあて、わたしは雲に隠れる月を見送ったのだった。




 その文が届いたのは翌日の早朝、まだ朝の雫が滴る頃合いで。


『秋の夜の 望月のぞみきてみれば 見出す珠玉の いとうるはし』


 んー?

 っていうかこれ、あの人だよねどうして……。


「虎徹が託されたそうですが……。何方かは……」

 と、少納言。


 うん。でも。嬉しい。

 月が綺麗でしたねって意味だとは思うけど、それでもほんと嬉しい。

 後朝の文の様にこんな早朝に届けてくれた事にも。

 なんか、ほほがにやける。


 ふふふ、と、ほおに手を当ててにやけるわたしに、


「お返事しないとですよねー」

 と、少納言。

 虎徹が相手をわかっているのなら届けてもらえるのかな。


 うん。頑張って返歌しなくっちゃ。

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