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反転。好きの反対。

 柔らかい瑠璃の身体。


 抱きしめたその手に感じるその温もりに、彼の心は踊った。


 しかし。


 あまりにも、これは……。


 信じられない事だけれど、瑠璃は、この珠玉は、もしかしたら女性なのではないか。


 この肉付き、触り心地、男ではあり得ないのでは。


「好きだ。君が好きだ。どうかわたしのものになっては貰えないか」


 と。


 震える声でそう、言ってしまった。


 瑠璃の顔が真っ赤に染まる。


 ああ、これは、間違いない。


 そうか、だからなのだ。


 四の君が処女だと知った時は驚き、これは瑠璃の中将がまだ早いと手を出さずに大事にしていたのだろうと罪悪感に苛まれたが、こういう事であれば納得できる。


「ああ、だから四の君は男を知らなかったのか」


 そう思わず口に出てしまい、


 その瞬間、頬を勢いよくはたかれた宰相の中将は、自分の手の中からこぼれ落ちるように去っていく珠玉をただただ眺めているしか出来なかった。




 ☆☆☆



 顔色が悪い宰相の中将に、


「どうしましたか、お身体に触りましたか、顔色がすぐれないようですね。すみません。またお伺いしますね」


 と声をかけ、立ち上がったその時。


 ふらふらっと立ち此方に手を伸ばす中将が余りにも不安定でいまにも倒れそうなのをなんとか抱きとめたのだけれど……。


 思いもかけない強い力でぎゅっと抱きしめられ。


 心の奥が、ずくん、と、疼いた。




 ああ、彼の顔があたしの頰にあたってる。真っ赤になってるあたしの熱が伝わってるかもとか考えると恥ずかしくて。


 もう、どうしようって考えてるところで右肩の上にある中将の口から、


「好きだ。君が好きだ。どうかわたしのものになっては貰えないか」


 と、囁くような声が聞こえ。


 あたしの心は最大級に跳ね上がった。




 でも。


 動悸が激しくなってもうどうしようもなくなったその時だった。


「ああ、だから四の君は男を知らなかったのか」


 と、そんなつぶやきが漏れ聞こえ。



 その瞬間。

 あたしは平手で彼の頬を叩き、そのまま逃げるように屋敷を飛び出していた。





 ああ、バカバカバカ。あたしのバカ。


 あんな男に一瞬でも舞い上がって。


 あたしが好きだと言ったその口で四の君とあたしを比べていたんだあの男。


 四の君のお相手は宰相の中将だったって事。


 悔しい。


 あんな男に……。


 っていうかあれはバレたって事だよね?


 ううん、かまうものか。まだ決定的な証拠を掴まれたわけじゃない。


 まだしらを切り通せば何とかなる筈。


 うん。まだ負けない。あんな男に負けてたまるものか!

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