何故何の為に
今回は少し残酷な表現が含まれておりますが、それほど酷くないのでご了承ください。
この星には雲がある。
雲は水蒸気の集まりである。
故に、この星には水がある。
その水は、地面を濡らすこともあれば、地面に触れないこともある。
雲にも色んな色があり、形がある。
紅く薄い雲、紫の斑点が集まった様な雲。
この星には、多種多様な生物が存在し、生活している。
これは、そんな星に生きる、人間と呼ばれる霊体である二人の話だ。
僕はこの星が嫌いだ。
雨が降れば、地面は濡れ、車は走りづらいが、降らないと作物が育たない。
僕はこんな星には、生まれたくはなかった。
「楽しくない。何をしても人よりできないし、努力しても意味がなかった。こんな人生つまらない。」
と言えば、親や教師に「そんなこと言うもんじゃない!」と怒られる。
新しい出会いもなければ、突然の別れもない。
こんな世界暇すぎる。
暇だし、堤防で寝ようとしたら後ろから声をかけられた。
「君何してるの?こんな所で寝て、風邪ひくよ?」
見た感じ、僕と同い年だろうか。
いかにも「私、充実した生活送ってます。」感じの女子だった。
「なんで僕はこの星に生まれたのかを考えてたんだよ。」
まぁ大嘘で、人生がつまらないから寝て時間つぶそうとしてただけだけど、こんなよく分からないことを考えてる奴に、構おうと思わないだろうから、言っただけだった。
面倒くさそうな女子だったから。
だが、彼女は何故か興味を示してきた。
「実はさー、私もなんでこの星に生まれたのかわからないんだよね。」
彼女はそう言って僕の傍に座った。
嘘つけ。
すごい充実してます感出てるぞ。
そこからは意見の言い合いだ。
「僕は理由なんてないんだと思う。地球環境を悪化させるだけの生物に、生まれた理由があるとは思えないから。」
「私は、人間には何らかの使命があるんだと思うんだ。そしてそれに気づくのもその使命を果たす為に必要なんだと思う。」
なるほど、そういう考えも出来るな。
ただ、ならその使命を与えたのは誰なんだろうか。
彼女の考え方は僕とはまた別の、90°違っている。
と思っていると、ふと気がついたことがある。
最初はこの女子のことをすごく嫌っていたのに、今は何ともない。
と言っても、あってまだ数分だけどね。
僕は「この星に生まれたのは何故か」という話題について話していることが楽しく思えているのかもしれない。
女子という生物が嫌いな僕が、普通に話している。
ということは、話していることが苦ではなく楽しいのかもしれない。
今、僕はもっと彼女と話したいと思っている。
顔が熱くなってきた。
「顔赤いよ?大丈夫?」
顔が赤いらしい。
今のを聞く限り、僕は今『照れている』ということになる。
何故だろうか。
僕が女子に照れるなんて、考えられない。
だが現状照れているのだろう。
まさかと思うが、僕は今日初めてあった女子に、恋愛感情を抱いているのか。
これ以上いると、おかしくなりそうだから、僕は帰って明日また話すことになった。
「またね〜絶対来てね」
彼女は笑顔で手を振った。
家に帰っている途中で、人の集まりが見えた。
そこに寄っていくと、血を流し倒れている女子が僕の視界に入った。
その女子に僕は見覚えがあった。
堤防であった女子だった。
交通事故だろうか。
近くには血の付着した自動車があった。
彼女は病院に搬送され、死亡が確認された。
僕の視界は歪んだ。
目を擦ると、擦った手が少し濡れていた。
どうなら僕は泣いているようだ。
泣くのは赤子の時以来だろうか。
彼女が死んで涙を流すということは、僕にとって彼女はそれ程大きな存在だったということか。
やはり僕は、彼女のことが好きだったのだろう。
でなければ、家族の葬式でも泣かない僕が泣く訳がない。
泣き続け、気がつけば雨が降っていた。
空には黒い雲がかかっていた。
僕は天に対し思った。
雨を降らす暇があるなら、死んだのをなかったことにしろよ。
天は神がいる所とか宗教団体は言ってんだろ。
ならその神の力で、死をなかったことにしてくれよ。
神が本当にいるなら、彼女を生き返らせろ!
だか、この願いは届かなかった。
翌日、彼女の葬式は行われた。
彼女が戻ってくることは存在ないのだ。
僕は、棺桶の前で号泣した。
そしてお焼香を済ませ、家に帰ろうとした時、誰かの声が聞こえた。
『大丈夫。君からは見えないけど、私はいつも近くで見てるから。頑張って生きて私の分も』
この声は彼女の声だ。
彼女は死んでしまったのに、悲しそうな声ではなかった。
きっと彼女は、僕の背中を押してくれているのだろう。
彼女が言っていた、人間に与えられた使命とは、人それぞれ与えられた使命は違うのだろう。
そして彼女に与えられた使命、それは【僕の背中を押すこと】なのだろう。
なら、彼女はしっかり使命を果たした。
次は僕が与えられた使命を果たす番だ。
彼女のおかげで僕は、僕に与えられた使命に気づけた。
もう姿を見ることはできないが、会えるだろう。
人は肉体を持っただけの、霊体なのだから。
僕が死んだ時はまた彼女の姿を見て話すことができるのだろう。
外に出ると大きな白い雲が、空を覆っていた。
僕は、彼女が背中を押してくれたのだから、しっかり生きようと思う。
全ては彼女の為に頑張って生きて、死んだ時に彼女と《人間とは何か》という話題について、話していることだろう。
まぁ僕らの意見は同じだろうな。
ぼくらの意見は
〘人間とは肉体を持っただけの霊体で、誰かの背中を押せる生き物〙
だ。
こんにちは
中学生暇人ゲーマーの堀形秋季です。
今回のは「死んでしまったが、彼女は雲の上からずっと少年を見守っている」という後付けがつきます。
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