レティシア・バレット公爵令嬢
レティシアは朝からご機嫌だった。
今日は自分の誕生日、父と母からレティシアが喜ぶ嬉しいお話があると言われていたからだ。
わくわくしすぎて早く起きてしまったレティシア。
その時突然、頭の中に1人の女性と見たこともない物、その女性が夢中になってやっている【乙女ゲーム】の映像が流れ込んできた。
【乙女ゲーム】には、自分の家族と使用人や屋敷、自分の魔法が火魔法で魔力は普通であること、今までにあった出来事、そしてこれからの事が物語のように映っている。
この話の通りならレティシアは、王太子と高位貴族によって、婚約候補者達と一緒に他国へ人質として送られてしまうのだ。
「なんてことかしら、この映像は本当におこることなの？
婚約者候補なら何年も厳しい教育を受けるはず。他の貴族との策略や陰謀の中で生き残っても、最後は王太子が好きな人と結婚したいからと嵌められて、他国へ人質として送られるなんて。
冗談じゃない。
私だって恋をして結婚したいわよ、王太子なんかじゃなくてね。そもそも、王妃になんてなりたくないわよ。
大体、王太子に婚約者候補以外の女性が一緒にいたなら、一言言わないわけにいかないじゃない。そもそも王太子が、他の女性を連れて歩いている時点でおかしいでしょ。
それに、向こうが失礼な態度を取ってきたら、きちんと反論しないとその態度を認めたことになるのよ。それをいじめだなんて・・・・・・。
何が、嫉妬に狂った女性よ。なんとも思ってないのに嫉妬なんかするわけないわ。
本当に腹立たしい。」
レティシアはまだ５歳だが公爵令嬢。感情のまま怒っていたが、すぐに冷静になり考え出す。
「メイドが来るまでに忘れないように、見たことを全て書き写しておかないと。
考えるのは後ね。
今日は私の誕生日パーティー、他の事に気を取られて失敗するわけにはいかないわ。」
そう、自分の誕生日パーティーは貴族として評価される最初の舞台。
高位貴族の子供は厳しい目で評価される。
レティシアは見た映像を全て書き写し、紙の束を机にしまい鍵をかけた。
「お嬢様、おはようございます。」
朝の支度の為にメイドが入ってきた時、レティシアはベットの中で寝たふりをしていた。
「おはよう、シーナ。
着替えをしたらお父様たちにご挨拶に行くわ。準備をお願いね。」
「かしこまりました。」
シーナに身支度を整えてもらった後、両親への挨拶に向かう。
朝は、両親に挨拶をして一緒に食堂に向かうのだ。
両親との朝食の後、お誕生日会の準備がある。
「今日は親しい家と高位貴族の令嬢のみだから、どういう子たちか判断しましょう。
もし、親しくなれそうならなるべく親しくなった方が良いかもしれないわね。」
・・・・・・悩みは尽きないレティシア。
自分に気合を入れ、部屋へと向かっていった。
