犯罪組織とタイミングの悪いシーナの家族
地下につくとすでに調協は終わり、いつでも質問ができる状態になった男たちが並んでいた。
王弟が頷くと家来の１人がリーダーの男の足を蹴って起こす。
「人身売買に密輸と誘拐、殺人もやってるのかな。で、依頼者は誰？」
「い・・・依頼者ですか？依頼は受けてはいません。」
その瞬間、全員足の指に重しが乗せられる。リーダーは悲鳴をこらえたが男、男達は叫び声をあげ次々と話し出す。
「俺たちは、盗賊なんです。」「盗賊の街チームなんです。」「命令は頭領のゴッツが出すんです。」「ポールっていう男が細かい指示を出すんだ」「今回の誘拐は孤児や浮浪者だけです。」
一度、重しを取ると質問を続ける。
「今回ね、孤児じゃないのもいただろ。嘘はばれるぞ。」
「あいつらに、密輸品を運んでいるのを見られて、攫って売ってしまおうと捕まえたんです。」
「偶々？そんな事あるわけないだろ。」
「本当なんです、城壁に秘密の通路があって、そこを通ろうとした時にやつらが現れたんです。タイミングが悪いというか。」
「ふん、板と耳栓を持ってきてくれ。」今度は何をされるのかと思う男達。
王弟達は皆耳栓をすると家来が黒板に爪を立てた後動かしていく。
「キイ―――――――――――、キイ――――――――――、キイ―――――」
悲鳴を上げ、暴れだした男達。
「皆も疲れているだろうから、ストレスを発散していいぞ。後で詳細を提出してくれ。」
被害者たちの様子を見に行くため、２人は地下を後にした。
「見たか。あの顔、暴力よりよっぽど聞くよな。」
嬉しそうに笑いながら話す王弟とハワード。
「どうやら、シーナの家族にとっては運が悪かったようですね。
売られる前に救出できて良かったですよ。ルーサー様の魔道具大活躍ですね。」
「逆に、我々にとっては犯罪組織を見つけられて潰せそうだから、感謝だがな。」
「街と外の盗賊を一度に捕まえられそうですが、犯罪組織の黒幕はおそらく貴族でしょうね。そこまでは届かないでしょうね。」
「そうだな、その貴族の裏に、もっと大きな権力者がいそうだぞ。
街での犯罪が見つからないなんてその辺の貴族では無理だ。
今回は表立って関わらないほうが良さそうだし、
ロレーヌ公爵に情報を丸投げして任せてしまうか。
そういえば、ロレーヌ公爵の息子は王太子の側近候補か。
ああ、レティシア嬢の婚約者候補決定おめでとう。」
「ありがとうございます。レティシアは婚約者候補を辞退したいと申しております。
（残念）王太子殿下の婚約者になってしまうと我が公爵家が強くなりすぎます。
権力が集中しすぎるのはよくありませんから、頃合いを見て辞退するつもりです。」
「ああ、そうなんだ。（嫌そうだったもんな、王太子の事、家族揃って嫌なのか。）」
「それなら、ルーサー様なんてどうかな。パーティーでレティシア嬢を見ていたよ。」
「執事も言ってましたよ。これ以上他の方に知られてないと良いですがね。」
「大丈夫だと思うよ。後ろの方にいたからね、ルーサー様の後ろは私だし。」
不満げな顔のまま歩くハワードを面白そうに見ている王弟。
「シーナ嬢のご家族、情報が取れたから今日一緒に連れて帰る？明日でもいいけど。」
「それなら、このまま一緒に連れて帰ります。シーナも喜ぶでしょう。
我々も、引き上げます。後はお任せしますよ。ご協力、ありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとう。騎士団への貸しが作れて嬉しいよ。
今度突入するときは、誘ってね・・・・・・。」
結構しつこいなと思いながら、シーナの家族と家来たちを連れて王弟邸を後にした。
バレット家に戻ると、メリーナたちが出迎えてくれる。
家族を見て、シーナは公爵達にお礼を言うと涙ぐみながら駆け寄っていく。
「無事に救出できて本当に良かった。
シーナ、明日から暫く休んでご家族と一緒に過ごすといい。
眠っているだけで他には異常はないと医師が言っていたから安心しなさい。」
「良かったわね。シーナ。ハワード様お疲れ様でした。皆もお疲れ様。」
「シーナ、本当に良かったわ。お父様もご無事で良かったです。皆さまも。」
「ありがとう。メリーナ、レティシア。今日はもう遅い。皆休んでくれ。」
そういうと、ハワードはメリーナとレティシアを連れて戻っていった。
シーナは眠っている家族を見て、ほっとしていた。
公爵一家に感謝と忠義の気持ちが沸きあがってくる。
皆様のお役に立てるように、私たち家族は何ができるだろう。
後で皆で相談しようと思い、今は家族たちの寝顔を、笑顔でずっと見つめていた。
