パーティあれこれ 3
「じゃあ、俺と一緒に世話が出来るモンスターを買いに行くか?」
ソフィアさんと今後のモンスター達の拡充計画を話していると、ロベルトさんが会話に混ざってきた。それ自体はいいんだが、言っている意味がよく分からない。
「ロベルトさん? モンスターを買いに行くって何処にですか? 魔物を扱っている店なんてこの街にはない筈なんですが」
大都市には騎乗用の馬やモンスターを扱っている店があり、その店に併設する形でテイム用のモンスターを売買している店があるらしい。
とはいえ、ここソルフの街は大きくも小さくもないこの王国には無数にある田舎町に過ぎないので、そんな店は無かった筈だ。
「ん? 知らねぇのか? 奴隷商館だよ」
「奴隷になっているモンスターがいるんですか? まさか何処かで奴隷狩りでも行われているんじゃ」
「おいおい、奴隷狩りとは穏やかじゃねぇな」
「だったらどうやって入手してるんですか?」
「そもそも人間の奴隷だってどんどん入ってくるのに、ゴブリンやオークを拐ってくるなんて手間を掛ける必要はねぇよ。出所はお前さんと同業のテイマーからだ」
「テイマーから?」
ロベルトさんが語るその内容は、俺の知識の外側からのもので全く想像が出来ない世界だった。
俺の認識では、テイムしたモンスター達は共に戦ってくれる家族のような存在で、お互いを信頼し合う間柄を目指すものだと思っていた。
しかしそうではないテイマーも少数だがいて、不要と判断した人型モンスターを奴隷商館に売ってしまうこともあるらしい。
そもそもの買い取られるようになった原因は、テイマーが多少育てて手放したモンスターが野生に戻り、『鍛えられたゴブリン』や『武器の扱いに長けたオーク』が街道を行く商人を襲う事件が発生したため、それの予防策として奴隷商で買い取るようになったらしい。
売られる実例としてはゴブリンをテイムしていたテイマーが、上位種のホブゴブリンをテイムした途端に今までテイムしていたゴブリンを売り払ってしまうのだ。ゴブリンでは二束三文の金にしかならないが、これから掛かる経費を鑑みて切り捨ててしまう。
大体そういうゴブリンは新人のテイマーに買い取られるか、言葉が通じるのであれば開拓村などの農村に買い取られていく。テイムスキルがなくても、言葉が伝われば労働力として使えるからだ。
ちなみに言葉が通じるというのは、はいといいえで受け答えが出来るくらいの事を差す。
フロイトはテイムされて使役術の支配下に置かれた段階で人語を解するようになったが、これはかなり特殊な例で、通常はフロイトの段階に行くにも数年は掛かるようで、会話ができるほど育てばまず売られることはない。
「うーん、でもその話から行くと手に入るのはフロイトみたいなゴブリンとかの、俺でもテイム出来るモンスターばかりのような気がするんですが」
「今話したパターンで奴隷商館に来たのはそうだが、別パターンもあるぞ。お薦めなのはそっちだな」
「別パターンですか?」
「冒険者が引退したパターンだ」
怪我や高齢化でダンジョンに挑めなくなったテイマーが、モンスターを手放す時はいくつかの方法がある。
使役術の適正がある子供がいればその子に継承させるし、弟子をとっていた場合もモンスターを譲る場合がある。
自身の護衛として残す場合も、小型のモンスターを何体かぐらいだ。
売られてしまうのは、主にモンスターの世話を任されていたモンスターだ。理由としてはモンスターの数自体を減らすため、テイマー本人の世話で賄えてしまえるからだ。
弟子や自分の子供に継承させる場合でも、既に世話役や纏め役の人型モンスターがいるか、経験が浅い場合自分で世話を覚えなければならないので、引退するテイマーの世話役は引き継がせない場合がある。
もちろんモンスターである以上戦闘もこなせるが、戦闘が専門のテイムモンスターにはやはり一歩劣る。
食い扶持を減らす上では仕方がないことだが、売られていくモンスターは不憫に思う。
人間社会に引きずり込んだテイマーは彼らに責任を持たないといけないというのが、俺の持論だ。
だが、そんな彼らを雇えるなら心強いとも思う。
「それなら世話を任せられるモンスターもいるかもしれませんね。ちょっと興味があります!」
「ん? モンスターを買うことには抵抗ねぇのか? 奴隷制度が嫌いって言ってたからこれも嫌がるかと思ったが」
「思うところが無いわけではないですが、奴隷制度も含めて俺に出来ることは殆どありませんから」
「前に会った転生者の兄ちゃんは、有り金全部叩いて買えるだけの奴隷を買って解放してたぜ?」
「有り金で買えるだけ買い取って解放しても、彼らの生活の面倒をみれない以上すぐに奴隷に逆戻りか、悪ければ賊になるのが関の山ですし、モンスターの場合は討伐されてもおかしくない。出来ることといったら養える範囲で数人を買って囲うことくらいだと思っています」
俺は奴隷制度自体が悪いとは思っていない。
自身を売れば最悪直近の飢えは回避できる仕組みは、一種のセイフティーネットとして機能していると思う。
不作や怪我などの回避しようがない不運によって権利を手放さなければいけない現状が理不尽に感じるだけだ。
この世界で色々なものを見聞きし、こんなものは俺の個人的な感傷であってこの世界では普通の事だと納得することができた。
ましてや人間ですらない、テイマーが手放した魔物を国の金で買い取って、殺さずに引き取り手を探す行為は人道的ですら有ると思う。
魔物とは恐ろしい獣で、その多くは人間の事を食糧と見なし襲いかかってくる。テイマーという管理者が手放した以上は殺処分が妥当とすら思う。
前世の日本でも野良犬や野良猫の殺処分は行われていて、それを可哀想だとは感じても社会制度を変えようと動いている人は少数派だ。
口先だけではなんとでも言えるが、実際すべての奴隷を救えない以上は詭弁でしかない。ならば自分の手の届く範囲だけでも守ろうと言うのが、俺の出した結論だ。




