パーティあれこれ 2
「この街にも奴隷商館があったんですね」
「おう、というか無い街のほうが少ないだろう。どこに行っても人手は不足気味だからな。どうした? 奴隷は嫌いか?」
「まぁ、この国は奴隷に堕ちても借金分働けば解放されるし、虐待も禁じられているからマシなんでしょうけど、あんまり好きじゃないですね」
「奴隷への拒否感があるのは珍しいわね、昔からあるものなのに。あ、そういえばグラム君は前世持ちだったから、そのせいかしら?」
やはり前世での『奴隷制度は悪しき文化』という啓蒙が骨の髄まで染みこまされている元日本人としては、あまり気分が良くない。
もちろん前世の倫理観や人権制度が発生してしばらく経った世界ですら無くなっていなかったのに、世界全体の地力や意識自体が高まっていないこの世界で奴隷廃止など望むべくもなく、国からの補助金まで出して奴隷の環境向上に勤めているこの国はかなり善良な方だろう。
それでも農家に買われた奴隷は不作の年に餓死するし、冒険者に買われた奴隷は初めに死ぬ事が多い。
借金の対価としてはあまりにも重すぎると思うのが現状だ。
「まぁ、前世持ちにはよくある事だな。社会制度の違いに馴染めねぇのはしょうがねえが、変な気はおこすなよ」
「まぁその辺は割りきりました。そもそも彼らの借金を肩代わりできるほどの御大尽でもないので」
「そうだな、俺達に出来ることは奴隷を買ってまともに扱ってやるくらいだろうぜ。じゃ、後はお若い2人でってことで俺は聞きに徹するぜ」
「そうね。これからのことを考えましょう?」
ソフィアさんは自然な仕草で彼女には大きすぎるジョッキを傾け喉を潤すと、これからの計画について相談しだした。
「まず、これ以上の仲間を募集するかなんだけど、グラム君はどうしたい?」
「仲間ですか‥‥正直ソフィアさんに巡り会わなければテイムモンスター達を引き連れて、いわゆるソロ冒険者でしばらくは活動しようと思っていたので、増やしたいとは考えていませんね」
「そうね、アタッカーは私とフロイト君。タンクにソイルゴーレムのシルト君で、遊撃に狼達。テイマー兼魔法使いで後衛のグラム君。うん、まぁ多少攻撃よりかなとは思うけど、問題は無いんじゃないかしら」
「ですね。あ、狼達の名前が決まりました。リクとカイです! 体の小さなメスのほうがリクですね」
2頭は名前を呼ばれたと思って無心で噛っていた鹿の角を放したが、特に用事が無いと分かるとまた鹿の角を砕く作業に戻った。
「名前決まったのね。よろしくねリクちゃん、カイ君」
「ウァフ」
ソフィアさんの右隣に寝そべっていたカイは撫でてもらい嬉しそうに1鳴きした。角を咥えながらなので間の抜けた声だったが。
「そういえばグラム君」
「なんですか?」
「これからもテイムモンスターや召喚獣は増やしていくと思うんだけど、何か方向性とかあるのかしら?」
「あー……それなんですけど……とりあえずこれ以上テイムモンスターを増やすのは現実的ではないですね。増やすなら召喚獣のほうになるかと」
「そうなの? 食費の問題なら1階層のホーンボア狩りだけでも十分稼げると思うけど?」
「資金や食糧は問題ないと思いますよ。ただ、世話が問題です。人手が足りないんですよ」
生き物と人間が一緒に暮らしていこうとしたら、どうしても世話をしなければならない。ペットではなくテイマーなどの共に働く生き物の場合は特に気を配る必要がある。
うちのリクとカイに例えれば、食事の用意も肉食のため特殊でその確保に動く必要があり、体のブラッシングや爪に割れがないかの日々のチェックをする。
体を洗ってやるのも街の中で生きるならほぼ必須だし、病気や怪我をしたら看病してやらなければならない。スキルがあるためかなりやりやすいが、躾もテイマーの仕事だし、探索がない日は散歩にも連れ出してやらなければ。
前世で言えば、大型犬を2頭飼うよりも余程労力がかかるだろう。体を洗おうにも井戸から水を汲まなければいけない。そもそも犬用シャンプーなんてないので、泡立ちの悪い石鹸でやるしかないため余計時間が掛かる。
「やってみて分かりましたが、生き物の世話は手が掛かるんです。増えたからって手抜きはしたくないですし、せめてフロイトと半分くらい分担できるようになるまでは増やせないと思います」
中堅以上のテイマーであれば普通は1から2体ぐらいの人型モンスターをテイムしていて、他のテイムモンスターの世話は、その子達にかなりの分量を任せてしまう。
もちろんモンスター達との信頼関係が必須のスキルなので愛情を注がないわけではないが、中堅まで行けばモンスターの数も10近いことはざらで、とても1人では賄いきれないのが現状のようで、モンスター達も余程ひどい扱いでなければ、それについて反発することは少ない。
うちの場合はフロイトが世話役候補だが、まだテイムして日が浅くリクとカイの世話を頼める段階ではないと思う。むしろ早く人間社会になれて貰うためにも、こちらがフォローしていかなければならない存在だ。
この分だと、新しいテイムモンスターを増やすのは当分先となり、召喚獣の拡充が先行するだろう。まだシルト1体しかいないので何を増やすかはとても迷うが。




