パーティあれこれ
「まぁ物を見ないとなんとも言えないけれど、値段や性能から考えて、かなりいい買い物だとは思うのよ?」
「いえ、それでも予約という形も取れたはずなので。次から気を付けます。ところでソフィアさん達は聖人の腰袋はお持ちでないんですか」
「俺らのパーティで保有していた聖人の腰袋は4つあったが、9人いたパーティメンバーには当然行き渡らんからな。夫婦と娘である程度固まって動く予定だった俺らは現金を多めに分配してもらって1つで遠慮したんだ」
「それじゃ、今はロベルトさんが?」
「いや、母ちゃんがな……」
そのいい淀み様に大体の事情は察した。前に言っていた王都での豪遊はさぞ捗っていることだろう。
「で、これからの事なんだけどよ、俺とソフィアのパーティは今日で解散するぞ」
「えっ、そうなんですか?」
「いやいや、お前さん昨日の宴席でソフィアとパーティ組むことにしたんだろう? おっさんが邪魔しちゃ悪いわ」
「でも、この初級ダンジョンで最後に一稼ぎして引退する予定だったんじゃ?」
先日聞いた話ではロベルトさんとソフィアさんの2人は、この初級ダンジョンで最後の一稼ぎをした後解散してソフィアさんは冒険者を続け、ロベルトさんは生まれ故郷の村で土地を買って農業に勢を出す予定だったはずだ。
王都で豪遊している奥さんも、一通り満足したらロベルトさんに合流して、田舎で農家兼村の専属冒険者として活動すると聞いていた。
「ま、正直この初級ダンジョンでの仕事も、ソフィアのパーティメンバーが決まるまでの暇潰し兼訓練みたいなもんだったからな。聖人の腰袋無しじゃどれだけ深く潜ったって得られる金は多くないんだよ、これが」
「2人だけじゃ前のパーティのスタイルは全然使えないしね。私もお父さんも前衛職だし」
「そうそう、それに自慢じゃないが仮にも上級冒険者だったからな。真っ当に引退した俺達のパーティメンバーで金に困る奴はでねぇよ。それこそ孫の代までなら慎ましやかになら生きられるくれぇ稼いだしよ」
「その殆どは私が真面な戦力になる前のものだから、子供世代の私と、もう1人の魔法使いのルーナって子はそこまで貯金無いけどね」
ロベルトさん達が上級ダンジョンの奥深くまで潜りバリバリ稼いでいたのは、ソフィアさん達が本格的にパーティに加わる前までで、それ以降は中級ダンジョンに拠点を移し、2人を鍛えていたんだそうだ。
そのお陰でダンジョンに屍を晒すことにはならなかったが、稼ぎはそこまで莫大ではなくなっていた。それでも20歳が貯めるには多すぎるほどの貯金が出来たようだが。
「というわけで、俺はパーティ解散したら1週間ぐらい買い物して故郷に凱旋しようと思う」
「あれ?何かまだ買い物でもあったかしら? 大体の必需品は買い揃えて、あの矢鱈大きい馬車に積み込んであるんじゃ?」
「そんなにトゲトゲすんなって。袋は母ちゃんが持ってっちまったんだから。それに馬車はこれからもこの街と村を往復するのに使うんだからよ。んで、俺が買おうと思ってるのは労働力だ」
「それってもしかして……」
「まぁ、平たく言えば奴隷だな」
奴隷、この言葉はかなりネガティブなイメージを孕むが、人間社会とは決して切り離せない必要な要素である。
一言で奴隷と言っても古代ローマの都市奴隷のようなほぼ使用人と変わらないようなものから、近代の奴隷貿易と呼ばれるこの世の地獄と変わらぬ所業までさまざまだが、この国における奴隷とは歪ながら雇用制度の側面を持つ。
現在この国で奴隷に堕ちるパターンには2通りある。
1つは借金によるもの。形式は様々だが、要は金が返せないから自分を商人に売ってしまうのだ。
理由も様々だが、主に不作の年に借りた金が返せなかった農家や仕入れをトチった商人、怪我をしてダンジョンに挑めなくなった冒険者などが対象となっている。
奴隷商達は半分役人のようなもので、国からの補助を得て買い集めた奴隷達を労働力を自分の拠点となる商館へ運んでいく。
そこで食事や衣服などの面倒をみて貰いながら多少の教育を受けて過ごす。主に奴隷としての心得や、読み書きが不自由な場合はそれも教育される。そして基礎が終わった順から売りに出される。負っている借金分を返し終わるまで働くのだ。
国としては借金苦を理由に故郷を出奔し、山賊などになられたら困るので、奴隷の扱いはかなり寛容にするようにと法で定め、国からの補助金を出している。
もう1つの奴隷は犯罪奴隷である。
主に死刑相当の者がなるもので、罰金が払えないぐらいでは犯罪奴隷にはならず、罰金が補助金分上乗せされて借金奴隷に堕とされる。
こちらの奴隷に人権はなく、国が全員買い上げるので一般人の手には渡らない。
どうなるかは知るよしもないが、国が保有する研究機関の消耗品や国有の鉱山に消えていくので、末路は推して知るべしといったところだ。




