ギルドで話し合い
相変わらずギルドの中は椅子とテーブルが並べられて、ともすれば大衆食堂のようにも見えるが、席について食事をしている客がほぼほぼ武装していることから、独特の雰囲気がある。
幸いにして昼時でも多少のテーブルの空きはあったので、その中の1つを占拠して昼食を摂ることにした。
「そういえば、ここはどうやって食事を受けとるんですか? 端にあるカウンターで買うのは分かりますが」
「ん? ああ、そういえばここで飯を食うのは初めてだって言ってたか。じゃあ一緒に取りに行くぞ。ソフィア、席を頼む」
「はいはい、じゃあフロイトくんも一緒に待ってもらっていい? テーブルに1人だとやたら絡まれるのよ」
「ワカリマシタ」
「リク、カイ。お留守番よろしく。粗相しないようにな」
「ワフ」
狼達にそう言うと、余計なお世話だと小さく吠えられた。冒険者ギルドにはテイマー等もいるため、人より小さいモンスターに関しては出入りが自由とされているが、流石に熊みたいな大型の魔物は外で待つのがルールになっている。
肉食獣の扱いがそれで良いのかと思わなくもないが、この社会においてテイムされたモンスターは、女神の権能たるスキルによって使役された存在なので、鎖に繋ぐよりも安全だという建前があるので檻には閉じ込めないというわけだ。
まぁ、一般人からは恐怖の対象だが、誉れ高い神殿のお偉方が言うことには逆らえないといったところか。
ちなみに万が一暴走したら、暴れないように明確に命じなかったとしてテイマーが裁かれるので、神の威信は傷付かない。
「ここが、ギルドの台所だ。受付の嬢ちゃんはかわいいが、大体どこの支部でもナメた真似をすると奥からオーガみたいなおっさんが飛んでくるから気を付けろ」
「は、はぁ‥‥」
ギルドの依頼受付用の黒板とは反対にあるそのカウンターは、いわゆる酒場のようなスタイルだった。ズラリと並んだ椅子と飴色のカウンターでは、まだ昼だというのに酒をかっ喰らっているおっさん冒険者の姿がポツポツと見受けられる。
一部椅子が置かれていない場所があるので、そこで飲み物や料理を買うのだろう。形式としてはセルフサービスに近い。
「よう、嬢ちゃん。日替わりと果実水4つ頼むよ」
「はーい、ちょっと待っててくださーい!」
ロベルトさんが話しながら数枚の銀貨を渡すと、ウェイトレスのお姉さんは、にこやかに奥にあるとおぼしき厨房へと入っていった。
「ここの飯は乾きもの以外は日替わりしかねぇ。まぁ、量は出てくるし普通の飯屋より安いから、冒険者ギルドからのお恵みって奴だな」
「へぇ、そうなんですね。でも初めて来たときは料理も種類があったような?」
「ああ、日替わりさえ頼めば持ち込みもしていいかんな。屋台の飯でも食ってたんじゃねぇか」
そんなことを話していると、奥からお盆を手に先ほど注文を取ったウェイトレスのお姉さんがやってくる。
ロベルトさんは慣れた手つきでお盆ごと料理を受けとると、俺に飲み物のジョッキを受け取るように促した。
見た目は中ジョッキ程度の大きさだが、締まった硬い木製で箍も金属なためガラス製よりも多少重く感じるそれをテーブルに運ぶと、それぞれの席の前に昼食が乗ったプレートが置かれていた。
ソフィアさんにお礼を言われながらジョッキをテーブルに置くと、フロイトが各々の前に廻していく。
目の前に乗った日替わりプレートには、焼いた肉とマッシュポテト、根菜類と豆のソテーというシンプルな料理が乗っていた。
塩とたんぱく質と炭水化物が山盛りの肉体労働者満足セットのようなメニューだが、大体いつもこんな感じらしい。
「じゃ、食いながら今後について話していくか」
「そうしましょうか」
そう言った2人の視線の先には、じぃっとプレートを見つめるフロイトの姿があった。周りに訴え掛けるような事はしないが、何を考えているかは明白である。
さっきまで落ち込んでいたと思ったが、食欲とは偉大な治療薬なのかもしれない。
自分達の分はないのかとソワソワしだした狼達におやつの鹿の角を与えて、2人の午前中の行動報告に耳を傾ける。といってもソフィアさんは日用品を買い足したくらいで日常そのもの、ロベルトさんはベットと仲良しという予想の範疇を越えないものだった。
それなら俺は多少の話題を提供できるかもと前置きして、午前中のことを語りだした。
リクとカイの餌用の保存容器を買いにいったら、何故かフリーザーの魔道具を買っていた話では、パーティを組んだら共通資金の財布の紐は2人で握りましょうとソフィアさんに笑顔で言われてしまった。
とても良い買い物だったと弁明したが、その額を即決で買うにしても、これからパーティメンバーになる自分に一言欲しかったと言われればぐうの音も出ない。
彼女が言うには、前のパーティでもちょくちょく問題になったとの事で、使用期限の短い特殊ポーションや2つはいらない魔道具をダブらせてしまう事があったらしい。
言われてみれば、俺はソフィアさんが聖人の腰袋を持っていない体で買い物をしていたが、彼女もフリーザー入りの魔道具を持っていても不思議ではなかった。何て言ったって彼女は家族ぐるみの上級者パーティに所属していたんだから。




