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ダンジョンDAYS 召喚師テイマー奮闘記  作者: ディスク
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引き倒し

「ガァアアァ! どけやクソガキィぶっ殺すぞ!」 


 身構えてはいたが、いざ突っ込んでこられると対処に困る。

 奴はこちらに向かって走ってきていたが、そこまで離れていなかったとはいえ十分に距離は開けて対峙していたので、用心棒に任せようと思い道をあけて避けようとしたが、何故かこちらの方に真っ直ぐ突っ込んでくる。退けと言ったのはお前だろうに。


 用心棒も慌てて此方に駆け寄っているが、道の真ん中で

対峙していた俺達のところへはナイフ男の方が先にたどり着くだろう。


 もはや戦闘は避けられないと分かったので、覚悟を決めて後ろ腰に差したナイフを抜く。これも戦闘用ではないが、盾もメイスも取り出している暇がない。


「お、おいっ、止まれっ! クソッ、カイ腕! リク足だ!」


 相手を刺激しないようにシルトを召喚していなかったのは悪手だったかもしれない。やはり召喚は一瞬でも隙が出来ることには代わり無く、目の前の激発したナイフ男の前で晒すには大きすぎる隙となる。


 が、現状俺は1人ではない。カイは俺の指示を聴いた途端に飛び出しナイフ男のそのナイフを持つ腕に飛び掛かった。

 男も驚いてナイフを振ろうとしたようだが、それよりもなお速くカイの牙が奴の前腕に食い込んだ。


「痛ッデェェェ!? このクソ犬がァァァァ!?」


 痛みから口を付いて出た悪態が悲鳴に変わったのは、一歩遅れてリクが足に齧り付きバランスを崩した奴の体を引き倒したからだ。

 噛み付かれた腕とは対角となる左足を噛まれ、四足で踏ん張るリクに引っ張られた体は、驚くほど簡単に傾いた。

 ほぼほぼ宙に浮くようにして腕に噛み付いていたカイは、その顎門を放さぬまま着地し、ナイフ男は後頭部を強かに地面に打ち付けたようだ。


 相手に隙が出来たので、シルトを召喚する。

 一瞬の集中の後、魔力を消費して店の用心棒の大男達よりもなお大きい人型の土人形が姿を表す。


 俺が指示を出すまでもなく、ナイフ男と俺の間に陣取ったシルトに取り押さえるように指示を出そうとすると、その前に狼達との戦闘を見て機会を伺っていた用心棒達がナイフ男を拘束しはじめた。


「リク、カイ。戻っていいよ」


 もう手足を噛んで拘束する必要はないと分かったので、2頭に此方に戻るように指示を出す。噛まれた二の腕と脛からは服の上からでも分かるほど血が滲んでいるが、命を心配するほどでもない。

 2頭は此方に戻ると戦闘で興奮したようだが、ハフハフと息を荒げながらも素直に指示を聴き、ナイフ男の方を向きながらお座りの姿勢になった。


「お客さん、危ない目に遭わせてどうもすいませんでした」


「いえいえ、お互いに災難でしたね。お店の中で怪我人はでませんでしたか?」


 シルトを送還しながら狼達を誉めつつ宥めていると用心棒の1人、顔を斜めに横断する向疵がある大男が頭を下げてくる。

 店で見かけなかったのは、その威圧感のある風貌から普段は店の奥に詰めているかららしい。


「はい、怪我人はいませんが、こいつの仲間もいまして取り押さえるのに手間取りました。遅くなって本当に申し訳ありません」


 大きな体を丸めてペコペコと頭を下げるその様子に、何だか此方まで申し訳なくなってきていやいや大丈夫ですと声をかけていると、店の中から先ほどフリーザーを買った店員が出てきた。


「お客様、この狼藉者を取り押さえるのにご助力くださったようで、ありがとうございます」


 冷や汗か脂汗かは分からないが、とにかく大汗を掻いたその店員が出てきた途端、用心棒は目線を下げて一歩引いたようだった。

 この店には似つかわしくない高価な魔道具を扱ったり、値引きを胸先三寸で決められることからそれなりの地位は店の中で持っているとは思っていたが、中々の大物のようだった。


「いえいえ、本当に怪我人が出なくて良かったですよ」


「ええ、お客様も御無事で何よりでございます。壊された商品はまた稼いで仕入れれば良いですが、信用はお金では変えられませんから」


 ここでもし暴れた犯人を取り逃したり、客が傷つけられたりすれば店の信用が堕ち、『あの店には破落戸が出入りしている』『あの店から盗みを働くのは容易い』などと言う悪評が生まれかねない。

 評判が第一の情報源であるこの世界では身代を傾かせるほどの損害であるのは確かだ。


「御礼をしたいのですが、ここで謝礼金を渡すと方々にご迷惑を掛けてしまいます。申し訳ありませんが、次回のお買い物時に色々とお勉強させていただくことで御礼とさせていただいても宜しいですか?」


「あー、御礼なんて……分かりました。お言葉に甘えさせていただきます。それではこの辺で」


「はい、お気をつけくださいませ」


 御礼を断ろうかとも思ったが、向こうも面子があるためはいさようならとしづらいのも理解できるので、とりあえず御礼は受けとると返事をして店を後にした。

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