結成
「その辺は特に意識したことないです。今日1日しか行動を共にしてはいないですが、それでも人となりは分かりました。ソフィアさんは優秀な冒険者です。そこに種族は関係ありません」
「そう‥‥ありがとう」
「なんで俺に声を掛けてくれたのか、やっと分かりました」
「ええ‥‥種族柄パーティメンバーを得るのが難しいのよ。でもあなたは人種族のテイマーでしょう? 仲間に入れてもらえるかと思って‥‥」
パーティを組みにくいハーフやクォーターの人達でも冒険者として生きていく場合、例外的に組みやすい職業の人種族がいる。
魔法使いとテイマーだ。
前者は後衛職として肉体の劣化に影響されづらく、逆に魔力運用の熟達によって死ぬ間際が全盛期という場合すらある。
また高位の魔法使いは莫大な魔力の影響で老化が抑えられ、下手をすると200年ほど前線を張り更に50年ほど生きる事もあり、クォーターエルフよりも長生きな場合がある。
そこまで極めてしまうのは滅多にいないが、強い魔法使いの寿命が延びるのはよくあることだ。
テイマーの場合は寿命の差を気にしない場合が多い。
そもそも殆どの魔物は進化をするにつれ高位の存在になるので寿命が延び、自分が死ぬ時にはテイムモンスター達はまだまだ全盛期という場合が多い。
弟子なり子供なりにそのモンスター達を引き継げば、殆ど戦力の変動なしにパーティメンバーのハーフやクォーター達と冒険を続けられるため、組むことを忌避しない場合が多い。
彼等が人種族の冒険者達からパーティ結成を忌避されてしまうのは、若いままのメンバーに引っ張られてずるずると冒険者を続けてしまい、老化に足を取られ仲間共々死神に連れ去られることが予想されるからだ。
差が生まれにくい職業ならば全盛期が長い分、いい仲間になれるだろう。
「それを思えば、ゴブリンを連れていて明らかに初心者テイマーに見える俺は、多少育てる手間は掛かるけれどパーティメンバーとしては狙い目っぽいですね」
「最初に言った口説き文句も嘘ではないのよ? 誠実そうでお金の余裕もありそうで、更に顔も好みですもの。狙っちゃうわよね」
「言ってる内容ちょっと変わってますよ」
「あら、そうだったかしら。まぁ、本音よ」
「俺の前世じゃそういうの歯に衣着せぬって言うんですよ?」
「あら、言わなかった? まどろっこしいのは嫌いよ」
「じゃあ俺もはっきり言います」
そう言葉を区切ると、改めてソフィアさんの目を見て告げる。
「ソフィアさん、俺とパーティを組んでください」
「ええ、よろこんで」
「よろしくお願いします」
「いやぁ、良かったじゃねぇかソフィア! こいつは良さそうな男だぞ!」
ソフィアさんと向かい合って真面目な空気を出していたのにも関わらず、フロイトとなにやら話し込んでいたロベルトさんが楽しそうにソフィアさんに絡んでいった。
1人で冒険者を続ける娘が心配だったのは分かるが、おそらくは人生の節目となるこの場面で父親に絡まれるのは、ソフィアさん的にもかなりイラついたようで目付きが鋭くなっている。
「あらお父さん、お酒は抜けたんじゃなかったかしら」
「お、おう、大丈夫だぞ、どうしたんだそんな怖い顔して?」
「いいえなんでも? ただ、戦士のくせにタイミングを読むのが下手なのねと思っているだけよ?」
「い、いやぁ、それほどでも……お!メシと酒が来たみてぇだぞ!」
キリキリと痛むような空気感に耐えかねたのか娘から逸らした目線の先に、こちらに料理を運んでくる店員の姿が見えたようで、これ幸いと話題を変えることにしたようだ。
「おまたせしましたー! こちらがオススメのホーンボアの炒め物と、ゴマとネギ団子のスープ、それにダガーラビットの蒸し饅頭です! お酒はエールですよ! ごゆっくりー!」
「お嬢ちゃん、祝いのメニューなんかあるかい?」
「お祝いですか? うーん、丸鶏のパリパリ焼きなんかどうでしょう? テーブルにドーンと丸々一匹分はおめでたい感じですよ!」
「お、じゃあそれもくれよ。娘のパーティ結成祝いだからな」
「かしこまりましたー!」
やたらと元気な店員の女の子が料理とお酒を運んできたついでに、ロベルトさんがお祝い料理を頼むと殊更元気よく店の奥に消えていった。
「さぁさ、まずは食おう。結成祝いの宴だ。どんどん食えよ! かんぱーい!」
何だか誤魔化すように音頭をとるロベルトさんに、娘に頭が上がらない父親の哀愁を感じつつも、結成祝いの小さな宴が始まった。




