依頼人へお届け
冒険者ギルドの中は相変わらず喧騒に溢れていた。その中でもその中でも見覚えのある顔が1つ。
昨日声をかけてくれた優しいおじさんこと、ソフィアさんのお父さんだ。名前はロベルトさんと言うらしい。
「お早い復活ね」
「いやぁ、すまんすまん。宿酔はすっかり抜けたわ」
「あらそう、それは良かったわね」
「そんなに怒らんでくれ。反省しとるよ、この通り」
会ってそうそうソフィアさんに詰められている姿からは想像できないが、希少な上級冒険者だ。
詰問はまだまだ続きそうなので、ソフィアさんに断りをいれてからギルドの受付に向かった。
買取用の木札の処理は案外スムーズに行った。問題は採取依頼の方だった。
「え、依頼主に直接ですか?」
「はい、今までの経緯から、採取した冒険者ご本人に依頼主の方までの運搬をお願いしています」
「その旨は依頼文には書いていなかったと思うんですが」
「いえ、依頼ではなくギルドの規則で決まっている事項です」
砥石の採取依頼を完了したことを伝えると、ギルドでは現物を受け取らず、直接依頼をした店舗へ砥石を届けるよう指示された。
どうやら、魔物や動物などの解体を必要とするもの以外の依頼品は、冒険者自らが直接依頼主に目的の品を届ける規則になっているようだ。
それもあって狩猟以外の採取依頼は、あまり人気がない。わざわざ依頼品を届けに行ったのに、傷や劣化を指摘されて正規の依頼料を受け取れない場合もあるそうだ。
そんな時に仲介する役割である筈の冒険者ギルドでも、基本助けに入ってくれるのは中級冒険者以上のギルド員のみで、初級冒険者の問題はよほど理不尽でない限り不介入を貫いている。
「分かりました。それで、どこに届ければいいんですか」
「依頼主は‥‥グロウ武具店ですね。場所はお分かりになりますか?」
「えっと、大丈夫です」
砥石の採取依頼を出していたのは、一昨日フロイトの武具を揃えたグロウさんのお店だったようだ。確かにあそこなら砥石の需要もあるだろう。世間は狭いと言うべきか、知り合いで良かったと安堵するべきか。
「ソフィアさん、熊の清算が終わりました。後は依頼品の納品だけなんですが」
「もちろん付いていくわよ」
「えっと、お父さんとはもういいんでしょうか」
彼女の後ろには困り顔のロベルトさんが佇んでいる。娘に二日酔いで迷惑をかけ、きっちり詰められたので所在無さげだ。
「やぁ、昨日ぶりだな。今日は娘に付き合ってくれてありがとうよ。君がいなかったら説教は倍じゃきかんかっただろうし」
「昨日はギルトについてアドバイスをいただけて助かりました。ソフィアさんに関しても、僕が一方的に助けられただけなんで、お礼を言うのはこっちですよ」
「お父さん、今日はもう仕事しないでしょ? 私はグラム君に付き合って活動するわね」
「おおう、それはいいが‥‥」
ロベルトさんの目がこちらを値踏みするような物に変わる。娘に悪い虫が付かないようにって感じじゃなく、相手の技量を見抜くような目線だ。
「‥‥その子にするのか?」
「あら、いけないかしら」
「うーん、伸びそうではあるが、まだまだ成熟しているとは言えんだろう」
「この子の職業は魔物使い。伸び代なんてどうとでもなるのよ」
会話の内容から、ソフィアさんの仲間探しの話だろうと予測できる。でも、ソフィアさんは大事なことを忘れていないだろうか。
「あの、ソフィアさん。パーティーの件はまだ返事をしていなかったと思うのですが」
「大丈夫よ」
「えっと、なにが‥‥?」
腕の良い冒険者は狙った獲物を逃がさないのよ、と優しく微笑むソフィアさんの後ろに、蜘蛛の巣が見えた気がしてゾッとすると同時にちょっぴり嬉しいのは、俺もかなりやられているかもしれない。
お久しぶりです。仕事の関係で、一週間から二週間に一ページ程度の更新となると思います。エタることはないようにしますので、ご愛読のほどをよろしくお願いします。




