仲間候補選定
「2種目はブレイドホーンボアだ。まだ出会ってないが稀に1階層で出現するらしい。ホーンボアの上位種だが、捕まえるには強運がいるな」
ダンジョンには稀に、その階層の魔物の上位種が出現する。
ホーンボアの場合は角が前方には伸び、根元から切っ先までが分厚い剣鉈のような形状になった、ブレイドホーンボアが出現する。
ホーンボアの時よりも更に攻撃的で、角を振るい攻撃する。こいつが仲間になれば、一気に戦闘が楽になるだろう。
ただ、問題がある。
ホーンボアの等級は7で、シルトの1つ下だった。だからこそ余裕を持って取り押さえられていた。
だがブレイドホーンボアは、等級を1つ上げた6でシルトと同等だ。相性によって有利不利はあるが、概ね同級の魔物の実力は拮抗する。
倒すだけならまだしも、テイムモンスターにするために生捕りにしたり、サモンモンスターに出来るだけの魔石を確保するには戦力が足りない。
まさに服を買いにいく服が無い状態だ。戦力確保のための戦力が不足している。
とりあえず最後の候補まで話してしまおう。
「最後は狼だな。1頭では心許ないから、2頭ほどテイムしたい。やるなら街近くの森でテイムしたい。今の時期はちょうど発情期の終わり際だ。若いつがいが行動しているだろうから、そこが狙い目だな」
近くの森に住む狼は、殆どが魔物ではない。
獣として自然界に混じり、魔物と生存競争を繰り広げている。そして多くの魔力を喰らった狼が魔物に変質するのだ。
この国では、その魔物になった狼が群れを率いて村々を襲うこともあり、定期的に山狩りが行われる。
おそらく今回ターゲットにする若い狼は魔物ではないだろうが、使役術のスキルは魔物と動物を区別しない。
ここが召喚魔法にはない強みである。召喚魔法は魔石が無いと召喚用の魔石が作れないからね。
「どの選択肢がいいと思う? 俺は狼を2頭テイムするのが現実的だと思うが」
「オレモソウオモイマス、カズガヒツヨウデス」
同意は得られた。となれば、明日の予定は決まったな。
兄さんを見送った後は、冒険者ギルドに行って森で出来る依頼が無いが確認する。
その後に森へ向かい、狼のテイムにチャレンジする。
テイムの成否に関わらず、行きの時間を見て、日が暮れる前には街に入る。
だが、今日のうちに済ませておかなければいけないこともある。宿のマスターとの交渉だ。
狼は肉食獣である。
事前に断りも得ず、それを引き連れて部屋に泊まろうものなら、叩き出されても文句は言えない。
早速フロイトと1階に降りて、カウンターでジョッキを拭っていたマスターさんに声をかける。
「あの、すいません」
「何かお困りごとかな」
俺の言い出しにくそうな態度を見て、何か厄介事かと身構えるマスターさんに、恐る恐る質問をする。
「明日にでも森に行って狼をテイムしてこようかと計画してるんです。この宿で泊めて頂けますか?」
「それなら‥‥あ、丁度良いところに」
マスターが俺の後方に目を向けた。振り返るとそこには革鎧姿の、老躯の戦士が立っていた。
隻眼のその顔は皺も深く刻まれ、過ごしてきた年月を感じさせるが、体は並みの冒険者よりも鍛え上げられている。衰えを感じさせない上腕の太さが逞しい。
「なんじゃいデルバード、肉ならまだあるじゃろう」
「それは大丈夫ですよ、オーナー。それよりまたダンジョンへ?」
「おう、酒代を稼いできたわ」
そう言って腰に下げた袋をポンと叩く。
どうやらダンジョン帰りのようだ。
多分このおじいさんが、解体場で小耳に挟んだダンジョンで店用のホーンボアを狩ってくるオーナーなのだろう。
「んで、ワシを呼び止めたのはこの小僧のことでか?」
「ちょっと、お客さんですよ」
俺のことを顎でしゃくるオーナーさんを諌めるマスターさん。さっきオーナーさんが呼んでいたデルバードって言うのが本名なのだろう。
水を向けられたので、自己紹介から始めよう。挨拶大事。




