明日の予定
未だにフロイトは変な顔をしながら体を触っているが、そろそろ明日の行程を詰めたい。
「フロイト、明日の予定を決めていいか」
すると、動きを止めてこちらに向き直った。
「オマタセシマシタ」
キリッとした目には、さっきまでの緩んだ空気感は感じられない。
「大丈夫だ。それより明日は朝から兄さんが実家に帰るんだ。見送りにいきたい」
「オトモシマス」
「そんなに掛かんないはずだから、宿で寝ててもいいよ?」
おそらく朝一番に出発するはずの、兄の馬車への見送りに付き合わせるのは少し悪い。
「イエ、オマモリシマス」
フロイトは頑なだった。まぁ、着いてきてくれるならそれもいいかとお願いすることにした。問題はその後だ。
「このメンツのまま、ダンジョンに挑んで大丈夫だと思うか?」
「‥‥スグニイキヅマリマス」
「やっぱりそうだよなぁ」
現在のシルト、フロイト、俺の3人では1頭との戦闘は問題無いが、2頭に挟まれたときに窮地に陥る。
今日は上手く捌けたが、このままでは俺かフロイトのどちらかが怪我を負う可能性が高い。
やはり、新しい仲間を増やすべきだろう。
それにしても、当初の予定である俺とシルトのコンビでダンジョンを進む計画は無謀だったな。偶然だが、フロイトを仲間に出来て本当に良かった。
「仲間を増やそうと思う。どんな特徴のモンスターを仲間にしようか」
「タテヤクハ、モウジュウブンカト」
「となると遊撃か後衛か」
フロイトの言う通り前衛はもう十分だ。
例えばソイルゴーレムをもう1体追加すれば、ホーンボアへの対策は完璧になるが、これからの一生をあの1階層で過ごすわけではない。
機敏に動く敵では捉えきれないかもしれないし、空を飛ぶ敵だって出てくるだろう。ここは色々な種類の魔物を仲間にして、戦略の幅を広げていきたい。
とはいえ、目前の敵に対する備えも必要だ。
ホーンボアを相手取った時に1番恐いのは突進だが、それはシルトと俺の魔法で抑えられる。
問題は2体目が来たときの対処だ。
シルトの手が塞がってしまえば、ホーンボアの動きを止める手段が無い。今日のようにフロイトが上手くヘイトを買ってくれればいいが、俺の方に向かってきたら対応が難しい。
やはり、遊撃として機動性の高いモンスターを仲間にするべきだな。それならば、フォローも簡単に出来るだろう。
「よし、遊撃手として足の速いモンスターを仲間に入れよう。候補は3種いる。意見を聞かせてくれ」
「ハイ」
フロイトを見据えて話を続ける。これからの人生と仲間の命に関わる選択だ。真剣にやろう。
「先ずはホーンボアだな。これは魔石を集めてサモンモンスターにも、捕まえてテイムモンスターにも出来る」
本来、ダンジョンのモンスターはテイムが難しい。
それはボスモンスターが自分以外の生命を憎む者だからだ。その意志がダンジョン内のすべての魔物に波及してこちらを確実に殺しにくる。
その意思に対抗してテイムするためには、モンスター側もある程度の強固な意識が必要だ。
例えば弱いモンスターであれば、死にたくないと思って恭順を示してテイムを受け入れようとしても、あっという間に殺意に意識が塗りつぶされてしまう。
最低でも5等級から上の魔物でなければダンジョン内でのテイムは無理だろう。
ではどうやってホーンボアのテイムを行うのか。
ふん縛ってダンジョン外に連れ出せばいいのである。そうすればボスモンスターの殺意に飲まれず自分の意思で選択することが出来る。
もちろん拒否されることもあるが、まぁその時は獲物が1頭増えるだけだ。
フロイトには、まず全部の説明を聞いてから答えるように伝え、仲間候補の魔物情報を並べ立てていく。




