魔法について
フロイトは魔法に関しての知識がゼロなので、まずは魔力から魔法へのプロセスを説明していく。
魔力とは肉体の主要な器官、脳や心臓などから湧き出る力だ。この世のすべての生き物が、あるいは死んでいる者すら、その力を行使することができる。
それらの力は確かに誰もが持つものだが、簡単に使いこなすことは出来ない。
先ずは自らの魔力を感じ、動かすことができるようになるまで反復訓練。
そうしたら、使いたい属性の魔力に変換する反復訓練。
使いたい魔法の形になるまで反復訓練。
安定して魔法を放てるようになるまで反復訓練。
ともかく、魔法を使うのには練習が必要なのだ。
ここまでの説明を聞いたフロイトが小首を傾げる。どうやらいまいちピンと来なかったようだ。では、子供の頃された例え話をしよう。
「魔法を剣術に例えよう。剣を使えるようにするには訓練がいるだろう? 」
フロイトが頷く。
「そのためには剣に触れ、振るいながら重さや反動に慣れなければいけない。相手がいれば組手をしてもらうのもいいだろう」
「ハイ、ソノトオリデス」
「対して魔法は、まず剣に触る訓練から始まる。そもそも見えない剣を手探りして、やっと掴んだと思ったら霧散するんだ。さらに剣の形を見る。陽炎のように姿が掴めないそれを、決めた形に認識するのが次の段階だ。当然、失敗すると霧散する」
段々フロイトの表情が険しくなっていく。雲行きの怪しさを感じ始めたようだ。
「次は素振りだ。まだ不安定なそれは素早く動かそうとすると、たちまち形を失う。ゆっくりとでも確実に振り下ろすことを続けていけば、攻撃に足る速度で振れるようになるはずだ」
「仕上げとして最後に組手をする。真っ直ぐに振れるようになった剣だが、他者からの攻撃や脚運びを意識した段階で維持が出来なくなる。相手に意識を向けつつ、剣への集中を切らさなければ、君は剣術が使えると言っていいだろう」
この例え話でフロイトも理解してくれたようで、眉間に皺を寄せて考え込んでいる。
人間が魔力を扱い、魔法を使う難易度はこんな感じだ。
属性魔法のスキルがあれば、補助が入って格段に使いやすくなる。それに一連の訓練が終わってしまえば、他の属性魔法でも応用が効く。
スキルがあれば、呪文詠唱で一定威力の魔法が放てるようになるので、それを手本にするといいだろう。
完全な後衛型の魔法使いでなければ、隙が大きくなる呪文詠唱での魔法は、実戦では使いづらいと言われることもあるが、訓練では大いに役に立つ。
もし、俺が2つ目の魔法のスキルを獲得できたら、風魔法の時に1年半かかった魔法の安定があっという間に出来るだろう。そのために各種の魔力を練れるように訓練を続けている。
武術系のスキルや、事務的なスキルよりも魔法スキルは取得が難しいとされているが、俺には秘策がある。
さて、話は戻る。フロイトには、まだ言っていないことがある。
さっき魔法の習得は難しいと言ったが、魔物は例外である。
魔物はその魔力を使って無意識のうちに肉体を強化しているので、普通の動物よりも頑強で強いのだ。
それを可能にするのが魔石である。
体内に生まれながらに持つ魔石を触媒に、自身に身体強化の魔法をかけ続けているようなものだ。
ゴブリンであるフロイトが、その小さな体に見合わぬ膂力を秘めているのも魔力と魔石のお陰である。
そう言われるとフロイトは自分の体を触り始めた。魔力を感じようとしているらしいが、そんなに簡単に出来たら俺の立つ瀬がない。
魔物は進化するごとに魔石が強化され、属性を持つこともある。それによって空を舞ったり、火を吹いたりする魔物もいるので、フロイトのこれからに期待しよう。




