宿で反省会その1
反省会をやりたい。
これはこの街に来るとき護衛と指導をしてくれたカイルさんのアドバイスだ。
初めてのダンジョン探索の後に、今持っている装備や作戦をしっかりと見直すよう言われている。
今までの朧気な不安から実態を持った問題点に変わった事柄を、徹底的に洗い出して対策する。これが生き残る秘訣だとしっかりと言い含められた。
まずは今日を生き残れたことをフロイトに感謝する。
正直シルトと俺だけだったら、死にはせずとも大怪我を負っていた可能性が高い。
「フロイト、今日は助かった」
素直に感謝を伝えた。
「イエ、チカラオヨバス、モウシワケナク」
フロイトはフロイトで何か思うことがあったようだ。これからの反省会で聞いていきたい。
「じゃあ今日の反省会をしたいと思う。何か言いにくいことがあっても、出来れば遠慮せず言って欲しい」
どうにもフロイトは俺の従僕であろうとするようで、あまり意見を言ってこない。
それがスキルによるものなのかフロイトの性格によるものなのかは分からないが、ここでは仲間の命に関わるので、忌憚の無い意見が聞きたい。
「まずは装備から。何か不足に思うことは無かったか?」
「イエ、トクニハ」
「そうか、何か感じたらすぐにいってくれ」
まぁフロイトは、今の装備を身に付けてから初の戦闘だし、特に過不足は感じられないか。それ以前は腰布に棍棒だったしな。
これから使い込んで装備の良し悪しを確認していくことだろう。
俺自身も装備に不満は感じなかったが、1つ1つ見ていけば何か感じることもあるかもしれない。
俺の防具はほぼ全てが魔物の革製で胴鎧や小手、具足もワックスで硬化処理した物だ。半年ほど前にそれまでの貯金の半分ほどをはたいて購入した。攻撃を受けていないので当たり前だが、傷は増えていない。
頭部だけは前頭部を被う鋼鉄製の鉢金で、赤い帯布を後頭部で括っている。この地方では頭を被う兜が主流で、視界や聴覚に不安があったので鉢金を使うことにした。
武器は4方向に突起がせりだした柄まで金属製のフランジメイス。それに縁を鉄で補強した中型のラウンドシールドだ。結局今回のダンジョン探索ではどちらも1回も使わず、攻撃は魔法ばかりだった。
訓練を始めた10歳の頃は力が足りず、木製の棍棒とバックラーで日々鍛えていたが、15の今は盾を構えながらメイスを振るい続けることも出来るようになり、スキルとして棍棒術と盾術が手に入っている。
とはいえ、やはり自分は魔法職の気が強いのであまり使いこなせている気はしていない。
装備についての総評としては、特に問題点が見当たらない。強いて言えば俺が武器を使わなかったことだが、積極的に前にはでていないので仕方がないと思う。
魔物に対人訓練で培った技術が通用するかは不安だが、これからのダンジョン探索では使う機会もあるだろうし、それからまた考えよう。
次に作戦について整理する。フロイトに意見を聞く前に今回とった作戦について振り返ってみたい。
ホーンボアが真っ直ぐに突っ込んでくるのは前情報で知っていたので、俺の魔法で勢いを削いでからシルトの重量と膂力で受け止めて取り押さえ、フロイトに止めを刺してもらうのが考えていた定石だった。
ある程度は成功したが、想定外のことも起きた。
それを踏まえて、フロイトにも感想を聞いてみたい。
「今日の作戦についてはどうだ。なにか気付いたことはあるか」
「オオムネセイコウデス。シカシ……」
フロイトは言いにくそうに言い淀む。問題が有るように感じているようだ。俺としても、改善の余地があると思っていたので続きを促す。




