危険と等価の高収入
やはり気になるのは1頭当たりの買い取り額だ。
皮と肉、骨やら牙やらあまり価値の無さそうな物まで、余すこと無く買い取ってもらう。解体をお願いする2体も含めて、魔石だけはとっておくけど。
「よし、査定は終わったぞ。全体の金額だけ聞くか? それとも部位ごとに説明しようか?」
どうやら、こちらが新人だということを鑑みて、買取金額の解説をしてくれるようだ。有り難く拝聴させてもらおう。
「おねがいします」
そう言ってボールドさんに軽く頭を下げると、彼はその太い指をホーンボアの1体に向け、部位を指しながら解説を始めてくれた。
「まずは1番安い奴からいくぞ。骨と牙は値段がつかんな。これは仕留め方の問題ではなく、単純に需要がない。まぁ最悪処理すれば肥料にはなるから、11頭分合わせて銀貨3枚、3千ゴルディンってとこだな」
そう言って牙を指で弾く。
強力な魔物は、骨や牙が武器に加工できるため高値で取り引きされるが、流石にこの等級の魔物ではただの骨と代わり無いようだ。
「どんどんいくぞ、次は角だ。こいつは1対で銀貨1枚だな。加工方法までは知らんが、錬金術の触媒として使えるらしい。 ホーンボア自体が、ダンジョンから多く狩られて出るから数が揃いやすく、手頃で安価な材料だそうだ。 一応需要はあるんだが、供給量には追い付いてなくてダブりぎみでな。」
これもよく聞く話だな。動物が変異した姿の魔物は、変異の特徴に魔力が宿りやすく、様々な用途に使われる。
ホーンボアについてはその名の通り、角の生えた猪なので、角が魔術的価値が高いようだ。まぁあくまで比較的だけど。
「そんで次に皮。傷の入り方で多少上下するが、ざっと銀貨2から3枚ってとこだ。冬前なら敷物か多少固いが防寒着にするために、多少買取値も上がるんだがな」
皮には今の時期、あまり需要が無いらしい。
それにしても猪皮って防寒着にも出来るのか。服の上から羽織るのかな。固くて服には出来ないと思い込んでいた。
「最後に肉だ、これが1番高いな。血抜きも充分で、モツの処理も失敗してない。多少打撲痕が目立つが、値がつく部位は無事だ。おおよそ新人の獲物としちゃあ最高と言っていいだろうな。数も多いし、多少色をつけて1頭につき大銀貨8枚で買い取ろう」
「だいぎんかはちまい?」
え、そんなにするの? 全部まとめてじゃなくて1頭につき?
「なんだ、不満か?」
笑顔だったボールドさんの片眉が上がる。どうやら値段が低いって取られたようだ。
慌てて訂正する。
「いや、高くないですか?この街の肉の値段からしても破格のような気がします」
そう、宿で食べたでかいステーキやらベーコンやらを考えても卸値から安くないとどうにも算盤が合わない。
街の物価から、大銀貨3枚いけば御の字かなと予想を立てていたが、ほぼ3倍となると何か知らない要因があるとしか思えない。
「そっちか。そんなに安く肉が食えるのは‥‥そうか、お前肉の宮に泊まってるな?」
元の恵比寿顔に戻ったボールドさんが指を弾く。
「はい、そうですけど。よく分かりましたね」
「冒険者御用達だからな。あそこは特別なんだよ。表には出てこねぇが引退した冒険者の爺さんがオーナーをやってて、未だに1階層でホーンボアを狩って宿に卸してんのさ」
「な、なるほど」
確かに、自分で狩ってきているのならどんな値段でも問題はないのか? でも、それにしたって武器防具の維持費だけでも足が出るような?
「それに、肉にはこの街以外への需要もあってな。焼き干しにしたり燻製にしたりして、周辺の街にも出荷してんのさ。正直需要は無くなる気配がねぇから、じゃんじゃん狩ってきてもこのぐらいの値段はつくぞ」
需要があるからこその買取価格らしい。




