やっと冒険者ギルド
上下で違和感の無い古着を購入していく。
服を買うときに大量生産が望めないこの世界では、オーダーメイドか古着の2択になる。
普段着る服ですら仕立てるのはある程度裕福な商家の主人とその奥方くらいからで、大抵はその家族ですら一張羅以外は古着の場合が多い。もちろん今俺が着ているのも古着だ。
まぁ質は良いものだが。
もちろん布の産地だったり、商会として布を服を扱っていればその限りではない。
フロイトは元々が腰布1枚の蛮族スタイルだったので、服を着ること自体に慣れておらず、デザインや色の好みすら不明確だ。ここは無難な渋染のシャツと綿のズボンを着まわし用に3セット、それにポケットがついたベストを1着だけ買っておこう。
「ではこれでお願いします」
「ありがとうございました。進化して服が小さくなったらまた買いに来てくださいね」
そう言って恰幅のいい店員は頭を下げる。
店を出て冒険者ギルドに向かって歩き始める。
それほど値も張らない割には良く手入れされた古着だったし、また利用するとしよう。
質の悪い店だと服なんだかシラミの巣なんだか分からない服を平気で売るところもあるから、多少値段が上がってもまともに洗って虫除けを入れて保管してある店がいい。
荷物は全部聖人の腰袋に収まった。冗談のような容量だが、このウェストポーチよりも一回り大きい程度の袋に2人分の生活雑貨と保存食まで入っている。
少し前まで予備の鎧やら武器やらが収まっていたのを加味してもまだまだ底が見えない。
実家で少し検証してみたとこがあるが、しゃがんだ人1人が入れそうな木箱を48箱ほど入れて実家の商会にあった空の箱が尽きた。
大きな木箱を入れるのは袋が破けるかもと心配していたが、入れようとした途端にするすると袋が拡がり、そのまま上から被せるように袋に全体が収まったところで縮んで元の大きさに戻った。
出すときは逆に袋を下向きに拡げれば大きいものでも取り出せるようになっている。
初めて見たときは消失マジックのようで唖然としたが、この仕様なら倒した魔物もそのまま持ち帰ってこれると喜んだものだ。
店を出て歩いてきたのは、たったの10分くらいだったが長い距離を歩いた気分だった。
自分はこのドアをくぐり大成するために7年間ひたむきに努力してきたつもりだ。
それは貧困からの脱出のためでも世界を救うためでもなく、ただ自分の夢を叶えたいと思ったからだ。そこに嘘偽りはない。
はっきり言ってあまり真面目な方ではない自分が、なぜ毎日辛い走り込みやら、鈍痛伴う戦闘訓練を続けられたかは分からない。だが不思議と辛く苦しい思い出ではない。
この先にもきっと苦難が待ち受けているだろう。
それでも前に進みたいという気持ちが揺らがないのは、これが俺のやりたいことだからなんだと思う。
幸いにして俺には頼れるゴーレムと、武器好きのゴブリンがついている。1人じゃないだけ心強いというものだ。
恐れずに進もう。
冒険者ギルドのドアに手をかける。石造りの堅牢な印象を受けるその建物は、それに見合うように分厚く立派な両開きのドアがついていた。
気圧されないように胸を張って進もう。
冒険者は強さがものを言う世界だ。
不安だからって怖がってちゃ余計絡まれる。
そう意気込んで開けたドアに金属製のジョッキがぶち当たり破滅的な音を立ててひしゃげる。
ヒェェ、怖っわ····
中は外とは別世界であった。




