オリバー商会雑貨店
雑踏の街並みを歩く。
今日は市でもやっているのか買い物籠を下げた人が多い。
生活が落ち着いたら覗きにいってみようと思う。
革鎧を着込んでいるからか、ゴブリンを連れているからかは分からないのが人波が少し遠巻きに感じてしまう。
やはりテイムされているとはいえ、野生下では人を襲ってくるモンスターは人受けが悪い。
特に戦闘職ではない街に住む住人達はことさらその傾向が強い。
これが例えば山村の農民や漁村の漁師ならば、農作業や漁の最中に魔物に出くわすこともあり正しく危険を評価できるが、いままで一度も魔物と対面したことのない人も多い街中では過大に忌避されてしまう。
とはいえ、テイマーという技能も冒険者には一定数いるので見かけること自体はある筈なので、そこまで警戒されている風でもない。
これから住む街に早く馴染めるといいが。
目的の雑貨店に到着した。看板にでかでかと『オリバー商会雑貨店』の文字が躍っている。
店の規模は中堅くらいのようだが、朝だというのに客が多い。
客層も広く恰幅のいいおばさんや職人風の男、自分達のような鎧姿の者も見える。手広くやって繁盛しているようだ。
高価なもの以外は自ら手にとって、奥の店員に会計を頼む方式のようだが、窃盗対策はどうやっているんだろうか?
見回りの店員もいるようだが、それだけで防げるものなのだろうかと他人事ながら不安に思う。
ともあれ買い物はせねばならない。
必要そうなものを備え付けの籠に放り込んでいく。
昨日がっつり使って減った石鹸を買い足しておく。他にもロープにたわしなどの洗濯用品と下着類を5セット、歯ブラシに陶器のマグカップ、木椀とスプーン、フォークと人が一人生活するための物資は多岐にわたる。
ナイフは買うつもりだったが、これまた俺の解体ナイフの予備を渡すことにした。
というのも、フロイトがナイフをかなり気に入ってしまったのだ。刃渡りは14センチほどと長くもなく短くもないサイズで、刃は分厚くハマグリ刃になっている。予備的な使用を目的としていたので冒険者が持つものとしては小振りだろう。
それでもフロイトには初めての自分の刃物となった。思い入れも一入だろう。手入れ用の油を容器ごと購入しておく。食べ物を切る機会もあるはずなので、植物油を入れておこう。
めぼしいものは確保できたので、店の奥の方に仕舞われた古着を見せて貰おう。
「すいません、古着を上下で3着ほど見繕ってほしいんですが」
「はいはい、着るのはお客様でしょうか? それとも後ろの方で?」
でっぷりとしたビア樽のような腹を揺らして男が振り返った。見かけのわりには機敏な動きに感じるのは、そのやり手の雰囲気故だろうか。
「後ろのゴブリン、仲間のです。後はこちらの雑貨類もまとめて支払いたいんですが」
「なるほど、雑貨類を見るに最近テイムで仲間にされましたな? 新生活の準備に当店を選んでいただきありがとうございます。ならば普段着は大きめで構いませんか?」
にこやかにこちらの近況を予想する店員の言わんとしていることは良くわかる。ここは素直に持ち上げられておこう。
「ええ、格好を見て貰った通り冒険者なので。仲間もすぐに進化して貰いたいところですからね」
ゴブリンは進化しやすい。そして、進化に伴って体躯が大きくなることはよくあることなのだ。
それはもはや別の生き物と呼べるほどに変わることすらある。
例えば2段階の進化を終えたゴブリンは、次に進化する時に種族が変わることがある。それはオーガだったり鬼人だったりと今までの成長の方向性に則したものとなる。
フロイトはまだただのゴブリンなので、進化してもそこまでの変化は無いだろうが、体はどんどんでかくしていくつもりなので大きめでいいだろう。




