名は体を表す
階段を降りきると一気に騒がしくなったのは消音の魔道具の効果だ。
これならいくら酒場で騒がれても快眠は約束されているだろう。そう思えるほどの盛況だった。
各々のテーブルには旨そうな料理が並び、厳つい男たちが酒を片手に笑いあっている。
かなり男が多いというか客は益荒男100%って感じだ。
そんな男くさい空間に華を添えてくれているのがウェイトレスのお姉さん達だ。
あからさまに露出の多い格好でもフリルのついたかわいい格好でもなく、簡易の給仕服といった様相だがそれが逆にあか抜けない可愛さとなって場を和ませている。
なんとか端の方の2人掛けのテーブルに腰を下ろすと、さっそくウェイトレスのお姉さんがやって来た。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
「あの、ここの二階に宿をとっていて夕食が付くって言われているんですが」
「ああ、泊まりのお客さんですね。それなら日替わりの定食が追加料金無しで頼めます。少し追加で出せば他のメニューも頼めますので、良ければ注文してみてくださいね」
「じゃあとりあえず日替わりを二人分ください、後は飲み物を……」
「定食には果実水が付きますよ。これも多少追加料金を出せばミードやエールに変えられますからね」
「今日はそのままでいいかな、フロイトはお酒飲みたい?」
「オキモチダケデ」
何度も思っているけど、何でこんなに語彙が豊かなんだろう?テイムしたばかりのゴブリンといえば殆どハイとイイエと雄叫びしか発しない、進化が進むごとに流暢に話せるようになるって教本には書いてあったんだけどな。
人間と交流のあるゴブリン自体が少ないからテイムした影響で喋れるようになった筈ではあるんだけど。
注文を終えてそんなことをつらつらと考えながら待っていると、俺達のテーブルに日替わり定食がやって来た。
デカァァァいッ!説明不要!
そんなセリフが頭の中で流れるほどのデカイ一枚肉がプレートの上に鎮座している。これ俺の顔よりでかくない?
カリッとした焼き色は表面を焼き締めて肉汁を閉じ込めた証だ。それだけでもこのステーキが手抜きでも量だけ多いわけでもないことが分かる。
何より匂いが破壊的だ。ニンニクと玉ねぎのステーキソースなんて、殺人的にうまいに決まってる。
付け合わせのマッシュポテトまでたっぷりだ。これに根菜類が多めの具だくさんスープとおそらく風味的にレモン水であろう果実水が付いている。
なるほど、店名の肉の宮とはこの事を指しているのだろう。肉料理に自信ありって訳だな。
そこからはもう言葉は要らなかった。フロイトと二人無心で旨い肉を食い進めるのみである。
部屋に戻ってさっそく眠る。明かりを付ける手段はあるが用事もないし、腹一杯喰って眠るのは気持ちいいから。
おやすみ。




