一応のフル装備
そういえばさっきからフロイトが喋らない。いや、おしゃべりなタイプではもちろんないがここ半日で一番気配が薄い。
そう思って振り返ってみるとそこにはトランペット少年めいた眼差しで武器を眺めるフロイトがいた。
「あの、フロイト?君の武器の話なんだけど、グロウさんのおすすめはこれなんだけどどう?これでいい?」
なんか水を差すのも悪い気がしたが大切なことなのでショートグレイブ亜種を渡す。
「オオォ、コレハイイモノダァ」
「あれ、フロイト?なんかキャラ変わってない?武器オタクっぽいぞ、それ」
「スミマセン、ヨロコビノアマリ」
重さや重心をみるのに軽く振るのはいいとして、刃に顔を擦り付けるのは止めよう?二つの意味で危ない。
結局他にもショートスピアやポールアックスも見せてもらったがショートグレイブ亜種よりもしっくり来るのはなかったようだ。鎧下と盾もまとめて購入することにした。
この世界のスキルはかなり広範に及び、俺のように冒険者になりたいとでも思っていなければ生産スキルや自分のなりたい職に役立つスキルがもらえることが多い。
グロウさんのスキルは生産特化でかなりの熟練度を誇り、俺が持ち込んだ予備の革鎧もあっという間に調整されて鎧下を着たフロイトにぴったりと決まった。
「おう、じゃあ占めて合計22万8千ゴルディンだな。整備用の油とボロ、鞘と吊り紐はまとめて値引いてやるから研ぎに出すならうちを使えよ?」
この通り、商売もうまいのでグロウ武具店は安泰だろう。
金貨2枚に大銀貨3枚を払い銀貨2枚を受け取って売買成立である。この額はだいたい実家で雇っていた荷運び人足のおっさんの月給と同じくらいになる。
一月に14万ゴルディンもあれば親子三人が普通の借家に暮らしていけると考えると結構いい値段するなぁ。
まぁ俺には10歳の頃から5年ほどあくせく実家で(シルトが)働いて稼いだ賃金の蓄えと、事前に聖人の腰袋に入れられていた親からの支度金があるのであまり痛い出費ではないが。
とはいえこれから収入が不安定な冒険者稼業を始めるのだし無駄遣いはなるべく控えよう。
「では、ありがとうございました。また伺います」
そう言ってグロウ武具店を離れた俺たちは、今晩の宿に向かうため歩きだした。




