鉄の塊で殴る。相手は死ぬ。
武具店の店舗スペースに並んだ武器の数々を見回しながら商談が始まった。
「んじゃあ鎧下と盾、それから剣?まぁ鎧下と盾はそれほど選択肢もねぇし、すぐ欲しいってんならすでに出来てるもんを詰めるなり伸ばすなりで対応できるがよ。剣の方はどの方向性のが欲しいんだ?」
グロウさんは矢継ぎ早に聞いてくる。
「出来れば大剣ぐらいの重さがある技量で斬るのではなく重さで叩き切るような、とりあえず力があれば敵を殺せるような得物がいいんですが」
相手は父さんが信用できると、俺に紹介するレベルの職人だ。下手に知ったかぶりせず欲しいものをそのまま伝えてみた。
「叩き切るか···どうしても剣の方がいいか?見たところそっちのゴブリンに使わせるんだろうが、すでにメイスも持たせてるだろう。短剣や直剣ならともかく、大剣じゃリーチやら攻撃の方向性やらがかなり被るぞ」
グロウさんは、俺の剣という選択自体に疑問を投げ掛けてきた。
「特にこだわりがあるわけではないんです。でもこれからダンジョンに潜るにあたって前衛を任せようと思ってまして。槍はとり回しが不安だし、直剣は技術的な不安が大きい。短剣では接近のリスクが高すぎると思うんです」
正直俺では大剣以外の選択肢が思い浮かばない。ゴーレムであるシルトをメインタンクに据えてサブの前衛戦士としてフロイトにも戦ってもらいたいと思っている。
そのためにも打撃力のある武器が必要だ。
預けたメイスは柄こそ長いが、片手での使用が前提の作りのため、威力が足りないかも知らない。
そして、俺は後方からの風魔法で援護と後方警戒、必要に応じて回復役もこなせればと考えている。武器も使うけどね。
「こんなのはどうだ、最悪振り損じても衝撃は与えられるし、素人冒険者の蛮用にも耐える」
それはパッと見では武器というより藪こぎの道具に見える。長い柄のついた山刀のようだ。
フロイトの胸ほどまである槍柄と、その先に付く刃は分厚く、ともすれば鉈のようにも見える緩く沿った刃が、腕の肘から手首ほどの長さまで延びている。
切先はあまり突くのには向いていなさそうだが、フロイトの人以上の膂力ならば振り回すだけでも驚異だろう。
「怪力自慢の獣人用に誂えた短槍だ。槍柄の中ほどまで鋼芯が入っているから滅多なことでは折れんぞ、刃を立てなくてもそこいらの魔物なら振りがもろに入れば瀕死だろう」
言うなればショートグレイブ亜種のような独特の武器のようだ。分厚い薙刀と形容しても良いかもしれない。
「この形状じゃあ突くのには向きませんね」
「ダンジョンは洞窟の一本道で回り込まれるようなことはないと思われがちだが、一人だけで槍を突きいれたところで左右にかわされるだけだぞ。特に素人ならなおさらな」
「そんなに広いんですか?初級ダンジョンは最初は狭い一本道って聞いてたんですけど」
「下層に比べりゃって話だな、三人が横に広がって武器振り回せるくらいの幅はある」
思ったより広いな、聞いといて良かった。
そうなると、このグレイブ亜種も十分に選択肢に入ってくるな。




