ゴリラはやさしい
「はじめまして、自分はグレイ商会会長アーベルトの息子、三男のグラムと申します」
第一印象と挨拶は大事だ。これは冒険者も商人も変わらない。
「えっ、グレイ商会って隣街から時々大口の発注がかかるあの?」
うん、だぶんそのグレイ商会で合ってます。
なんだかいまいちピンと来ないような態度で聞き返す少年。
まぁ自己紹介とはいえ突然来た同い年くらいの、いかにも冒険者でございという格好した男が『僕は商会長の息子です!』なんて言っても怪しいだけだよねぇ。
「この度独り立ちし、このソルフの街で冒険者として活動していくことになりました。まずは父の奨める武具店に挨拶と、さっそく武器防具が必要になりまして。あ、これ父からの紹介状です」
混乱させっぱなしでは話が進まないので、父さんから預かった紹介状を渡す。
用件といっしょに伝えたのでますます混乱しているようにも見えるが。
「確かに、いつもの書類の印と同じだけど……ええと欲しいものがあって商会長の息子さんで大口契約?でも冒険者だから個人購入?あれ?挨拶だっけ?」
なんかさっきより混乱度合いが増して見えるな。最初は接客も慣れてる風だったからそのまま用件伝えてみたけど。
ふと気がつくと鉄を打つ音が止んでいた。
「あいかわらず型から外れると、半人前どころの騒ぎじゃねぇな」
ゴリラのような大男がでかい手で少年の頭を掴んで下がらせ、ついでとばかりに紹介状を手から抜き取る。
少年はほっとしたような顔をしたが、後で怒られるのかさっと青ざめると、店の奥へ消えていった。
「ほーん、確かにアーベルトさんとこの倅だな。んで?なんか用かい?」
流すように紹介状に目を通し、こちらを値踏みするように睨み付けるグロウさん。で合ってるよね?
「今日は挨拶と、出来れば明日からでもダンジョンに潜りたいので、今日仲間にしたフロイト…ゴブリンに鎧下と盾、出来れば剣も買い揃えたいと思って来ました」
話が通じそうなのでそのまま話す。
「あの、店主のグロウさんですよね?はじめまして、自分はグレイ商会会長アーベルトの息子、三男のグラムと申します」
さっきの挨拶の焼き増しだが、改めて挨拶をする。
でも、なんで睨まれてるんだろう?
まさか『俺様は得意先のご子息様だぜぇ?もちろん格安で武具を提供してくれるよなぁ?』みたいなチンピラどら息子に見えるんだろうか。
アイムフレンドリー。グロウマイフレンド。
「あーあーそんなに身構えんな。確かに俺がグロウだよ。怖がんなくてもとって喰いやしねぇよ。俺は顔がワイルドなだけでガキどもにはやさしいおじさんで通ってるんだぜ?」
ワイルドっていうか、細かい傷痕と鍛冶場の煤で97%くらい大山賊なんですが。
「まぁ、事情はわかった。お前さんの親父さんはお得意さんだからな、いいのを見繕ってやるよ」
やさしいおじさん‥‥!




