グロウ武具店
足早に街中を進む。
地方の街にしてはなかなかの賑わいを見せるこの通りは、いわゆる目抜通りとでも呼ばれる通りだろう。
もう太陽も後半戦に入っているが、地べたに商品を広げている行商人のような人達もいる。
ポーションなんかも売っているようだが、はたして買う人間はいるのだろうか。
町行く人たちはこちらに一瞬目を向けるが、直ぐに興味を失ったように歩き去っていく。
大方は街中にいるゴブリンに目を引かれ、付けている装備や同行する俺に気付いて、テイムモンスターだと納得しているのだろう。
「一応言っておくけど、もし喧嘩を売られても俺が適当にあしらうから相手にしなくていいぞ」
フロイトにそう告げると、黙って首肯している。
なんだろう、テイムの時に『前衛を任せるから寡黙な騎士のようにカッコよくて強くなるといいな』って考えたのに影響されてるのか?魔力パスにはテイマーの意思を伝える役割もあるし。
謎の多いスキルだ。
正直、冒険者にも正式にはなっていない状態で暴力沙汰を起こすのは避けたかったので警戒していた
でも流石に、白昼堂々大きな通りで絡んでくる馬鹿はいないようだった。
憲兵に1発でしょっぴかれるからだとは思うが、治安が良いことを期待しよう。
小さな屋台やら落伍者のおっさんらをかわしながら、目抜通りから一本入った通りにその店はあった。
『グロウ武具店』
柱に下げられた分厚い看板にはその店名だけが彫られていた。
ここいらの地方では良くある作業場と店舗が一体化し居住スペースが奥にあるタイプの武器鍛冶屋のように見えるが、革鎧なんかも外から覗ける。
確かに武器屋ではなく武具全体を扱ってるんだろう。
中に入ってみると外から見るより奥行きが有ることに気付いた。それと同時に炉の熱気と、鉄を鍛えるハンマーの音が耳を叩いた。奥から赤い炎の光が揺らめいている。
こんなに熱くても、皮製品は変質しないものなのだろうか?
熱はともかくこれだけ大きな音が開け放たれたドアや鎧戸から漏れないのは、消音の魔道具が設置されているのだろう。
こちらの常識では儲かっている鍛冶屋は魔道具に使う魔石が潤沢に使えるので、かえって静かなのだ。『下手な鍛冶屋は声が大きい』なんてことわざもあるほどだ。
ちなみに言えば、鍛冶屋はみんな声が大きい。
消音効果は外に音を逃がさないための物なので、中で仕事をする分には消音効果なんて無いからだ。
黙々と鉄を打つ40絡みの大男と、武具を並べるためなのか、やたらとでかいカウンターの前に15くらいのこちらも大柄な少年がナイフに油を塗っていた。
「すいません、店主のグロウさんはいらっしゃいますか」
まぁ、十中八九は奥の練鉄してるおっさんだろうけど。
この世界、20歳くらいに見えて150歳とかたまにいるから、油断して嘗めた態度はとれないんだよな。
「いらっしゃい、親父になんか用かい?悪いんだけどあの仕事が終わるまでは手が離せなんだ。俺でもいいかい?」
やはり考えすぎだったようで息子だという少年にさっそく用件を伝えることにした。




