暫しの別れ
ここソルフの街は城壁外にダンジョンがある。
それを目指して冒険者が集まり、討伐された魔物の素材や宝箱からドロップした魔法の品々を買い付ける商人と、それら相手に客商売を始める飯屋や雑貨屋などで賑わっている。
当然だがこの街に入るのにも税がかかる。
門の前には何台かの馬車や、冒険者の姿がある。入門の順番を待っているんだろう。
とはいえ今は特に検閲もしておらず門兵、いやこの街は領主がいるはずなので近衛兵になるが、ともかくたいして待たずに兵士に入門税を払い街に入った。
生まれて初めて他の街に来たが、故郷の街よりも大きいことだけしか分からなかった。
「なんとか無事に街に入れましたね、お世話になりました」
兄さんがそう言えば、馬車から自分の荷物を下ろしていたカイルさん達は笑いながら談笑している。
「まぁ今回は運が良かった。夜襲もなかったし、出たのもほぼ非武装のゴブリンだけだったしな」
「夜中にウルフに絡まれるとひたすらに面倒だものね」
カイルさん夫婦は、そう話しながらも、手際よく自分の荷物をまとめてしまった。
「それじゃ俺達はここらで行かせてもらうぜ」
「グラムくん、次に会うときまでに、しっかり強くなっていてね」
「ま、一番大事なのは死なねぇこった」
「はい、ありがとうございました。お世話になりました」
「おう」
あっさりとしたものだが、カイルさん達とは門を入ってすぐに解散した。少し寂しくも感じるが、そういう慣例なのだそうだ。
どこか寂しさを感じていると、レイモンド兄さんから話題がふられた。
「グラム、お前はどうする?俺と一緒に宿に泊まるか?」
「いや、俺もここで解散させてもらうよ。ありがとう兄さん」
いつも家の人間が泊まる宿の名前は知っているが、同時に値段も知っているので遠慮した。
「そうか、俺は二日後の朝にこの街から出るぞ。黄金色の海原亭に泊まっているから、用があるなら訪ねてこいよ。むしろ無くても来ていいぞ」
「うん、見送りには行くよ」
流石にここまで送ってもらって、見送りも無しでは不義理が過ぎるし、出来れば兄の顔もまた見たいしね。
「‥‥頑張れよ、グラム。危なくなったら逃げるんだぞ」
兄さんはこちらを時折振り返りながら去っていった。
なんだか何かを言い足りないような、喉につっかえたような態度だったけれど、どうしたんだろう。
もう昼をだいぶ過ぎているが、今日中にやらなければいけないことがある。
宿の確保とフロイトの服と武器の購入だ。
生活用品もほしいがとりあえずは、俺とシェアすればいいだろう。
現在フロイトはボロ布の上に革鎧というなんとも特殊な格好だ。
俺の服をやってもいいが、鎧のようにしっかりとした調整ができないので、古着屋でとりあえず体のサイズにあった服を手に入れたい。
時間的にすべての予定をこなすのは難しいかも知れないが、出来るだけのことはしよう。
でもら明日から早速冒険者ギルドに行って、ダンジョンに挑みたいので、やっぱり出来れば今日中に戦える準備を整えたい。
優先順位は、武器、宿、服だ。
俺は足早に父さんに薦められていた武具屋に向かった。
後になって思えば、どう考えても服と宿が優先だろうとは思うが、この時はダンジョンに挑むことしか頭になかったのである。




