到着
そんな話をしていると、兄さんがひょっこり顔を出した。
あの筋肉質の大きな体で何処に隠れていたんだろう?
「終わったようで何よりです。怪我もしていませんね、流石です」
なんて話をカイルさんにしながら急いで出立の準備をしている。
派手に暴れて血も流れた。魔物が寄ってきてもおかしくはない。
夜中なら迎撃も考えるが、幸いにしてもう朝日が眩しいほどに顔を覗かせている。
冒険者は魔物と戦うのが仕事だが、護衛の場合は出来るだけ戦闘を避けるのが鉄則。
というわけで、さっさと野営地からおさらばすることにした。
馬車の上では、フロイトの装備を整える作業が進んでいた。
ゴブリンであるフロイトは15の俺よりも少しだけ背が低い。
つまりは俺よりはでかくないので、俺の予備の装備を宛がえるのだ。
お古になるが、どう考えても体に巻いたボロ布と材料そのままの棍棒よりはましである。
ちょっと大きい革鎧もベルトで調整可能だし、フランジメイスはかなり似合っている。
鎧の下はボロ布のようだが、それも相まってこれぞ山賊ゴブリンって感じだ。
メイスを眼前で掲げているフロイトの目が、心なしか輝いて見える。
武具が好きなのだろうな。
わかる。いいよね、武器。
額当ての予備はないが、揃えばまさにゴブリンソルジャーだ。でも、角があるので難しいかもしれない。
間に合わせだが今はこれで満足しておこう。
大きな円盾と長剣も、街に着いたら値段次第で与えようと思う。
ようやっと召喚獣とテイムモンスターが揃ったところで、魔物と召喚魔法、そして使役術の関係とそれに基づく計画を確認しておこう。
魔物とは、女神が人への試練として世界に解き放った訳ではない。
そもそもこの世界にダンジョンができる前から、この世界はファンタジーしていたのである。
ここにはやはり魔力が関わってくるだろう。
魔物の源流は、魔力で肉体が変質した原生生物である。そこから進化の枝分かれが発生したようだ。
ちなみに転生時に手伝ってくれたクロムからの世界についての説明情報なので間違ってないだろう。
元々の進化の枝が根本から違う生物である魔物は、ダーウィンの進化論に真っ向から喧嘩を売っている。
彼らは、『個体での進化』が可能である。
早い話が魔力を糧に肉体のバージョンアップが可能なのだ。
遺伝子情報?うんこ召し上がれとばかりに肉体を変質させる彼らは、上位種に上がるのに魔力が必要である。質量保存もなにもあったもんじゃねぇなこれ。
そんな愚痴はさておいて、早い話が強い奴を食らえば強くなれるのである。敵を倒せば倒すほど強くなる修羅システムなのだ。
ここで、魔物使いが出てくる。
人間がスキルとして使う召喚魔法と使役術は、どちらも魔物に魔力的なパスが繋がっている。
その魔力パスの影響で進化が促進されるのだ。
俺がゴブリンを選んだもう1つの理由は、進化が起きやすいからだ。
ゴーレム等の魔法生物も比較的肉体の変化に順応しやすく進化が早いが、ゴブリンは別格である。
これからは、積極的に魔物を倒して進化を狙っていきたい。
馬車に揺られること約半日、俺の冒険の舞台となる街に到着した!……隣街だけどね。




