宜しく相棒
だが、ほどほどに金持ちな商会の3男坊であるグラムは、子煩悩な父の存在を計算に入れていなかった。
商人が金で解決できる問題を解決しないわけがないのである。
かくして8等級の弱小モンスターから始めるつもりの仲間集めは、いきなり裕福な初心者御用達の定番モンスターから始まったのである。
俺たち親子は契約のために街の外壁の外まで来ていた。
いくら暴れないはずでも、街中で魔物召喚はリスキー過ぎる。
一応街の憲兵から見える位置で魔物を召喚するため、事前に話を通しておく。
憲兵さんも、今日初めてスキルをもらって、今から召喚して契約するんだと聞くと、微笑ましげに見つめて、気を付けるんだよと声をかけてくれた。
「サモン!ソイルゴーレム!」
門から程近い場所で、召喚を試みる。
ほんとは魔力を籠めるだけだが気合いを入れてみた。
魔石から魔力が抜け出て大きな人形を形作る。
成功である。
それは、まだ10歳の体格からすれば余りに大きかった。
大柄な父の背丈より頭ひとつは大きい体に長い腕を地面につけたシルエットは何処かゴリラを思い起こさせる。
体表は踏み固めた土のようでそこまで頑丈そうにはみえない。
そんなゴーレムが俺からの命令を待っていた。
「す、すげぇマジでゴーレムだ…」
思わず口調も荒れるほどの感動が俺を襲っていた。
今まで街の外に出してもらえたこともなかったので、これが近くで見る初モンスターである。
「ほらグラム、早く契約の名付けをしなさい。6等級の魔物だけど万が一があるからね」
基本的に召喚魔法使いが召喚した魔物は言うことを聞いてくれるが余りに強いと術者の制御を離れる事があるようだ。
そしてその魔物が暴れた場合、責任は召喚者に紐付いて裁かれる。
もっともこれは自我の薄いゴーレムだし、暴れるのは飛竜のような強さの魔物からだが
「お前の名前は『シルト』だ、俺と契約してくれ!」
そう言うと手に持っていた茶色い魔石が、手の平から自分の体に溶け込んでいくのを感じた。
特に違和感はないが、明らかに手の平の厚さには、収まらないくらいの質量はあったと思うが、何処に仕舞われたんだろう。
ともかく、これで契約成功のはずだ。
「シルト、右手上げて」
簡単な命令を出すとソイルゴーレム…シルトの右腕が上がった。
「うおぉ、動いた」
「それは動くよ、ゴーレムだからね」
「うん、うん……父さん、ありがとう」
感動で泣きそうになったので、鼻を啜って誤魔化した。
「どういたしまして、息子よ。さぁ早くゴーレムの召喚を解除して戻ろう。今日はささやかなお祝いだよ」
「えっ、もう少しだけ一緒に動いてみたいんだけど……」
「母さんが待ってるのを忘れたのか?拘束時間がどんどん伸びるぞ?」
うっ、それは不味い、あの抱きしめは人前ではやめてほしい。
やむなくゴーレム改め、シルトを取り込んで帰路につき、しっかりと祝われたのだった。
祝いの席では、家族一同の祝いの言葉はもちろん、商会の従業員のおっさん連中には揉みくちゃにされ、坊っちゃんおめでとうと叩かれまくった。お前ら仕事はどうした。
ささやかなお祝いと聞いていたが、それはあくまで商会の会長基準のもので、結構ガッツリパーティーだった。
あまり社交的ではない精神性なので、めちゃくちゃ疲れた。
でも、誰かに祝われるのは、とても嬉しいものだった。




