表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンDAYS 召喚師テイマー奮闘記  作者: ディスク
転生
1/105

愛しき灰色の日々の終わり

申し訳ありませんが、少々加筆させていただいております。大きく設定が変わることはないのでご安心下さい。

『自分の思ったように生きなさい』なんて言葉はまやかしである。


 そんな風に思い始めたのは最近のことだ。

 もう今年で入社して5年目になる、見慣れた職場でふとそんなことを思った。


 どうせ似たような単純作業の繰り返しだし、さすがにもう考え事をしながらでも間違えるはずも無いだろう、そんなことをつらつらと思いながら仕事をしていた。


 記憶を辿ってみても俺は怠惰で、消極的な受け身の子どもだった。

 『こうした方がいい』『本当にそこに行くの?』なんて周りの何気無い一言で簡単に歩き方を変えてきた。意志薄弱と笑われても仕方ないかもしれない。


 高校を出てすぐに働きだしたのも特に考えがあった訳じゃないし、選んだ会社は大きく、ただ進路指導の薦めに乗って面接を受けただけだった。


 採用された。

 そもそも受かるとは思えなかったがなんの因果か俺は引っ掛かった。それからはまぁなんとなく働いて、生きているようなものである。


 自分で言うのもなんだか俺は頭が悪いが、力は強い。

 残念なことに肥満体だし、運動神経すらあまり良く無いが実は会社も、部活動で3年間鍛えました、それによって多くのことを学びなにがし、と面接で宣ったのが良かったようである。

 怪力と言うほどでもないが普通は2人で持つような重さを、1人で苦もなく持ち上げられる。


 話は変わるが、ささやかな自慢だったこの筋力がこの人生の中で今現在最も輝いている。


()()()()()()()()()()()()()


 死んだ目で、生産性のある暇潰しに従事していた23才(独身)の身を襲った悲劇とは、得てして下らないものだった。


 鋼材がぎっしり詰まった木箱の脚が折れたのである。


 工場の隅に追いやられたこの材料は、まとめて買い込み安く仕入れたはいいが、設計変更に伴い使われなくった材料達である。

 だが、高価な資産であるため簡単には処分できない。


 老朽化するほど放置された木箱は、まるで恨みでもあるように、自分が通りかかったまさにその瞬間、こちらに倒れこんできた。


 ここでの失敗は咄嗟に材料に傷を付けまいと物を支えに入ったことである。

 普通は避けるか逃げるように学ぶがこの材料の値段を知っていたのが仇となったようだ。

 自分の筋力を過信しすぎていたようである。


 結果として必死に、もう使われることもないであろう、1800万円の材料を守るために動いた俺は、その額に見合う重さに今まさに潰されかけている。

 踏ん張ってはいるがもはや進退窮まるといったところだ。


 あまりのソフトランディングっぷりに遠く離れた同僚は気づかなかったようだ。

 脂肪がクッションになったか、忌々しい!なんて考える余裕もない。


 重い。

 いよいよもって息が切れた。

 膝を付いてしまったので、もはや立て直すことは出来ないだろう。


 思えば助けを呼べば良かった。手を離して逃げることが出来なくとも、声は上げられるはずである。

 思慮が足りないとはよく言われたが、ここまでバカとは自分でも驚嘆する。   


 今の自分の姿を想像すると、情けなくなってくる。

 崩れた木箱に抱きついたまま肺が潰れて窒息死とは、ずいぶんと間抜けな死に様だろう。

 そんな人生の最期に思ったことは、この事故の原因調査は面倒くさそうだなぁ、であった。


 そんなこんなで1分38秒続いた健闘も虚しく、あっさり労災発生、死亡事例1件に名を連ねたのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ