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2クール目に突入した異世界冒険  作者: 歩き目です
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02「ガラクタの幼女」その2



うつ伏せになっていた『それ』を、おもむろに表に返す。

俺は再び息を飲む。

顔の上半分、鼻から上、額までが『メカ』剥き出しになっていた。


これ、ロボットなのか!? アンドロイド!? サイボーグ!?

この世界に、こんな自動人形オートマタみたいな精密な機械があったのか!?


見ると、アスミスが身体をワナワナと震わせている。そして口を開く。


「信じられないのです。まさか、自分が生きている内に見られるとは思わなかったのです…。」

「知ってるのか?アスミス!?」

「これは、ゴーレムなのです。」


ゴーレム!? それって、あのモンスターの?

オウゴンゴーレムとか、メッキゴーレムとか、ブロックゴーレムとかいたのを見たコトあるけど。


「それは魔族がモンスターを作る時に、模倣して命名しただけなのです。

元々ゴーレムは、こうした機械仕掛けで動く人形のコトなのです。」

「成る程。こっちがルーツってワケか。」

「でも、魔導大戦で多くの技術者が亡くなり、ゴーレムを作る技術は消失してしまったのです。」


ロストテクノロジーってヤツか。

でも、その大昔にしか無いと言われるシロモノが、何故こんな場所に?

それも真っ裸で…、あ、いや、この場合は素体のまま、と言うべきなのかな?


「この岩山を作った原因…、山脈の崩壊で、埋まっていた大昔の遺物が地表に出たのかも知れないです。」


うん。それが一番、納得出来る説だろうなぁ。

アスミスは幼女ゴーレムを感慨深げに見つめつつ、さらに語る。


「再びゴーレム技術を復活させようと、技術系ドワーフがずっと何代にも渡って調査と研究を続けて来たのです。」

「随分と詳しいんだな。」

「何を隠そう、私もその1人なのです。」


そーーーーだったのか!(汗)


「それじゃ、これ、構造とか解るのか?修理も出来たりする?」

「正直…、こうして実物を見ると自信が無くなったのです。想像以上に、遥かに複雑で繊細なのです…。」


アスミスは自虐的な笑みを浮かべ、首を横に振る。

ドワーフのマイスターでさえ舌を巻く構造と、その完成度。過去の技術力は今よりもどんだけ進歩してたんだ?


「ですが、挑戦してみたいと思うのです。これを見せられて燃えなかったら、ドワーフの名折れなのです。

これぞ、神が私に与えたもうた人生のターニングポイントなのです。」


うお、流石はマイスターにまで上り詰めた子だ。職人魂に火が付いたか。


「じゃあ、ココにいても仕方無いし、冒険者の町まで戻ろうか。」

「あ、いえ、あの町では、このゴーレムを直すのに必要な部品や素材は手に入らないのです。

元々工業が発展していない土地だったからこそ、技術の需要を見込んで、私はあの町に居を構えたのです。」


なーる。

でも、そうなると…うーん、パーツや素材が手に入りやすい場所か…。

俺の元いた世界なら、アキバの電気部品の商店街ってトコなんだろうけど。


―あ、そうだ!! ピッタリの場所がある!しかもこの近くに!




そうして俺達が訪れたのは、バザーの町だ。

以前に偽造硬貨事件を追って、この町にも来たコトがあった。

ここには魔道具とか、密輸品、盗品、ワケありの品があちこちで売られている。

品揃えの豊富さでは、間違い無くNo.1だろう。


「成る程。ここなら色々と入手出来そうなのです。」


盛況な町を見渡し、弾んだ声のアスミス。

取り敢えず、町の外れの安宿に部屋を取った。ここでアスミスはゴーレムの修理に挑む。


あの後、ゴーレムを見付けた周囲を結構あちこち探したのだが、

遂に左腕と顔上半分のパーツは発見出来なかった。


で、俺がゴーレムをおぶってここまで持って来たってワケ。

俺が背負ってたってコトで分かるとは思うけど、意外とゴーレムは軽かった。実際の子供くらいの重さだ。

マンガやアニメだと、こういうメカキャラは見掛けに反してすっごく重かったりするよな。


でもそれって、古代の軽量化技術がマジで半端無かったって証拠でもある。

アスミスの、現在のドワーフの技術がどこまで肉薄出来るか、そこが肝だろうな。


さて、修理されるその間、俺もボケッとはしていられない。

中央都市に行けるルートが、もう1つあったコトを思い出したのだ。


そう、海路だ。

魔導都市で盗まれた3Dプリンターと3Dスキャナーは、盗賊によって海路でこの町の近くに運ばれたのだ。

だからそのルートを使えば魔導都市まで行けるハズ。後は南下すれば、多少遠回りだが中央都市に着ける。


挿絵(By みてみん)


そうなると、まずは町を歩き回ってそのテの情報集めからだと思ったのだが、これが絶賛難航中である。


大っぴらになっていないのは勿論、町の人にそれとなく聞いても盗賊達が使うルートなんか、普通に教えてくれっこ無い。

パチンコやってる悪友が「景品交換所どこにあんだよ!初見じゃ判らねーよ!」と愚痴ってたのを思い出す。


きっと、何か全く関係の無い別の店に偽装していたり、普通の建物の奥とかに隠されているんだろう。

恐らくこの町で長く暮らせば、暗黙のルールが解ったり、警戒も解けて教えてくれるのかも知れないが、

今はこの町で半年ROMってるヒマは無い。一日も早く中央都市に着きたい。


焦る気持ちとは裏腹に、何の手掛かりも得られない。

疲れて半ば放心状態の俺は、あてども無く町の雑踏を歩く。


―そんな時、その雑踏の彼方の1人に目が行った。


ピンクの髪の美少女。いや、美少女なんて言葉は生温い。筆舌に尽くし難い美しさ、可愛さだ。

その超美少女が、雑踏の中で誰にもぶつかるコト無く平然と立っていて、こちらを眩しい笑顔で見ている。


思わず俺は足を止めて見とれてしまう。

プリスを始め、俺の逢ってきた女の子達はどれも人並み外れて可愛かったが、このピンク髪の子は次元が違う。

およそ人間の考え付く『美しさ』とか『可愛さ』を全て詰め込んで、濃縮したまま具現化した様な子だ。


でも、何でこんな超美少女が、バザーの町みたいな物騒なトコロにいるんだ?

そして、これだけの上玉の子がいるのに、何で道行く人達はみんな気付くコトも無しにスルーしてるんだ?


俺と目が合ったそのピンク髪の子は、屈託の無い笑顔で手招きをした。

思わず周りを見るが、他に反応している人もおらず。

その子に向かって、俺は「―え?俺!?」と、自分を指差す。

大きく頷き、再度手招きをするピンク髪の子。


俺がどうしたら良いものか迷っていると、その子は踵を返して雑踏の奥へと歩いて行く。


「あ、ちょっ…!!」


思わず駆け出して彼女を追っていた。


この人混みをまるで介さずに、すり抜けていくかの様に真っ直ぐ歩いて行くピンク髪の子。

見失わずに追い掛けるのがやっとで、こっちは走ってるってのに距離が全然縮まらない。


と、突然、目の前に誰かが飛び出してきた。


「「うおっと!!」」


俺の声が、その飛び出してきた人とハモる。


「あっ!アンタは!?」

「え?…お前か!?」


路地から飛び出してきたそいつは、以前この町に来た時、俺の財布をスッた男だった。

あのピンク髪の子はもう見えない。ロストしたか…。


だが、これはある意味ラッキーだ。犬も歩けば何とやら、ってヤツだ。

スリの男は俺を見て、落ち着かない様子で目をそらしている。

無理も無い。コイツの脳内では、俺はコイツを負かしたスリの達人ってコトになっているからな。

それを利用させてもらおう。俺は自信たっぷりの芝居でスリの男を路地に押し込み、話し掛ける。


「丁度良い。お前を探していたんだ。」

「お、オレっちを?何の用だよ?別にアンタを怒らす様なコトはしてねーよ。」


どんだけビビってんだよ。そんなに怯えなくても良いよ。(苦笑)


「仕事で海路が必要になってこの町に来たんだが、誰も口が重くてな。」


『口が固い』と表現すると、俺がナメられて教えてもらえないカンジに聞こえてしまう。

『口が重い』とするコトで『言いたくても話せない雰囲気は嗅ぎ取った』というブラフにする。


「そ、そりゃそうさ。今、海路は全面封鎖されてるもんよ…。」


全面封鎖!? 何だそりゃ!? 俺は更に詳しく聞き出そうとカマを掛ける。


「―やっぱりか。オカシイと思ったんだよ。取引相手がみんな陸路を指定して来るんでね。」

「し、しょうがねぇよ。密輸船が公安部隊に取り上げられちまったからさ。

アンタも知ってんだろ?硬貨偽造してた組織が潰されちまったってハナシ…。」


ん!? それって…、


「あ、あのロリ・カイザーがヤったんだよ。お陰で他の組織は警戒を強めて、海路を使うのを敬遠してるんだ。」


はい!俺のせいでしたぁーーーー!!!!(汗)

何たる逆マッチポンプ!!

『蛇の道は蛇』っていうけど、蛇を駆除したら蛇の道が無くなるのは当たり前だよなぁ。


参ったなぁ、こりゃ。本当にもう、この南西側の大陸から出られないのか…?

俺が苦虫を噛み潰した様な顔をしていると、スリの男が聞いて来る。


「そ、そんなに大切な仕事なのかい?」

「―ん、あぁ、そうだ。これをミスしたら…そうだな、また1つデカイ組織が消えるかも知れない。」


俺はこの際、もっと風呂敷を広げてみる。広げた先に何か良い情報があって欲しいと祈らんばかりに。

するとスリの男が耳打ちをして来た。


「ど、奴隷船ならまだ動いているぜ。」

「本当か?」

「あ、あぁ。でも、もうヤバイから魔導都市には行かねぇ。大きく北回りで北大陸の東に着くそうだ。

そ、それに奴隷がいなけりゃ一緒に乗せてくれないぜ?秘密がバレるからさ。」


成る程、奴隷船か。北回りだと更に長大な迂回ルートになるが、この際贅沢は言ってられないか。


「助かった。これで何か飲んでくれ。―あ、偽造硬貨じゃ無いから安心しろ。」


俺はジョーク混じりでスリの男に500エン玉を渡す。この世界では1000円以上の価値だ。

物価も安いので、場末の安酒なら十分に酔えるだけ飲める。


「あ、ありがとうよ。上手く行くコトを祈ってるよ。」

「おう。」


―何か、アイツもこうして付き合ってみると、結構良いヤツだな。(苦笑)




宿に戻ると、部屋中に紙がバラ撒かれていた。

―見ると、色々細かいメモやスケッチが書かれている。

どうやら、俺の外出中にアスミスがゴーレムの構造を解析した成果(?)みたいだな。


「あ、お帰りなさいなのです。」

「ただいま。…凄いなコレ。この短時間でこんなに書いたのか?」

「量は問題では無いのです。どれだけ理解出来たか、それが重要なのです…。」


ん?あんまり芳しく無い返事だな?


「―で、アスミスの考えは?」

「私達のやってる機械いじりなんて、一体何なのだろうって思ってしまったのです。」


そんなに凹む程なのか。(汗)


「機械というのはその都度、膨大な時間の中で改良に改良を重ねていって進化するモノなのです。

ですから普通、どこかに前時代的な名残やクセ、その時点でこれ以上改良出来ずに棚上げされた部分、

そういった形跡が必ずどこかにあるモノのなのです。」


何となく分かる。ゲーム機もメーカーで独特のクセがあったり、デザインが継承されてたりするもんな。


「ところが、このゴーレムはそういった形跡が、どこを探しても無いのです。

まるで最初から、無窮の時を経た結果に行き着いたかの様な、1つの無駄も迷いも無い構造なのです。」

「つまり、完全無欠の機械…ってコトか?」

「これを作れた者は最早『神』なのです。そうでも思わないとやってられないのです。

このターニングポイントは余りに壁が高いのです。ケイン殿のパンツを脱がすより…、ハッ!!」


変なコトを口走ったアスミスは、顔を真赤にしてブンブンと首を振る。はい可愛い。


兎も角、欠損している左腕は、別の腕を作って着けるコトになるそうだ。

どんな腕になるんだろうな。サイコガンとか、ロープアームとか、ロケットパンチとかじゃ無いだろうな。

でも、それもちょっと面白いかな…。


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