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2クール目に突入した異世界冒険  作者: 歩き目です
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01「槌を持った幼女」その2



…いい匂いがする。スープの匂いだ。

そう言えば腹が減った。何日も食べていない気がする。


そして俺は目を開けた。


―見知らぬ天井。


左腕損傷、頭部破損でもしたのか、俺は。


「あ、気が付いたのです?」


そして知らない声。

声の方向を向こうとしたが、首が動かない。仕方無く目だけを動かしてその方向を見る。


「良かったのです。あのまま目を覚まさないかと思ったのです。」


紫の髪と紫の瞳。革のエプロン。そして小柄な体躯。

声の主は、可愛らしい幼女だった。


どうなってるんだ?一体、何が起こったんだ?

必死に記憶をたどる。


―そうだ。俺は海に投げ出されて…みんなが俺を助けようと………『みんな』?

『みんな』って?


決まってる。プリスとパトルとデヴィルラとマーシャだ。

あの子達はどうしたんだ?何故ここにいないんだ?いつも一緒だったハズだろ?


―思い出した!!

キマイラとケルベロスを退治して、帰る途中で…、海が突然大荒れになって、

俺達は全員が海に投げ出され、そして、はぐれない様に必死にロープで…、

でも突然、雷が落ちて来てロープを切って、そのまま俺は……


プリス達はあの後、どうなった!?


俺は思わず飛び起きようとした。―が、身体が動かない。


「あぁ、駄目なのです。まだ起きてはいけないのです。」


紫の髪の幼女が、起きようと暴れる俺を抑える。


「貴方は海岸に打ち上げられていたのです。昨日の朝、私が発見したのです。」


そして端的な説明をする。


そうか。どうやら俺は溺れ死ぬコト無く一命を取り留めたらしい。

そしてこの幼女が助けてくれたというコトか…?


「薬草のスープなのです。飲めるです?」


幼女は俺が目を覚ましたキッカケになった、いい匂いのするスープを持って来る。

スプーンでひと掬い取って、俺の口元に運ぶ。


ゴクリ。


空腹感が本能的にそのスープを求め、口に入れ飲み込む。

喉を通る温かい刺激。美味い。


こんなに無警戒に口に入れてしまって、もし毒だったらどうすんだ。

飲み込んだ後でそんな考えが遅れてやって来る。

―だが、


「今は、しっかり体力を戻すのです。」


ニッコリ微笑んで次の一匙を出して来る幼女に、俺の空腹は耐えられるハズも無く。

俺を助けておいて、今更ここで一服盛るとか無いだろ。とか思う。


プリス達のコトが気になるが、今の俺が出来るコトは、ただひたすら

幼女が笑顔で飲ませてくれる温かいスープを胃に入れるコトだけだった。




翌日。俺はようやく上半身を起こせる様になった。

昨日は声も出せなかったもんな。溺れかかって海水ガブ飲みして喉がヤラレてたのかも知れない。


「ありがとう。君が助けてくれなかったらどうなっていたか。」

「元気になって良かったのです。お医者さんも、もう大丈夫と言っていたのです。」


紫の髪の幼女は、そう言って食器の片付けをする。

こうして彼女は俺のために医者を呼んでくれて、日に3度、ちゃんと食事をさせてくれて、

ベッドまで貸してくれている。有り難いコトだ。


「助けられたのに、まだ名前を言ってなかったね。俺は―、」

「ケイン、さん…なのです。」

「あれ?知ってたの?」

「冒険者ギルドのプレートがあったのです。」


彼女が指差すのは、壁に掛けられた俺の服。

あぁ、そうか。アウトドアベストのポケットを見たのか。


「まさか私の助けた人が、あのロリ・カイザー殿だとは思わなかったのです。」

「ウッ、その二つ名まで知っちゃったのか。」(汗)


彼女はそう言って目をキラキラさせている。そして自己紹介をしてくれた。


「私はアスミスなのです。ドワーフの新人マイスターなのです。」

「ドワーフ!?」


ドワーフって、成人しても人間の子供程度の身長なんだよな。

じゃあ、この子も見た目は幼女だけど、もっと年上…俺よりも上だったりするのか?


「今年で9歳なのです。」


幼女でした。

俺は毛布の中で小さくガッツポーズを取る。それはロリコンの本能だから。


「ところで、今日って何月何日?」


俺はアスミスから今日の日付を聞く。

それは何と、俺がキマイラとケルベロス退治をして帰る日から一週間が過ぎていた。


何とかしてプリス達に連絡を取らないと。きっと心配している。

―いや、そもそもあの荒れ狂う海で無事だったのだろうか?


もしかしたら、俺だけが助かって…?


そんなワケは無い!!

あんな良い子達が、あんなハイスペックな子達が、そう簡単に死ぬもんか!!


居ても立ってもいられなくなり、俺はベッドから降りて立ち上がる。


―つもりだったのだが、…あれ?


「あ、あああ、危ないのです!!」


ドサン!!


まだ脚に力が入らず、俺は無様に倒れてしまった。


―む? 何だ、これは?


突然、目の前が真っ白だ。雪国にでもワープしてしまったのか!?

いや、それにしてはほんのりと温かい。それにこの得も言われぬ良い匂いはどうだ。

思わず胸一杯に深呼吸したくなる様な、いつまでも嗅いでいたい甘くて柔らかい香り。


「ひ、ひぁあああああああ~~~~~!!」


ぬ?アスミスの声がする。だが、声はすれども姿は見えず。

と、えらく滑らかでフカフカしたモノが俺の顔をギュッと挟み込んだ。

ちょっと苦しい。 だが、決して嫌では無い。むしろ心地良い。


一体何が起きていると言うのか、


「ろ、ろろ、ロリ・カイザー殿ぉ!!御無体なのですぅ!!」


アスミスの必死な声が聞こえて来る。


待てよ…。もしかしてコレは…!?


俺は、自分の顔を挟んでいるフカフカマシュマロから頭を抜いて辺りを見渡した。

フカフカマシュマロだと思っていたのは、アスミスの健康的なフトモモだった。

―というコトは、…さっきの真っ白な光景は…、


しまった!!これはラッキースケベだ!!


俺は転んだ拍子に、アスミスのスカートの中に突っ込んでいたのだ。


「ごっ、ゴメン!!今すぐどくから…、」


と言って身を捩ったら、そこに見えたのは俺の尻。しかも全裸。


えっ!?いつの間に俺はルパンダイブを会得してたの!?


落ち着け俺。状況を整理しよう。今、俺は全裸。その俺の下にアスミス。

アスミスの股間が俺の顔の位置にあった。これから導き出せる答えは、つまり、俺の股間の下にあるのは…、


「じ、人生のターニングポイント…なの、です…。」


俺の股間の下からアスミスの声がしたかと思ったら、それっきり途絶えた。

―気絶したらしい。




暖炉の火が爆ぜる。

アスミスはベッドに寝ている。


あの後、何とか立ち上がり、彼女をベッドに寝かせ、壁に掛けられていた自分の服を着て、今に至る。

アスミスは俺の濡れた服を脱がして、パンツ代わりにタオルを巻いてくれていたんだな。

でも、俺が起き上がった拍子にタオルは外れてしまって、ダイレクト密着してしまったというワケか。


正直、すまんかった。


「う~ん、う~ん…、振り子が揺れているのです…。」


まだうなされている。(汗)

と思ったら、いきなりガバッ!と毛布を跳ね上げ、


「ふ、フランクフルトなのです!!」


と叫んで起きた。


「お、おう、目が覚めたかな…?」


俺は気まずい思いながらも、アスミスに話し掛ける。

立場がまるっきり逆転しちゃってるじゃねーか。


「ハッ!?ロリ・カイザー殿、なのです!?」

「だ、大丈夫か?」

「あ、はい。支障は無い…と言ったら嘘になる気がするのです。…でも、大丈夫なのです。」


必死に精神の復帰を試みているカンジがして、痛ましい。


俺もプリス達との付き合いが長くて麻痺してたけど、そうだよなぁ、コレが本来の年頃の女の子の反応だよな。

みんな俺の前でホイホイ全裸になって、いつも一緒に風呂に入ってたってのが異常なのか。

あ、でも、そもそもまだ幼女なんだし、別に何も無いなら構わん気もするなぁ。


アメリカじゃ性犯罪が酷過ぎて、父娘でも一緒に風呂に入ったら犯罪扱いされるとか聞いたっけ。

それって、世も末だよなぁ。

俺は、そこんトコはしっかりしてるツモリだ。ロリコン紳士として。


「ろ、ロリ・カイザー殿!!」


と、アスミスの声が物思いに耽ってた俺を呼び戻す。


「な、何かな?」


アスミスは顔を紅潮させ、口をワナワナと震わせ、毛布を破かんばかりに強く握っている。

そして意を決した様に、大きな声で言い放った。


「わ、私をお嫁さんにして下さい!なのです!!」

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