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2クール目に突入した異世界冒険  作者: 歩き目です
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06「イカれたメンバー紹介するぜ!」その2


2人のそっぽ向いた技術者談義は尚も続く。


「それでなのですが、可能な限りの調整をしたにも関わらず、まだ稼働が上手く行かないのです。」

「多分アレだと思うんだけど…、ちょっとエメス…だっけ?口を開けて舌を出してみなさいよ。」


エメスは動かない。


「アタシの言ってるコト分からないの?口を開けなさいって言ってんのよ!」

「あ、無理なのです。エメスの命令権はケイン殿だけにあるのです。」

「はぁ!?随分と短絡的な処置をしてるのね!?」


半魔の子は俺の方を見て、


「アンタ!確認したいコトがあるから、命令を聞く様にしなさいよ!」

「分かったよ。―エメス、別に危害を加えたりしないから、その子の言うコトを聞いてやってくれ。」

「―畏まりましタ。」


そう返事をすると、エメスは大きく口を開けて舌を出した。

そこを食い入る様に覗き込む半魔の子。 やがて頭を上げると、


「やっぱりね。説明するからみんなこっちに来なさいな。」


俺達はエメスの前に集まる。アスミスも資料を読む手を休めてこちらに来る。


「ホラ、見て。喉の奥にもパイプが繋がっていて、舌も口内も唾液でぬめっているでしょ?」

「あぁ、人間そっくりだな。」

「そうよ。ソックリよ。『この子』は食事が出来るんだから。」

「「えぇっ!?」」


驚く俺とアスミス。説明は続く。


「普通の日常的な雑務用のゴーレムなら、空気中から吸収したマナで十分動力源になるわ。

でも、戦闘用ゴーレムは戦闘中の出力が大きいから、それだけじゃすぐにマナ切れを起こすのよ。」

「成る程!それで手っ取り早くマナを補給するために、食物を摂取、分解、マナに変換、というワケなのです!!」

「物分かり良いじゃない。稼働が上手く行かないのはそういうコトよ。」


分かってみれば何てコトは無い。エメスは単なるガス欠だったのか…。

食事出来るロボットなんて、実際にいるとは思わなかったわ。

俺の知る限りではそんなの、未来の世界のネコ型ロボット位だもんな。

じゃあ、ご飯を食べさせてあげれば良いワケだ。あ、もう口閉じていいぞ、エメス。


「♥何を食べさせてあげたら良いんでしょーねぇー?」

「そうだな、ゴーレム用のメニューとかあるのかねぇ?」

「マナは森羅万象に含まれてるから、消化分解出来れば何でも良いのよ。早いハナシ、生ゴミでも十分だわ。」


ちょっと待て!聞き捨てならないコト言ったぞ!?


「いや、それは駄目だろ!!」

「どうしてよ?」

「女の子に、幼女にそんな仕打ち、許されるワケ無いだろ!!」


半魔の子は呆れた顔でおれに言う。


「―アンタ、それ本気で言ってんの?『この子』はゴーレムよ?人間じゃ無い、機械の人形なのよ?」

「関係無い!!人の姿を、女の子の姿をしている限り、俺はエメスを1人の女の子として対等に扱う!!」

「対等に……。」


例えフィギュアだろうと、モニターの中だろうと、好きな女の子の誕生日やクリスマスは祝ってやる!!

それがキャラへの尊厳であり、慈しむというコトであり、普遍的且つ絶対的な『愛』だ!!

これだけは譲れん!!


「♥ねー?スレイの言った通り、ケイン様は『幼女に貴賎無し』なのですよぉー。」

「そ、そういうなら別に、勝手にすれば良いわ…。―本当に愛してくれるのなら…アタシ、ゴニョゴニョ…。」

「ん?何か言ったか?」

「何でも無いわよっ!!馬鹿っ!!」

「ひでぇ!!」(泣)

「♥ケイン様ぁー、エメスちゃんにクッキー食べさせて良いですかぁー?」

「おう、いいぞ。シッカリ食べさせてやれ。」

「ちょっとお!!アタシのクッキーだって言ってるでしょお!!?…まったく。」


半魔の子はそこから離れ、椅子に座り直す。


「兎に角、一日一回は何か食べさせてあげなさいな。―それと時々、お風呂にも入れてあげた方が良いわ。」

「風呂に?」

「皮膚…と言うか、身体の表面からマナを吸収するから、ホコリが着くと効率が落ちるのよ。」

「分かった。つまりは人と同じ付き合い方で構わなかったんだな。ありがとうな。」

「べっ、別に礼を言われる程のコトじゃ無いし。」

「いえいえ、やはり大賢者の家系が蓄えた知識は凄いのです。今日だけで数年間分の勉強が出来たのです。」


アスミスは技術者として、心底からの感嘆の声を漏らす。

そして続ける。


「それに加えて、お聞きしたいコトがあるのです!是非ともお力添えをお願いしたいのです!」

「今度は何よ? ―って、アナタ…、アタシの身体を見て何とも思わないの?」


半魔の子は、自分のツートンの身体を指してアスミスに問う。

そう言えば、ここまで2人は顔合わせて会話してなかったもんな。


「最初に見た時は、そりゃあ驚いたのです。でも、ケイン殿が心許した人であれば悪人では無いのです。」

「―それだけ?」

「普通の人の姿をしていながら、腹に一物ある連中の二面性こそ真におぞましいのです。

人も機械や武器、防具、道具と同じで、実質こそがモノを言うのだと、そう私は信じているのです。」

「………。」


半魔の子は俺の方を向いて、


「―アンタもそうだけど、アンタの仲間も変わってるわね。」

「良い子達ばっかりだぞ? 1人、脳ミソ桃色大回転のヤツもいるけど。」

「♥呼びましたぁー?」

「いや。こっちに構わず、エメスにクッキーをあげなさい。」

「♥はーい。たーんとお食べぇー。」

「―マナ充填35%。モグモグ。日常稼働に支障無い状態に復帰しましタ。モグモグ。」

「エメス、お行儀悪いから、ちゃんと食べてから話しなさい。」

「モグモグ…ゴクリ。―畏まりましタ。」


おう、この快適なレスポンス。育て甲斐があるってモンだよな。


「―で?聞きたいコトって?」

「あぁ、そうだったのです。―『最強装備シリーズ』についてなのです。」


―え!?


「ふぅん。まぁ、ドワーフなら誰もが知りたがるでしょうね。」

「実は、あのシリーズは、私のご先祖が作ったのです。」


えええ!?


「お恥ずかしい話なのですが、ご先祖はドワーフの典型とも言える頑固な方だったらしく、

『最強装備シリーズ』の完成後も、誰にもその内容を語らぬまま亡くなってしまったのです。

ですからシリーズを幾つ製作して、どこの誰に渡して、現在どうなっているのか、何もかもが不明なのです。」

「知ってるわ。コアな冒険者が探してるけど見付からないらしいわね。」

「えーっと、ちょっと良いかな?」

「話の途中よ。アンタは邪魔しないで。」

「いや、あのね…、」

「―それで、シリーズの行方を知りたいって言うのね?」

「そうなのです。『最強装備シリーズ』を超えるモノを作るのが、私の目標なのです。」


おぉ、アスミスにはそんな目標があったんだな。

いや、感心してる場合じゃ無い。早く言ってやらねば。


「悪いわね。製作者が魔族と一時期関係してたというコトは判っているけど、その後の記録は少ないわね。」

「それは残念なのです。」

「アノー、スミマセン、チョトイイデスカ?」

「色々な遺跡に転々と安置された様で、魔導対戦以後は足取りが掴めていないのよ。」

「最後に確認された場所だけでも、教えて欲しいのです!」

「ワタシノハナシ、キイテクダサーイ。」

「うっさいわね!!今はこの子と大事な話を―、」

「ケイン殿!申し訳ありませんが、今は彼女と―、」

「『最強装備シリーズ』俺、全部揃えました!!」


一瞬の沈黙。 そして、


「「ええええええええーーーーーーっっっ!!!???」」


うわ、耳にキーンと来た。(汗)


「どどどど、どういうコトなのよ!?アンタ!!」

「どどどど、どういうコトなのです!?ケイン殿!!」

「うん、まずは君達が落ち着け。」


ペットボトルで水ドンしてやりたい位に狼狽えてる2人。俺は彼女達をなだめる。

そして、アスミスに出会う前に4人の幼女とパーティーを組んでいたコトと

彼女達との『最強装備シリーズ』収集の旅をかい摘んで話した。あ、俺が転移させられて来たコトは内緒でね。


俺の話を聞き終わると、半魔の子が目を虚ろにして弱々しく笑い出した。


「ははは…、何それ?何かの冗談?この塔に初めて登って来たかと思ったら、ゴーレム持ちで、天才マイスターと組んでいて、

それだけでも十分過ぎる程に驚きだって言うのに…、『最強装備シリーズ』までコンプリートですって…!?」

「ケイン殿。もうどれだけ畏敬のターニングポイントを迎えれば済むのか、私は判らなくなったのです…。」

「いや、そんな畏まれる様なモンでも、」

「はぁ!?アンタ馬鹿ぁ!?この塔の記録にも書き記されていない世界の謎を、アンタは解いてんのよ!?」

「そうなのです!歴史的快挙なのです!!」


2人にグイッと詰め寄られ、気迫に押し切られてしまう俺。


「―それで、『最強装備シリーズ』は全部で13個。魔導都市東の山脈に囲まれた砂漠の神殿にあった。

今はパーティーメンバーの獣人族の幼女に全て装備させている、―で間違い無いのね?」

「あぁ。魔弓を持ってる子と同じで、その獣人族の子ともはぐれちゃったけどな。」


半魔の子は一冊の本に凄い勢いでペンを走らせている。

俺から得た情報を書き足しての、さしずめ改訂作業といったトコロなのだろう。


「はぁー、何てコトかしらね。塔に登って来たヤツに、こっちが知識を与えられるなんて本末転倒だわ…。

そうそう、ついでに、その魔弓を見付けた時のコトも教えなさいよ。所持してるのはどんな子なの?」

「僧侶だよ。究極神聖魔法まで使えたっけ。」

「――へ?」


ペンを走らせる手が止まる。


「あぁ、でもそれには精霊王との契約で、金属や宝石の鉱石が代償に要るんだ。」

「精…霊…王…!?」


手からペンが落ちる。


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