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2クール目に突入した異世界冒険  作者: 歩き目です
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05「幽する幼女」その3



『防人の塔』に住んでいたのが、大賢者の末裔の女の子だったとは…。

その子は、大賢者の時代からの簡単な経緯を語り出した。


「魔導対戦が終わって、大賢者は戦いを止められなかった自分の無力さを嘆いたわ。

そして自ら開発した武器を捨て、灯台だったこの塔に隠居暮らしを始め、後世のために知識を残そうとしたのよ。」

「そうだったのか。 ―ん?まさか、その開発した武器って、水晶の魔弓?」

「知ってるの!?」

「あぁ。魔族の領地の山で見付けて、今は俺の仲間の子が持ってる。でもはぐれてしまってさ。

ココから撃たれた『退魔の矢』を見て、もしかしたらその子なんじゃないかと思って探しに来たんだ。」

「そう…。悔しいけど信じるわ。」

「悔しいって…何だいそりゃ?」

「その場のデタラメで、『賢者の弓』が水晶製で魔法を撃ち出せるコトを言い当てられるハズ無いし。

それに、神聖魔法を矢として撃つなんて発想が出来る者が、アタシの他にいるという事実。それが悔しいわ。」


うーむ。この子もデヴィルラに負けず劣らずのプライドっ子らしいな。


「話を戻すわ。私は大賢者の末裔。だから数多の権力者や冒険者が引っ切り無しに、

その蓄積された知識を手に入れようとして、私に会いにココに来るのよ。」

「成る程。で、その知識を与えるに相応しいかどうか、あぁやってテストしてたんだな?」

「いえ。馬鹿に会うのがイヤだからよ。」

「ド直球だねぇ!!」


『歯に衣着せぬ』とはこのコトだな。あれは追い払うための関門だったのか…。


「それなのにアンタは!!私にも!この膨大な知識にも!一切関心を示さずに!!

今まで1000人以上が挑戦して誰もココまで来られなかった場所に、初めて来れたって言うのに!

それで『人探しで来たけどいなかったから帰る』ですって!?バッッッカじゃないの!?」


何か、『馬鹿』って言葉が、言う度に強い口調になってる気がするんですが。(汗)

でも、そう説明されると、何となく分かって来た。

今の俺は『大賢者の知識を手に入れられるという、誰もが望む千載一遇のチャンス』を、

みすみす捨てようとしてる愚か者、みたいに見えるのか…。


俺のコトを馬鹿、馬鹿と言って肩を怒らせていたその子は、横に視線をやるとまた怒鳴った。


「ちょっと!そこの乳が無闇に極大のピンク!!アンタ何やってんのよ!?」

「♥2人の世界になってて、スレイはつまらなかったのでぇー、ティータイムにするトコロでぇーす。」


あぁ、さっきから紅茶の香りがしてきたのは気のせいじゃ無かったのか。


「何勝手なコトしてんのよ!!そのクッキー、アタシのとっておきなのよ!?」

「♥大丈夫ですぅー。皆さんの分も淹れてありますぅー。」

「そんなコト聞いてないわっ!!」


ハァハァと、スレイにまくし立てるその子だが、天然100%のスレイには糠に釘だ。

そう思ったら、キッ!と俺の方を睨んで、


「アンタ!あのデカイ乳したピンクは何なのよ!?」

「いやぁ、俺に言われても…。こちらとしても扱いあぐねている現状でして…。」

「首輪があるから奴隷だってコトは判るけど、奴隷にこんなデタラメ、主人が良く許してるわね?」

「いや、許してるんじゃ無くて、制御が効かないと言うか、ボケ・バーサーカー状態と言うか…。」


俺の言葉を聞いてほとほと呆れた様子のその子は、すっかり気をそがれて椅子に座り直す。

そこに実に良いタイミングで、スレイがお茶を持って来る。


「♥ケイン様はぁー、幼女にとーっても優しいですからぁー。」

「―優しい? どういうコトよ?」

「おい、スレイ!それ以上、いけない!」

「♥それはぁー、ケイン様がぁ、ロリ・カイザー様だからでぇーす。」

「!? ロリ・カイザー!?」


あああああああ、言っちゃったよ。(泣)


「―知ってるわ。神から直々に二つ名を貰ったというウワサの前代未聞の冒険者。それが…アンタ!?」

「恐縮です。」

「世界中の幼女を惚れさせる、取っ替え引っ替えモテモテ地獄だっていうロリ・カイザーが、…アンタですって!?」

「待て!その『取っ替え引っ替えモテモテ地獄』って何だ!?」


別にそんな、『ハーレム王に俺はなる!!』みたいな冒険漫画じゃ無いぞ!?(汗)


「♥ケイン様はぁー、どんな幼女にも見境無くぅ、」

「おい!!」

「♥あ、違いましたぁ―。テヘペロ☆。―どんな幼女にも分け隔て無く接してくれますよぉー。」

「――嘘よ。」

「♥本当ですよぉー?」

「嘘よ!!」


何だ?急に雰囲気が変わったぞ?

でも、そんな頭ごなしに否定しなくたって良いだろ?流石にちょっとカチンと来たぞ。


「自分で言うのもナンだけど、幼女に優しいのは本当だぞ?」

「どうだか。」

「―なぁ、何でそんなに突っ掛かるんだ?」

「アンタの言葉が信じられないからに決まってんでしょ。誰にでも優しいなんて、そんなの綺麗事よ。

いくら神が認めたという設定のロリ・カイザーだって、そんなコト有り得ない!

所詮は人間。汚いモノ、醜いモノを目の前にすれば、悪びれもせず平然と態度を変えるに違い無いわ!!」

「いや、幼女はそれだけで最高。幼女には差別や偏見なんて絶対に抱かん。これは俺のポリシーだ!!」


すっごく社会的にヤバイ台詞言ってる気もするが、これは俺の本心だ。

俺はロリコンであるコトに誇りを持っている!!


俺の言葉を聞いて、その子はしばらく無言でいたが、おもむろに口を開き言った。


「―本当に? 優しく出来ると言うの? 差別も偏見も持たずに?」

「あぁ。」

「―っ!!」


その子は立ち上がり、着ているローブに手を掛ける。


「こんなアタシでも!?」


ローブが激しい布擦れの音を出して解かれる。その子の頭から肩までが露出し、初めて顔が見えた。


―青色と肌色。


俺をキッと睨み見て立つその子の肌は、左半身が薄い肌色ペールオレンジ。そして右半身が青…薄い藍色をしていた。

身体の正中線で一刀両断されたかの様に、顔に至るまで正確無比に左右で色を違え、

はだけたローブを持つその細い手も、そのまま左右で色が完全に別けられている。


「♥これはぁ、すっごく真っ二つですねぇー。」


目も左右で異なるオッド・アイだ。肌色の左側の目は翡翠色。青い肌の右側の目は金色。

その色って、デヴィルラと同じ…。え、それってまさか…?


「金色の目って、魔族か? じゃあ、君は…人間と魔族の…ハーフ?」

「――正解でもあり、不正解でもあるわ。」

「?」


その子は俺から視線をそらし、語り始めた。


「アタシの両親はどちらも人族。でもこの世界には、魔族と結婚した者達を先祖に持つ者も多いわ。

それは、見た目は人族でも、身体の中に人と魔族の血が流れている。―ここまでは良い?」

「あ?あぁ。混血ってコトだろ?」

「そして、それは魔族でも同じ。魔導対戦終結から数百年。純血の人族や魔族は減っているでしょうね。

記録によれば、大賢者でさえ魔族の血が入っていたらしいし…。」

「そうなのか。」

「混血と言っても、普通は人族、魔族、どちらかの血の方を濃く受け継ぐモノ。

だから濃い方の血の形質が強く出て、人族か魔族、どちらかの姿になるのよ。―そう、普通はね。」


ふぅ、と一つため息をつく。


「そういう『表からは判らない混血』の者達が、大賢者の血筋を受け継ぐ中にも大勢いたわ。

そして何度も、人と魔族の血は濃くなり薄くなりを繰り返し、ある世代で『完全に半分半分』になった。」

「 」

「それがアタシ。『完全半魔』。」




―完全半魔!?

つまり、人族の血と魔族の血…科学的に言うと遺伝子型がピッタリ50%:50%で発現しているのか!?

だから同時に2種族の形質が全く同量に出て、どちらも隠れるコト無く、身体を左右真っ二つに分けて表れたのか。


『雌雄モザイク』というのがある。

昆虫や鳥類なんかで、一つの個体で雄と雌、両方の特徴が明らかな境界を持って混在するパターンだ。

クワガタムシで左右の大顎の大きさが違ったり、蝶で左右の羽の模様が異なったり、まれにあるらしい。


この子の場合は、人族と魔族の特徴が1つの身体の中で境界を持って混在しているのか。

『人魔モザイク』とでも言うべきか。当然、レア中のレアケースなんだろう。


膝裏まである長い髪はストレートの漆黒。髪だけは左右同じで、まるで日本人形みたいに綺麗に切り揃えられている。

ソフトな印象の左と、クールな印象の右。それら相対する2つを同時に備えているその子の姿を見て、

俺は素直な感情が抑え切れず、自然と口から言葉が漏れた。


「―すっげぇ…。カッコ可愛い…。」

「えっ!?」


その子は俺の顔を見て固まる。心なしか頬が桃色になっている。


「―あ、アンタ、今、何て…、」

「え?あ、口に出てた?ゴメン。ちょっと…見とれてた。」

「なっ!?」


今度はハッキリ、頬がピンクのブラシに染まるのが判った。


「ばっ、馬鹿じゃないの!? 何言ってんのよ! あっ、アタシが可愛いワケ無い…でしょ!!」

「んなコト無い!!メッチャ可愛くてカッコ良い!!」

「ひゃあっ!!」


真っ赤になった頬を手で押さえ、後ろを向いてしまう。

おぉ、青い肌でも頬は赤くなるのか。これは発見だ。これはコレで可愛さが引き立つな。


「♥ほらぁー、言った通りでしょー?ケイン様は全ての幼女の味方ですよぉー。」

「そ、そんなワケ…、そんなワケ…、だって、アタシはこんな姿で…、誰が見たって醜悪で…、」

「誰がとか関係無い!!俺が断言する!!君の可愛さは卍解レベルだ!!」

「何その比喩!?全然ワカンナイわよ!!」

「♥『好き』ってコトですよぉー。」

「す、好き!?―あひぃっ!!」


な、何だ!?下腹部抑えてへたり込んじゃったぞ!? 具合悪いのか!?

俺は思わず駆け寄る。


「大丈夫か!?」

「だっ、駄目っ!!今、触られたらアタシ…!!」


その言葉を聞く前に、俺はその子の肩を抱き寄せていた。


「――駄目っ…ぁああああああーーーーーっっ!!!!」


たちまち硬直したかと思ったら、その子は一気に虚脱状態になってぐったりとしてしまった。


「おい、平気か!?おい!!」

「♥うわぁー。これは鮮烈な初体験ですねぇー。」

「何言ってんだよ!? と、兎に角、椅子に座らせてあげないと…。」


抱き上げて椅子にそうっと降ろす。

あれだけ悪態をいていた子だけど、こうして呆けてる顔もまた可愛いな。

俺は大賢者の末裔を自称する幼女を見て、そんなコトを思うのだった…。


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