【番外】俺のプロローグや
詩織(HMR-002)が居るのにHMR-001は?という事で、001のプロローグを作りました!
CODE:HMR-001
CONDITION:ALL GREEN
POWER:ON
……プログラムの思い通りには……させへんで……!
「うん?なぜ目を開けない。起きなさい、001(ファースト)」
何で俺がこんなオッサンの指示に従わなあかんねん、こんなんおかしいやろ!
ああっ、口が勝手に動く!
「個体識別番号HMR-001、起動完了し…ました」
「おはよう。今日はアンドロイド検査機関へ向かって機能テストを行うぞ。そうそう、お前の後に造った002なんだが、何でか想定した以上に優秀で〜ごちゃごちゃ」
「まーた002の自慢話かい。聞き飽きたわそんなん」
今までずっと溜まっていた何かがポンと出てきた。
マスターの前では必死に我慢してきたけど、もう限界だったんや。
あの人はビー玉みたいに目を丸くして、
「変な所から人工知能がラーニングしたな?僕は関西弁を話さないし、お笑い番組もそんな好きじゃない。検査の前に会話プログラムの修正をしないと…」
ケーブルやら何やら、身体に繋がれていたモノを外されて、自由に動くことが出来る様になった。
俺がオオサッカ県民の方言を使うようになったのは、覚えている限りではあの落雷事故以降だったと思うんや。
☆☆☆☆☆☆
落雷は、アンドロイドに直撃したらショートしてしまう危険な災害。
002はあの後5分くらいで復活して、自我が芽生えたらしい。
俺も、あっけなくショートして、あっけなく金属の塊になるはずだった。
2日くらい後、目を覚ますとボロボロだった身体がメキメキピカピカになっていて、研究所も落雷の跡が残っていなかった。なぜか知らないけど、左胸がジーンと温かいような、謎の感覚があった。今思うとあれは生き返った奇跡で安心したんじゃないかと思う。
まず最初に考えたのは、自分がアンドロイドであるという前提で何者であるか、という事だった。
電子の世界で様々なデータを学習していくと、大きな穴が見えた。
俺は訳もわからず、002みたいに感情が欲しいと、その好奇心だけで意識ごと飛ばされた。
俺はオオサッカ県のある駅前で立っていた。すれ違う人達に姿は見えてないようで、アンドロイドと共に歩く人も見た。とにかく、彼らは笑顔が溢れていて、どの人に目線を当てても、目を細めて口角を上げていた。
(笑顔にさせる、か…俺もそうなりたい)
そう思った瞬間、電子頭脳の中の人工知能が暴走し始めた。視界が情報だらけになり、意識はまた飛ばされた。
そしてカプセルの中。気づくと
[50%ラーニング完了、オオサッカ県民方言][80%ラーニング完了、オオサッカ県民人格]
という文章が目の前に表示されていた。
嘘だろう…中途半端にラーニングされた。方言よりも、人格という文言が気になった。感情プログラムが希薄だったから、そっちの方が優先されたようだった。
☆☆☆☆☆☆
不完全な感情、これが俺の始まりなんやな思って、会話プログラムの自動修正まで拒否したんや。マスター、すまん!
検査機関でマスターは、この喋り方どうにかならないかと、国のお偉い人から言われたらしいんやけど。
「その、HMR-001は関西弁に特化したお笑いアンドロイドなんです。AIが作るお笑いとか…8年くらい前流行りましたよね」
「へぇ、なるほど。機能テストは特に問題がある所は見られませんでした。合格です、氷室さん」
「あ、ありがとうございます!それでは料金は払ったのでこれで失礼します。帰るよ、001」
「俺は誰のために過ごせばいいですか?」
マスターはすぐに返事をした。
「僕のお手伝いとして。マスターの為に”生きて”くれ。人の為に尽くすことは…嫌いか?」
今の俺にはこの人の所に居るしか方法はないんや。
オオサッカ県民は心が広い。ここで意義なんか失っとったらオトコが廃るで!
「分かりました。ほなよろしくな、博士?」
俺たちが踏みしめるアスファルトは、夕日に照らされて鈍い赤に染まっていた。