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&ROiD  作者: 木梨りんこ
第1部 HMR-002、誕生/少女との出会い
2/18

2 自我(わたし)の芽生え

読みやすいように編集しました!

 HMR-002はゆっくりと目を開けた。どうも、5分間の記録が残っていない。自分がショートしていたという事を、ソレは分析せずにボロボロになった衣服や、ちぎれ途切れているケーブルを確認して判断した。

 しかし、ある疑問が残った。なぜ自分は落雷でショートし、動かなくなったはずなのに自ら動いているのか?何度状態を確認しても<ALL GREEN>と視界に記されるだけで、異常はどこにも見当たらなかった。


 (当機体(ワタシ)は、なぜ……ワ、タシ…?)


 HMR-002が起き上がろうとすると、無数のケーブルにピンと引っ張られた。身体の機能もちゃんと作動するようだが、ふと博士がカプセルの外で話してくれた事を思い出した。


 《お前は家族になるんだ、モノじゃない…生きる、んだ。ちょっとおかしいよな、人間の気まぐれで造られて、人間の為に尽くさないといけない。そんな理不尽な…感情が有れば、お前は嫌がったか?》


 (モノ……ジャナイ…ワタシハ、モノじゃ……)


 まだ博士からの命令を受けていないのに、HMR-002は動き始めた。動きを阻害する、身体に繋がれたケーブルを無理矢理引き抜き、内側からは開くことがないはずのカプセルを自力で開けた。


 (氷室博士ガ…生きているのか、確認スる為)


 普通のアンドロイドがしない行動である。HMR-002は『人命救助』を選んだ。自分を造ってくれた氷室博士までも落雷にあっていたら、と最悪のパターンが視界に提示された。

 立ち上がり歩きだそうとしたその瞬間、ソレに身の覚えのない痛みが襲ってきた!


 (_____!?!!!?)


 HMR-002は膝まづいて、初めての感覚に戸惑った。どうやらこの痛みは左胸の辺り、ちょうどアンドロイドのエネルギーが貯蔵されている場所からだ。左胸を押さえると、アイライトがチカチカと点滅した。これはバグ、それともプログラムなのか、分析することができない。状態が<ALL GREEN>のままなのだから。

 ソレは未知の感覚に震え、氷室博士を呼ぼうと声を出そうとした。

 「ザー ピピ ザーーーー」

 しかし、会話プログラムが機能しない(通常、アンドロイドは相手側から話しかけられないと会話が出来ない)ためか、ラジオの雑音のようなノイズが口から出るだけだった。

☆☆☆☆☆☆


 (_くルしイ…コンナ感覚ハ理解不能_)


 ズクン!ズキン!と、痛まないはずの胸が張り裂けそうな痛みに襲われている。電子頭脳がごちゃごちゃと疑問が多すぎてオーバーフローしてしまいそうになっている。

 HMR-002は声を何とかして出そうとした。そうでもしないとこの苦しみと胸の熱さに耐えきれない。人工声帯を自力で動かすことが、こんなに難しいとは考えていなかった。

 「ザザッ…ピーーはぁっ、はァッ」

 やっとの事でかすれた金属音が絞り出てきた。しかし、声という声が出せない。電子頭脳にも熱が集中していく。

 「ア……だrえ…か…はぁっ、うううッ……!」

 視界がぼやけて、何かが頬を伝うのを感じたHMR-002は、右手でそれを拭った。ソレは…彼女は、泣いていた。アンドロイドが基本持つことはない人間特有の機能、それは涙を流す事。HMR-002は、痛みに悶え苦しんだ挙句に、涙まで零れていたのだった。

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