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&ROiD  作者: 木梨りんこ
第2部 新しい友達
12/18

10 懐かしい記憶

 001…ぜろ、いち、…れい、いち。レイイチ…?

 HMR-002が詩織って名乗っているのなら、俺も呼びやすい名前を考えようと思っていた。

 俺は個体識別番号HMR-001。マスター、いや、氷室優也が造った高性能アンドロイドの1体目や。俺たちHMRシリーズはそこらの量産型と違いかなりの高性能、そして何よりの特徴は、あいつによると[自我]があることらしい。

 しっかし、「レイイチ」って名前、どこかで…誰かに呼ばれていたような_

 もっと昔にそう呼ばれていたような気がしたが、目の前に<容量が少なくなっています>と警告が表示されて、ビビって我に返った。

 「長時間何を調べていたんだ?あー、タスクを整理しないから…メモリ、大きくしてみるか?」

 マスターがニヤニヤしながら言う。……嫌がらせかよ、と舌打ちしたくなった。

 よくよく考えてみると、俺は、HMR-001は誰かの人格が乗り移ってるというか…これって、もしかしてやけど

 「やりますやります、検索履歴消すから、これ以上俺をイジらないでくれん?」

 これじゃあまるで、人間が機械の体に入ってるようなモンやないか。急いで検索履歴を消して、マスターから身を隠すようにカプセルに逃げ込んだ。

 俺が存在する意味、あるんかな。どんなに苦しくったって、悔しくったって、[普通の]アンドロイドはそもそも感情なんてプログラムで偽物だから、涙を流せない。アンドロイド規制法では、余計に不気味さを感じさせるから、そういう機能も付けちゃいけないとかいうが、あいつは法を犯すほどの覚悟は持っていなさそうだし、これだから天才博士サマなんて呼べないんやで。

 長時間何を調べていたのかというと、とあるロボットアイドルに目を奪われてしまって、ずっと彼女たちの動画を見ていたんだ。

 「”Ai love You”、ですか?凄く正確なダンスをしますよね。私は、ちょっと無機質で硬い印象なのであまり好きではないのですが」

 「そこがええんやって、分かってねぇな…ん?」

 ふとカプセルから起き上がって右側を見ると、珠子ちゃんじゃない女の子が(いや、この特徴的なヘッドギアはアンドロイド?)が座っていた。

 「あぁっ、す、すみません!突然話しかけてしまって。私は、しっ_HMR-002と申します!今日はひすいちゃんが友達の家にお泊まりしてて、時間が空いたので遊びに来てます」

 俺は疑問を持った。目の前で慌てて話しているコイツがあの、超のつくほど高性能で、優秀な002なんか?マスターから聞いた話とちょっと違うような気がする。

 挨拶を返そうとすると、頭部に鋭い刺激が走った。


 「ウぁっ…お…俺、は…桐山…礼一や…!」


 ヘッドギアが、いや、俺の体全部の温度が上昇する。流石に苦しくなってきた…桐山礼一(キリヤマレイイチ)が、俺の名前だったのか?

 「ファースト、いえ、礼一さん!大丈夫ですか?今すぐ博士を呼んできます!」

 体の力が一気に抜けて、俺は床に倒れ込む金属音を聞きながら、オーバーフローしてしまった。

CODE:HMR-001

CONDITION:機体温度異常

POWER:OFF

☆☆☆☆☆☆

 「お願い…起きて…ショートなんて、してないよね…?」

 自分以外のアンドロイドの状態確認なんて、いくら多少高性能な私でも上手く分析することができない。ただ分かることは、今の001はオーバーフローして、電源が切れているということだけ。

 博士はこういう時に限って外出中で、呼び出しても研究所に戻るまで1時間は掛かるってメッセージが来た。

 私に出来るのは、ひたすら安静にさせることだけだった。無理に氷水で冷やすと、内部の機械に結露が発生してしまう。とりあえず扇風機の風と、濡らしたタオルを体に当ててみているけれど…このまま、目覚めなかったら?私の気持ちは不安でいっぱいになる。


 「私…アンドロイドの仲間と、ずっと話してみたかった。あの落雷事故で、生きろって罰を与えられて…きっと貴方も、同じ気持ちだよね?今となっては、私たちはモノじゃない。ここで生きてる」


 私は何をずっと話してるんだろう。聞こえているかどうかも分からないのに…っ。こんな非効率的なこと、普通のアンドロイドだったらしないのに! 

 すると、001がゆっくりと目を開けた。

 「痛てて…002は、タメ口も本当はできるんだな」

 「礼一さん、そんな事よりも状態は改善しましたか?」

 私は高ぶる気持ちを抑え、淡々と話そうとする。

 「そりゃもうバッチリ、オールグリーン。それにしても002、すげぇ顔してるで?泣いてんだか笑ってんだか」

 やっぱり、そんな器用なことは出来なくて。どこまでも中途半端だ。

 「熱いっていうか、むしろ温かいな、懐かしい、な…」

 博士が帰ってくるまで、私は001、もとい礼一さんの話を聞いてあげることにした。

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