1 あなたは”生きる”べきだ
読みやすく改稿しました!
20yy年 トーキョー都 クケコザ市 某所……
個体識別番号HMR-002は現在、氷室優也博士によって製造中のアンドロイドだ。家事全般から会話まで、全てをそつなくこなすという超高性能コンピュータに、最先端技術を使っている。
何故そこまで彼が力を注いでいるのかと言うと、息子のある親友が家族が欲しいと嘆願していたからだ。
息子の親友、市野ひすいは小学5年生。両親がいるものの共働き、それに一人っ子でいつも寂しい思いをしているそうで、父親が企業の社長、母親が人気イラストレーターと言った具合だ。
「ふんふんふーん♪わったしーはげーんき〜♪」
呑気に歌を歌いながら、氷室はデータをアンドロイドにインプットさせ、まもなく最終段階へ入る。HMR-002は中学生くらいの少女型だが、見た目はどんなに最先端の技術を持ってしても、人間とは違いやはり不気味だった。ソレの頭部の大部分を、ヘッドギアが占めている。データの保存や、インターネット接続のためには、人工頭脳のみでは容量が足りず、アンドロイドにとってヘッドギアが必要不可欠なのである。会話も人間同様に自然に出来るようにプログラミングし、さらには味覚センサーまで搭載しているのだが、まだ試してはいない。色んなプログラムを集結させたソフトをボタン一つでインストールさせるからだ。
あと1つ、ほぼ完璧であるアンドロイドに足りない物は感情だった。人間の感情は再現出来ない特有のものであり、ひすいを支え励ますような発言、行動が出来るのかどうか、氷室は気にかけていた。
HMR-002には無数のコードが繋がれている。まるで重病で入院している患者のようにも見えた。氷室はソフトを002にインストールさせるため、大きなパソコンのEnterキーをカチッと押した。
「ひゃ〜…うん?雷が近いなあ。なんだか、とてつもなくイヤーな予感が」
窓から見える外は酷い雷雨で、この研究所が雷に直撃されたらたまったものではないだろう。
バチバチッ、ピシャーーーーン!!
しかし、悪い予感は的中してしまう。データのインストールが完了するかしないかのタイミングで、研究所に雷が落ちてしまった。全ての電気が消えて、アンドロイドには耐久できないほどの電気が逆流し、ショートしてしまった。氷室は爆風で転倒し、起き上がれなくなった。
「ううっ…勘弁してくれ…!最高傑作が……ダメ……に…」
薄れいく意識の中で氷室は涙を流し、そのまま倒れた。
☆☆☆☆☆☆
《これは………可哀想なアンドロイドだ。氷室博士が全力を注いだのに、これじゃあまりにも不憫すぎる。とりあえず、この惨状を何とかしてやろう》
わしは神様。ちょっと落雷があったから、様子を見に下界にやってきたところである。手から光の粒を出して、あちこちを修復してやった。氷室博士はどうやら雷の音に驚いて気絶しただけで、幸いにも軽いケガで済んでいたみたいだ。……要するは、このショートして金属の塊と化したこのアンドロイドを、動かせるようにしないとだな。
うんうん、中学生くらいの女の子みたいになった。ちょっと人間に近づけすぎたか、とは思ったけど。修復は成功か、な、おっとっと!
《……あっ!?しまった!!》
光の粒が手からこぼれ落ち、アンドロイドの左胸に入り込んだ。こいつを動かせる様には修復したが、神の奇跡をあのまま受け取ってしまうと…もしかしたら、いや確実に自我が芽生えてしまう!!
嗚呼、わしはなんてドジなのだろうか。天界でも散々馬鹿にされて3000年、全く変わっていないな。まぁ、これも落雷のせいってことでなんとかなるだろう!さらばだ!
《ん?もう1体居るな?……どうせなら、やっておくかねぇ…》
☆☆☆☆☆☆
CODE:HMR-002
CONDITION:ALL GREEN
POWER:ON