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第八章 進展

今までの総括って感じです。主人公の行動理念と目標など!


 亡国ルチェ・ソラーレ。かつての大国も今はその居城を残すのみとなっていた。


ユートピア魔物領北部に位置する大きな山脈を背後に建てられたその城は、国の主を失った後も煌々と存在している。


しかし今では魔将軍たちの根城となっていた。


その巨大な城の居館や塔へと続く道の真ん中に次元空間は現れ、バロネットは帰城した。


「あれぇー?バロネットじゃーん!丁度よかった!」


「マークィスか…」


バロネットと同じ魔将軍の一人であるマークィスはタイミング良く現れたバロネットにラッキーとばかりに話しかける。


「アンタもこれからモルドヘッド様に報告に行くんでしょ?フフ、つーかまえた!」


そう言ってマークィスはバロネットに抱きつき、その大きな両手のひらをグッと背中に回す。


「離せ…!私に触るな」


マークィスのあまりに大きな手をバロネットは無理やり振りほどくと、そのまま真っ直ぐ歩き出した。


「何よーちょっと待ちなさいよー」


マークィスはさっさと先へ進むバロネットを追いかけながら、二人はそのまま居館の方へ消えていった。




*************************************


 大きな円卓をたくさんの椅子が囲んでいるが、埋まっているのは3席だけ。


本来集合すべき時間になっても一向に姿を表さない他の魔将軍達にバロンは苛立ちを隠し切れなかった。


「遅い!何をやってるんですか他の魔将軍たち達は!」


「zzz…zzz…」


「……………………」


「デューク殿!寝ないでください!」


「……んを!飯か?」


「違います!進展報告の時間です!!」


「何だ…飯じゃないのk…zzz」


再びテーブルに突っ伏して眠ろうとするデュ―クをバロンは声を上げて起こしにかかる。その様子をヴァイカウントは黙って見ていた。


他の魔将軍達とは違い、時間に忠実だったのはこの3人だけ。デュ―クが来たのは気まぐれであるから2人だけとも言える。


「ヴァイカウント殿も黙ってないで何とか言ってください!」


「…バロン。そうカリカリしなくても皆いずれ来るわ」


ヴァイカウントは静かな口調でそう答えるとまた押し黙ってしまった。


すると部屋の扉がギィと空いて、マークィスとバロネットが遅れて登場する。


「いやぁー遅れちゃったー、ゴメンねー」


「遅いですよ!二人とも!」


クドクドと説教を始めるバロンに適当に相槌を打ちつつマークィスは席に着く。


バロネットも集まりの悪い部屋の状況を見るとチッと舌打ちをして席についた。


「全く…!魔王軍を率いる魔将軍としての自覚が足らないんじゃないんですか?モルドヘッド様に忠誠を誓う魔将軍同士しっかりと意思疎通をし!組織的な行動を…!」


「まぁまぁ!それよりさぁーそろそろ始めない?時間のない中来てる奴もいるんだからさー。てゆーか、モルドヘッド様いなくない?」


バロンの小言を遮り、マークィスは会議を進展させようとする。


「…モルドヘッド様は今日はおられません。魔王様に会いに行くとのことです」


「ッケ!何だぁ?無駄足かぁ?」


ドカッとテーブルに足を上げて座るのはアール。突然現れたアールに一同は一瞥した。


「これで後はナイト殿だけですか…。まぁいいでしょう。それでは軍編成の進展状況の報告を各自お願いします」



 魔人たちは人間領への進行準備を着々と進めていた。


円卓を囲み集合した魔将軍たちは皆魔人族、共通している点としてデュ―ク以外は薄青い肌、形状は違えど額から角をはやしている。


そして並外れた戦闘力。凶悪な魔物達をまとめ上げるほど圧倒的な力。


これまで徒党を組むことがなかった魔物達が軍を組織し、まして人間領に進行してくるなどとは誰も知る由もなかった。


この魔人族を従える絶対的な魔王の力も。


*********************************************


魔人バロネットとの戦闘を終えて、僕は王都の宿屋にいた。


ニーファは一度家に帰るとのことだったので魔法で王都まで送ってもらった後、翌日また会う約束をして別れた。


「何だか長い一日でしたね…」


ティティアの言う通り、転生して一日目だってゆうのに先が思いやられる…。


確かにゲームの主人公みたいになりたいとか、本当の現実にいた時は強烈に憧れたけど…。


できる事ならこの世界を自由気ままに冒険してみたり…見たこともない景色を見たり、美味しいものを食べて…ってゆうのんびりした生活の方が良いな。


「魔王軍か…」


そうポツリと呟いて、僕はベッドに仰向けに寝っ転がった。


この世界で生きていくのに確実に障害になる敵の存在。そもそもRPGだから仕方ないけど…。


やっていけるのかな、この世界で…。ちょっと状況整理してみよう。


えっと…今日確認できたことは…。まず、この世界は僕が始めたRPGにそっくりだってこと。


魔物がいたり、魔法スキルの存在があったり、職業やLv。僕が憧れていたファンタジーの世界だ。


そしてゲームとして反映されている部分とそうでない部分がある。ゲームでは常にあるステータス表やウインドゥは無く、限りなく現実に近い。でも、ゲームのシナリオ通りにこの世界は進行していて、今日僕に起こったことは本来のこのゲームのイベントだったんじゃないかと思える。


本当に、僕が生きてきた現実がそっくりそのままゲームの世界とひっくり返った感覚。


多分だけど…、この世界でもし死んでしまったら…本当に死ぬな。そんな気がする。


いやいや…変なこと考えるのはやめておこう。せっかく望んだ世界にこれたんだ。


とりあえずの目標として、明日も楽しく生きる事!


魔王軍の侵攻とか、主人公の責任とか忘れよう。うん、そうしよう。


この世界ゲームのクリア条件として魔王を倒しちゃったら元居た現実に戻っちゃうかもしれない。だから魔王は倒さない!


改めてそう決意した僕はそのまま深い眠りについた。




 次の日の朝、約束したニーファを宿の前で待つ間、〈解析〉を使って新しく手に入れたスキルを確認してみた。


ウインドゥも無いのにどうやって確認しているのかって?上手く説明できないけどスキルは何となく自分の中にある、そんな感覚だ。〈解析〉の発動も同じ感覚。自分の右手を上げるのと同じように、容易に発動できる。最初から知っていたかのように。


〈HPアップ〉〈攻撃力アップ〉〈防御力アップ〉はその名の通りの効力だった。これは常に発動しているタイプのスキルだな。


〈恐怖体制〉状態異常、恐怖になりづらくなるスキル。〈カウンター〉は相手の攻撃を確率で防ぎ反撃するスキル。


そして初めから持っていたランダムスキル。これだけは何のスキルかわかんないんだよな…。


改めてランダムスキルをLvの上がった〈解析〉で調べてみると


(抽選条件を達成しました)


お、なんか達成してたのか。どうなるのかな?


(ランダムスキル→転職の秘儀となりました)


ん?そうか、なるほど。ランダムスキルは条件を満たすとランダムで何かしらのスキルになるのか。


(〈転職の秘儀〉いつでも好きな時に職業変更ジョブチェンジができる。)


んんー。正直言って微妙なスキルだな…。チート級のスキルにでもなればいいのに…。


(新たにスキルを習得しました)

〈ランダムスキル〉


はは、また手に入った。次の達成条件は何だろう?


それにしても〈解析〉は便利だ。頭で思うだけで色んな事を教えてくれる。



 スキルをあらかた確認し終わるとタイミングよくニーファが魔法、次元大穴ディメンションホールを使って現れた。


「おはようございます…。昨日はありがとうございました」


相変わらずの小さな声でそう笑顔で挨拶をくれた。


「おはよう。それじゃあさっそくなんだけど、魔法について教えてくれないかな」


ニーファにはトロール達の討伐を手伝った報酬として魔法を教えてもらうことになっていた。


正確にはトロール達は討伐されず、僕は何もしていないんだけど…。


「はい…、それは構いませんけど…。でも具体的に何を教えれば…」


「そうだな…とりあえずニーファが使ってるその移動魔法を教えてほしいんだけど」


あれはすごく便利そうだった。ぜひ覚えておきたい魔法の一つだ。


次元大穴ディメンションホールですか…?あれは職業が魔法使いでないと覚えられなくて…」


「あ、そうなんだ」


「その…ヴラドさんはたしか職業は剣士ですよね…?それだとほとんどの魔法を覚えられないと思います…」


「ええっ!そうなの!?」


思わず大きな声を上げてしまう。


職業かー…盲点だった…。剣士だと覚えられないのか…、まあそりゃそうか…。  


「教会で神官様に職業変更をお願いすれば魔法使いになれます…。お金はかかりますが…」


いやいや…教会はもういいよ…。お金かかるし…。


何だかニーファと神官がグルなんじゃいかと思えてきたな…。


職業変更か……そうだ!


「転職の秘儀!発動!」


次の瞬間ヴラドは眩い光に包まれた。





第九章へ続く

ゲームの世界なんだけどゲームじゃない。でもほとんどの超常現象はゲームの世界だから、で片づけます笑

                                            神条紫城

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