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第四章 王都ボルドー

いよいよ王都へと入ります。 よろしくお願いします!

仮想世界ユートピア。人間領の最東端イステイン王国、王都ボルドー。王都入り口では検問が行われていて多少混雑していた。


こんな真っ黒な鎧に大剣を背負ったまま検問所を抜けられるのだろうかと疑問に思ったけど、魔王討伐志願者だと伝えるとすぐに通してもらえた。


検問…ザル過ぎないか? それ程治安がいいのか…。


「つきましたね!王都ボルドー!…それにしても人が多いですね。見てください!お店もいっぱいです!」


子供のようにはしゃぐティティアの言う通り、入り口付近の通りは両脇を挟んで露店がズラリと並んでいて人通りも多くガヤガヤと賑わっている。


情報収集がてら買い物をしたいところだけど…まさか所持金がさっきの魔獣を倒して手に入れた2Gゴールドとはなぁ……。


HARDモードでスタートしたから所持金ゼロからの出発。異世界に転移してしまっとはいえ、ここはゲームの世界。ゲームの設定は結構反映しているみたいだ。


「うーん、とりあえず王様に会いに行こうか」


「そうですね。王にヴラド様こそが勇者だと認めてもらいましょう!」


この世界の『勇者』がどのような存在を表すのかわからないけど、僕のゲームの経験上悪い意味ではないと思う…。それどころか優遇される場合のほうが多いし、G(ゴールド)もたくさん貰えるかも!





期待に胸を膨らませ王城の前まで行くとずらずらと行列が出来ていた。


並んでいる人々は皆町人らしい格好ではなく、武器や防具を身に着けていて何やら意気揚々としている。


何だろう…?何かのイベント?


「おい、そこのあんた。魔王討伐志願者か?」


ぼーっと列を眺めていると甲冑を身にまとった兵士に声をかけられた。


「はい。それで王様に会いたくて来たんですけど…。この列はいったい…?」


「全員あんたみたいな討伐志願者だよ。王が御触書を出したもんだから腕自慢達がゾロゾロと集まったってわけさ…。さ、ココに名前を書いてさっさと並びな」


そう言って兵士は名簿とペンを手渡した。


なるほど…。粗方討伐した暁には報酬金を出すとでもふれ回っているんだろう。



言われるがままに名簿に名前を書き、列に並んで待っていること数十分。いよいよ自分の番が来た。


多少緊張しつつもいわゆる玉座の間というやつに入り、王の前に膝をつき頭を垂れる。


作法とかわかんないけど多分こんな感じでいいよね…。


「黒の騎士ヴラド、面を上げよ」


顔を上げると大きな椅子に立派な髭と王冠を身につけた王様がドカッと座っていた。隣にすまし顔で立っている男は…大臣か何かだろう。


「お主が黒の騎士ヴラドか、討伐志願心より感謝するぞ。Gゴールドと通行許可証を授けよう、これがあれば大抵の国には入国できるだろう。準備が出来次第出発するがよい…」


「ありがたく頂戴します」


あれれ、思ったよりもあっさりだな。もっと…勇者殿!この世界をどうか、どうかお助けください…!みたいなのを想像してたんだけど、まったく勇者として認識されていないみたいだ。


…まあでもこれで王様から転生で呼び出されたって線は消えたな。


特に特別扱いされるわけでもなく、Gゴールドと通行許可証をもらった僕は王城を後にした。




王城から露店街への帰り道、何やらティティアが不満顔だ。


「何だか淡々としてましたねぇ…。それに随分と偉そうにしちゃって…!そうですよね、ヴラド様!」


「いやいや…王様ってそうゆうもんだから…」


「ティティアにとってはヴラド様の方が偉いのです!」


堅苦しい挨拶から解放されたからなのかティティアはグルグルと僕の周りを飛びまわっている。


並んでいる時や王様に謁見した時に気が付いたけど、どうやらティティアの姿は周りの人には見えていないみたいだ。


一応妖精族ってことでモンスターなんだと思うし、変に見られて騒がれるよりは全然いいかな。


「あのう…。そこにいるのフェアリーですよね…」


っえ!?っと思わず声を上げて振り向くと、黒いローブにとんがり帽子を深くかぶり奇妙な杖を持った者が一人。


何だ…?ティティアの姿が見えてる…?おかしいな、さっきまでは誰一人と反応を示さなかったのに…。


「君は…ティティアのことが見えるのか…?」


「ってことはやっぱフェアリーですね…。魔力を全く持ってない人には見えませんけど…、私のような魔力を持ったまほっっ……ヘァ!?」


「君は魔法使いか!!!」


と思わず魔法使いの肩をガシッとつかんでしまった。


おっとっと…。興奮すると考えるより先に行動してしまうのは僕の悪い癖だ…。


静かな口調から察するに気が強い方ではないみたいだ。今ので驚かせてしまったらしい。ビクッと両肩を首が無くなるほど引き上げて一歩後ろに身じろぎしている。


「ご、ごめん。いきなり…。魔法使いに会うのは初めてで…つい…」


「セ…セクハラです。訴えます」


「はい!??」


声から女とわかってはいたが、この反応はまずい…!


急いで手を離し様子を伺うと、魔女は頬を赤らめつつ帽子の下からジッとこちらを見ている。


「…セクハラです」


「いっいやちょっと待って…!悪気はなかったんだ…。てゆうか肩に触れただけじゃないか!?」


「そうですよ!いきなり現れて何なんですかあなたは!?反応が過剰すぎます!さては…ヴラド様の気を引こうとわざとやってますね!?」


ティティアが横から口をだした。


「ちょっ!ティティア余計な事言わないで!!」


「……衛兵さーん」


「だあぁー!待て待て待てって!」


王都の方に走りだそうとする魔女を必死で呼び止めた。


「ど、どうしたら許していただけるんでしょうか…魔女さん!」


「………あなたどうせ魔王討伐の志願者ですよね。強いんですか…?」


「いや…実は自分がどれくらい強いのか、Lvすらもわかってないんだ。でもどうして?」


「そうですか…」


そう言って今度はうつむいてしまった。


……つくづくよくわからない子だな。


「…さっきのお詫びとか抜きにして、困ってるなら手を貸すよ」


魔女は少しの間押し黙った後、ゆっくりと口を開いた。


「……実は…モンスターの討伐を手伝ってくれる人を探しています。そのために王都まで来たんですけど…でも…トロールだと言うと誰も引き受けてくれなくて…」


「うえぇ…トロールですか…」


ティティアは苦虫を嚙み潰したような表情をしている。


トロールか…。その様子じゃ結構強い方なのかな?


「トロールはこの辺りでは一番強いです…。自分のLvもわからないような人には頼めません…」


「自分のLvはどうやったらわかるんだ?」


「教会に行って神官様に頼めば教えてくれます…。お金はかかりますが…」


なるほど、そうゆう仕組みなのか。


「じゃあ、これから教会に行くから君も一緒に来てくれないか?」


っえ?っと顔を上げた魔女と目が合った。


「君が僕のステータスを見てトロールに対抗しうるか判断してほしい。もしそうなら手伝うよ」


「…わかりました。多分無理だと思いますけど」



どうして手伝おうとするのかって?


長年ゲームをやってきた僕の勘が言っている。これは…パーティー加入イベントだ!


RPGでは一緒に戦う仲間が不可欠。もしこの世界に職業という概念があるのなら装備から察するに僕は戦士?って感じかな。


この子が仲間になるなら後方から援護できる魔法使いは大きな戦力アップだ。


ただ…一つ気になるのは…ここはゲームの世界であってもゲームではない。


つまり…決まりきったシナリオ道理の会話、仲間にするための条件がわからない!


現実と変わらないんだ。NPCと思われる人達は皆意思を持って、本物の人間のように行動している。


女の子に一緒に旅をしてくれなんて…ナンパ師でもないと言えないよ…。


ハァ…、恋愛ゲームだったらやったことあるんだけどな…。何だか口説かなきゃいけないみたいで気が引ける…。


まぁこの世界で一つ誰かに貸しを作っておく事は悪くないと思うし、自分の強さを知っておくことは大事なことだしな…。教会の場所もわからなかったしちょうどいいや。


こうして僕は魔女の案内の元教会に向かった。




第五章へ続く。



ご愛読ありがとうございます。そしてブクマ、評価や感想ありがとうございます。とても励みになりました。これからもよろしくお願いします。                          神条紫城

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