第十章 竜ノ娘-弌
少し間が空いてしまった…。お待たせしました!書き方を少し変えてみました。1行ごとにあけるのとどっちがいいですかね?
深い森の中、血が指先から滴る程の肩傷を抑え、そこから一歩でも近づかばただではおかないと目が訴えている。
竜人族…しかも名前持ちのドラゴンメイド…。ステータスが表示されないってことは、僕よりもかなり高Lvってことか…。でも、凄く弱ってる…?
「人間…!そのまま去れば見逃してやる…!」
言葉も理解しているのか…。あまり関わりたくないんだけど、こんな傷を負った少女をほっていくってのは…できないな。例えそれが魔物だとしても。
「大丈夫、僕は君の敵じゃない」
まずは警戒心を解く。種族が違くても言葉が通じるのは助かった。
「黙れ!あと一歩でも近いてみろ…我が炎が…」
「わかったから、取り敢えずこれを飲んで」
そう言ってニーファに貰ったポーチから下級回復薬を手渡した。
「ポーション…?何で人間があたしに…?……チガウ!これは毒だな!」
「ブラド様がそんなことするわけないじゃないですか!黙って飲むのです!」
「ん…?フェアリー…?どうして人間なんかと一緒に…?」
ティティアのお陰で一瞬だけ素が見えたな…。それにしても疑い深い、人間ってそんなに魔物に警戒されてるのかな?いや…この傷、もしかしたら…。
「あぁー!てめえ!何してやがる!」
「何騒いでんのさゲール。あ、いた!」
「おお…めんどくさいことになってんな…」
やっぱりか…。そんなとこだろうと思ったよ。
茂みをかき分け現れた冒険者とみられる30代位の男達が僕とドラゴンメイドを見るなり声をあげる。
おそらくこの子に傷を負わせたのはこの3人だろうな…。格好から剣士、弓使い、魔法使いってところかな。
「おうおう兄ちゃん!そいつは俺たちが昨日から追い回してる魔物なんだよ、さっさとそこどきな!」
「バカ!言い方があるだろ!ごめんな兄さん、でも組合で獲物の横取りは禁止されてるだろ?」
突っかかってくる剣士を弓使いがなだめる。
なるほど、冒険者にも組合があるんだ…。それはそうとして、追っていた獲物を横取りするのはよくない。獲物…?獲物…。この子が?
「まぁ、そういうわけなんだ。悪いなお前さん、そいつを置いて行ってくれないか?」
3人の中で一番歳をとっていると思われる魔法使いがそう要求する。多分あの人がリーダーかな。一見話の通じそうな人だけど。
「どうするんですか?ブラド様…」
ティティアが耳元でささやいた。
…わからない。考えがまとまる前に僕は疑問を投じた。
「この子をどうするつもりですか?」
魔法使いは僕の意外な質問に一瞬間を置いてから答えた。
「この子ってお前…、そいつは魔物だぞ?しかも珍しいドラゴンメイドときたもんだ。そりゃあ狩れば経験値になるし、金にもなる、組合の名も上がる。珍しいアイテムを落とすかもしれない。どうするもこうするも無いだろう」
「苦労したんだぜ?ここまで弱らせるの」
「あとちょっとの所で逃げちまってよ、ま、ギーダが仕掛けておいた罠魔法に引っかかってたみたいだがな」
…もとはといえばここはゲームの世界、だから魔物=悪、倒すべき獲物。この考えに疑問を持つ方がおかしいんだろう。そう、きっと僕くらいだ。僕だから救えるってことか?いやいや、そんなことしたって。……ネームドを追い詰めることができるくらいだ、この3人はそれなりに腕が立つんだろうな。敵に回すべきじゃない、それもわかっている。…でも。
ゲームの主人公だったら、僕が憧れるゲームの主人公だったら、きっと…助けるんだろう。
そう思うと、止まっていた体は自然に動いてしまった。少女を背に3人に向かって剣を構える。
「いい大人が3人で1人の少女をいたぶって恥ずかしくないんですか?」
僕の言動に一瞬時が止まったかのような空気になる。3人は目を大きくするとお互いに顔を見合わせて次の瞬間盛大に笑い飛ばした。
「ギャハハ!に、兄さんよ!しょ、少女ってそいつがか?」
「お、おいやめろって…ブフッ!笑っ…ちゃしつれ…だろ!」
「フフフ、あのなぁ、そいつは人間じゃないんだ。そりゃ今はそんな少女に化けちゃあいるが、実際はお前さんより大きなドラゴンさ。わかったらさっさとそこをどきな」
「そんなことはわかっています。でも、どきません」
僕の言葉に魔法使いは眉間にしわを寄せる。
「じゃあ、なんだ?そいつが魔物ってわかったうえでそいつをかばうってのか?」
「…そうです。この子を見逃してあげてください」
ああ、馬鹿だな僕は。得なんてないのに。
【ごちゃごちゃ考えてるんじゃねえよ!お前、そいつを助けたいんだろ?】
そうだけど、って、え?
【理由や理屈なんてどうでもいいんだよ!さっさとそいつらぶっ飛ばしちまえ!】
目の前の3人ではない。聞いたことのない若い男の声に、僕は周りをキョロキョロ見回した。
気のせいか…?
別のことに気を囚われ、僕が何も言い返さないでいると、魔法使いは一息つき仲間に言った。
「やれやれ…ゲール!この面倒な兄さんを一発ぶっ飛ばして目を覚まさせてやってくれ。俺はあきれちまったよ…」
「おう!任せとけ!」
屈強な体つきをしたゲールと呼ばれる剣士がずんずんと前に出てくる。すると、一部始終を黙ってみていたドラゴンメイドが僕に問いかけてきた。
「人間…、何故私を助けようとする…」
ドラゴンメイドには背を向けたまま、少し間を置いて僕は答える。
「理由なんてないよ。強いて言うなら、ゲームの世界でくらいかっこつけてみたかった、かな。」
普通だったらこんなことはしないんだろう。でもこの世界は普通じゃない。本当の現実を離れたゲームの世界でくらい、理不尽で自由な行動をしてみたいと思う。
「げぇむの世界…?」
「ハハ、こっちの話さ、気にしないで。」
ゲールは剣先を僕に向けると全身が赤いオーラに包まれる。
「〈馬鹿力〉発動!さあて、兄ちゃん!俺は手加減できないぜぇ?邪魔するからには覚悟しな!」
そう言ってものすごい勢いで突進し、その勢いのまま大きく振りかぶる。
避けると後ろのドラゴンメイドに当たる…!そう思った僕はあえて右手のナイトソードで受ける。鋭い金属音が交差し、僕より上背のあるゲールはその上から更に力を加えてくる。
「っとお…!俺の一撃を受けるとは、なかなか見込みのある剣士じゃねえか!」
「…僕は剣士じゃない、今は魔法使いだ!」
左手をゲールの横っ腹に向け呪文を唱える。
「くらえ!風球!」
「何だと…!!?」
ほぼゼロ距離で食らわせたウインドボールにゲールはくの字に吹き飛ばされるが、そのまま後ろ向きに一回転し、華麗に立ち上がる。あまりダメージを食らったようには見えないが、ゲールの顔からは笑みが消えていた。
「馬鹿な!魔法使いに俺の剣が受けられるはずがねえ!そもそも剣すらまともに振れねえはずだ!」
「僕は剣も扱える魔法使い、ただそれだけです。」
再び突進しながら上段攻撃を試みるゲール。それを華麗に右へ左へと受け流し、避け、魔法で反撃。
ステータス上のすばやさは剣士のほうが普通は上なのだが、僕は魔法使いでもゲールよりは早いみたいだ。
「オイオイ、ゲールのやつ押されてねえか?」
「ったく、ゲールのやつあんな大振りじゃそいつには当たんないっての」
魔法で地味にダメージを受け、剣を振りかぶる時に隙の見えたゲールの腹を思い切り蹴飛ばす。ゲールは軽く吹っ飛び再び距離ができた。
「クソが…!ハァ…!この…インチキマジシャンのくせに…!ちょこまか逃げんじゃねぇ!」
「魔法使いと互角の剣術しか使えない剣士なんて…剣士失格だ!」
僕の挑発にまんまと乗り、またしても突進してくるゲール。
「なめんじゃねぇぇぇぇ!!」
僕はナイトソードを腰に差し、バッと素早く両手をゲールに向けて構える。
「…それじゃファンガスと一緒じゃないか。水よ…衝撃となりて敵を吹き飛ばせ。水撃!」
重い水属性の衝撃がゲールに直撃する。吹き飛ばされたゲールは藪に大の字で倒れるとそのまま起き上がらなくなった。
「」の会話ですが荒っぽい口調がゲール(剣士)チャラいのが弓使い、なんか大人のおっさんぽいのがギーダ(魔法使い)です笑。わかりづらかったらすみません。