いつもの一日
今日もジリジリと暑い中、門の前に立っている。
相変わらず魔法訓練者達が門の前に集まっている。
それには目をやらずに村よりから少し遠目に目をやっている。
しかし午前中だというのに暑すぎるな、汗が顔を伝って滴る。
今日はこの後子供達に魔法を教えに行く事になっている。というか、俺ってこの球を作って制御する以外に
魔法の訓練とかやった事ないぞ?
そんな事を考えていると遠目から二人組がこちらに向かって歩いてくる。
その姿がどんどんと大きくなる
「みんな、誰か来たから魔法の練習を辞めてくれ」
その声で皆魔法の練習をやめ、二人組の方に目をやる
すると、その二人に過敏に反応する三人。
『あ、、、私達って今村に何日いたっけ?』
サラが誰にというわけでもなく質問をする、するとダインが答える
「丁度一週間じゃないか?」
その答えにアワアワし始める冒険者二人と困った顔をするサラ。
「なんだ?どうかしたのか?」
サラが難しい顔しながら答えてくれた。
「クエストの事をすっかり忘れていたわ」
皆の時が止まる。
そして二人組が俺の前にやってくる。
「冒険者と見受けるが村に何か用か?」
すると茶髪にメガネの冒険者が
「こちらにはクエストで参りました、先にこちらに来た冒険者を連れ戻すというクエストです。」
そう言いながらメガネの男は三人の方に目だけを向ける。
「たしかにそこの三人は一週間前に来た冒険者だ」
サラと一緒に来た冒険者は
「なんで余計なこと言うんすか!」
「そうだそうだ!」
メガネの相方の大男が二人を一喝する
「おまえらがこんなところでぬくぬくと遊んでいるから俺たちがこんなど田舎まで探しに来てやったんだろうが!」
怒鳴られた二人の冒険者は体を硬直させる
しかしこの大男俺よりデカイな、俺だって身長196cmあるんだぞ?2m超えは確実か?
サラが二人に対して頭を下げる
『申し訳ありません、連絡するのを怠ってしまった。』
メガネの男は微笑んで
「まあ、よくあることですからね。今度は気をつけて下さい。では準備をして帰りますよ?」
サラ達は大急ぎで宿へ戻って行った。
「村へは入らないのか?」
大男がこちらに歩いてくる
「さっさと町の家に戻りてぇのさ、俺はこんななりはしているが意外に繊細なんだ。」
皆一様に笑い始める。
そこへドタバタとサラと二人が宿から戻ってきた
『おまたせしました!』
メガネの男が踵を返す
「さて、帰りましょう。」
サラがこちらを向いて。
『マシュー、色々とありがとう。』
「気にするな、冒険頑張れよ。」
サラはニッコリと笑って
「ありがとう。頑張るわ」
そして冒険者の五人は去って行った。
しかし疑問が残った、サラ達が受けたクエストとは何だったんだ?
クエスト未達成で帰ってしまったが。少し気になるな
そんなこんなで昼過ぎ
街中の広場に来ていた、巡回の途中なので長くは見てやれないが魔法の練習を見ている。
やはりダントツで、魔法が使えた少年ヨミの覚えが早い。
属性付与をさせて、二個の球を自在にコントロールしている。
他の子供達も魔法の球は出来ている。
子供の成長は早いなと感じながら。練習を見て
また巡回に戻る。
井戸の方も滑車で少しは作業が楽になったようで
声をかけられると少し嬉しくなる。
そして夕方までまた門の前に立つ、、と
今日は客が多いな。
商人と思われる一団が凄いスピードでこちらに向かっている、後ろには、、、
魔物の群れ、、、
最悪だ。
しかしこちらも魔法練習中の男達が門には控えている
「ダイン!皆!商人が魔物に追われている!撃退準備を!」
ダイン達は一瞬ハッとして各々武器を構えた。
そして商人の一団がこちらに到達する
『ず!ずみまぜーん!だずげでぐだざーーい!』
商人は必死の形相で叫んでいた。
魔物の群れ、最近魔物が少し多い気がしていたが、、
何か関係があるのか?
魔物の群れはここら辺では見たことがない、熊の魔物と狼の魔物、熊が二匹、狼が五匹。
商人を門の中に入れ、門の柵を閉める。
柵は気休めにもならないようなショボいつくりだが
閉めないよりはマシだろう。
最初にこちらに来たのは狼、それに対しては男達が応戦する。
ここ最近魔法の練習をしていたが特に魔法が使えるようになったわけではない。
今まで通りに狩猟と同じ感覚で戦う。
そして俺の前には熊の魔物が二匹、どの位強いのかわからないので、取り敢えず全力だ。身体強化を行う。
熊の右手の振り下ろしを躱し、空いた右脇腹を斬りつける。ズバッと熊の右脇腹が切れる、しかも思っていた以上に深くいった。
「よし、このまま魔物退治だ」
すぐに倒してしまわないと、ダイン達が心配だ
斬り付けられた熊は怒りで顔面からダイブしてきた、
大口を開けて。
俺はそれもサッと躱し、首を斬りつけ、一匹目を倒す。二匹目は恐れをなしたのか少し戸惑っているようだったが、すぐに両手を上げて襲いかかってくる。
「遅い!」
胴体を横薙ぎに斬りつけ二匹目も地面に倒れる。
ホッとしたのも束の間、ダイン達の方を見てみる
少し劣勢ではあるが何とか戦線を維持している。
俺は一番近い狼を斬り捨てる。
そこからは早かった、狼を倒せばこちらの戦力は増える。あっという間に皆で狼を駆逐した。
周囲を見回し安全を確認し、柵を開ける。
「マシュー!怪我人を連れて行くからおまえはさっきの商人に事情を聴いておいてくれ」
「わかった!やっておこう!」
宿の前で呆然としている商人達に話しかけた。
「私はこの村の兵士をやっている、君たちは見たところ商人のようだが?一体何があったのだ?」
主人なのか、若い男が前に出てきた
『危ない所を助けてくださりありがとうございます。
東の町で商いをしております、キンドと申します。
西の方へ行く途中の街道にいきなり魔物が現れて、商人仲間達が次々とやられてしまい、私は命からがら逃げて来たというわけです。』
街道に、、魔物?
「待ち伏せでもされていたのか?」
不思議に思い聞いてみる。
『いえ、すみません、実はそこら辺はよくわからなくて。』
「そうか、傭兵や冒険者は雇わなかったのか?」
キンドは俯いて
『金を払って雇った傭兵は我先にと逃げ出しました。
他の商人も傭兵は雇ってたようですが、逃げたり、戦ってもやられてしまっていました。』
なるほどな、多勢に無勢だとやられるかもしれんな。
「まあ今日は宿でゆっくりやすむがいい」
商人は力なく微笑み
『ありがとうございます』
商人が宿へ入るのを見送って、俺は村の周辺の巡回を
行った。
今日も魔物の数が多いなかれこれもう十匹以上屠っている。
何かの前触れじゃなければいいが。