これはいかんと改善を進める
今日もジリジリと暑い中、門に立って、いなかった。
今日は週に一度の休みなのだ。
代わりにダインが門に立っているが何故だかいつもの魔法訓練のメンバーが集まって、練習をしている。
現在サラは火球を二個同時に作りだすことに成功していた。
ダインは風の属性付与を習得中、冒険者達が漸く魔力を球にし始め、村人達は球にするのに苦戦している。
ちなみに俺が同じことをやると10個の球にそれぞれ別の属性を付与し、それぞれを自由自在に操れる。
しかし!今日は魔法の訓練ではないのだ。
この間見たあの光景がまだ脳裏に焼き付いている、
子供が頑張って水の入ったタライを井戸から引っ張りあげている所を
改善だ、しかし1日で出来る改善なんてたかが知れている。だからステップを分けて改善をしていく。
先ず最終形態は勿論上下水道の完備、これはそれこそ何年単位だし金も労力もとんでもなくかかる。
次に上流の川からの水路引き、これも一年がかり、
下手をすれば数年がかりになるであろう。これも労力と金が莫大にかかる。
そうすると井戸を活用する事になるのだが、ポンプを作ることにする、自動だと数年かかる。
手動ポンプもやはり開発で何ヶ月もかかる。
だからまずはタライのロープに滑車を取り付けることにする。
滑車自体はないのだがそれに準ずるものはたくさんあるため、それを使って南側の井戸に取り付ける。
今日はここまでの改善だ。
「滑車って確か組み合わせて使うと力が、、、」
などとブツブツ言いながら絵を描きながら実際に組み付けてみる。
慣れないので少し時間がかかったが、、、
完成だ!
早速井戸に取り付けてみる、、、ちょっと待て。
「これ、滑車をどこに取り付けるんだ!?」
今作業をしている南側の井戸には蓋はあるが想像しているような屋根はない。
俺は前世の知識、教科書のイメージを想像しながら絵を描いていたが、定滑車を設置する場所がない!
何というイージーミス!なんだか悔しいので屋根を立てるのでは無く他の方法で滑車を取り付けられるように再度検討を行う。
うむ、やはりあの形しか思いつかんな。
簡単な支えでも作るか。
くそっ、貴重な時間を!、、、
鳥居のような形を木で組み上げて、そこに定滑車を取り付けた。
よし、早速使ってみるか。
カラカラカラ、、、
結構滑らかに動くな、、、
カラカラカラカラ
くせになりそうだ。
よしこのまま放っておいて様子を見てみよう。
マシューは木の陰に隠れる。
何分かして、お爺さんがやってきた。
「力が弱そうなお爺さんか、滑車が活躍してくれると良いが。」
お爺さんはいつも通りに縄を手に取り、それを恐る恐る引っ張る。
「おほ!軽い?気がするな」
スルスルと引っ張る。
「引っ張りやすいだけか?」
そうして水を汲み終わったお爺さんはキョロキョロと周りを見渡し何かを探す。
井戸の反対側にあったそれを拾う、そしてそれを井戸に被せる。
、、、
「蓋が出来んではないかぁ!」
はっ!しまった!
恐る恐るお爺さんの前に顔を出す
「老人、すまない」
老人は俺の顔を確認し
「蓋を出来るようにしておきなさい。」
「違うんだ、老人。聞いてくれ」
老人は怪訝そうにこちらを伺う。
「タライを上に上がると、蓋が出来るのだ。
つまり最初にここにあった状態が間違えていたのだ」
老人はきょとんとして
「あ、そう」
老人はロープを引きタライを上まで引き上げる。
「そのロープを柱に罹って結んでくれ」
老人は言われる通りに結ぶ
「そして蓋をしてくれ」
老人は蓋する。
「使い勝手はどうだった?」
老人はサムズアップしニカッと笑顔をつくる
このあと東、北、西の井戸に滑車がつけられた。
ふうっ、今日の改善は成功だな。
その頃門の前ではまだ彼らがウンウン唸っていた。