独学が物凄い成果だったと気がつく兵士
今日もジリジリと暑い中、門の前に立っている。
俺は昨日の夜ふと思った、村民って魔法使えないのか?たしかに俺の実家は魔法を使う人がいなかった。
今となっては使えなかったのか、使わなかったのかわからない。
だが俺は魔法を使っている。
俺が魔法の勉強をし出したのは3歳になり、文字がなんとなく理解できるようになった時だった。
たまたま見つけた本は魔法の基礎の書で魔力の流れや魔法を使うまでのあれこれが書いていた。
そして1年後魔力という概念を感じ取った時魔法を使うことができるようになった。
ちなみに基礎の書に書いてあることは8割がどうでもいい事ばかりで
残りの2割にこそ真髄があるものだった。
俺は自分なりに理論を展開し試し始め
身体強化系の魔法を使えるようになったのは更にそこから半年後、そして今のように魔力の体内循環で身体強化を施せるようになったのは二年半後の7歳の時であった。
おおよそ周囲に魔法を使うものは居なかったため、魔力の事は秘匿にしてきたが、プライマリースクールでは数人が火球を飛ばして対象を攻撃したり、氷塊で相手を攻撃するような魔法を使っていた。
その時は両親の影響で飛ばす魔法には一切興味がなく、ひたすらに身体強化、怪我をしたら回復する
という方向に鍛えてきた。
プライマリーを卒業し兵士になるためのスクールに通い出してからは魔法は疎かになりひたすら身体を鍛えた。
そういうわけで何年かぶりに行う魔法の訓練なのだ。
そしてやはり村人全員が魔法を使えないのだろうかと
また考え込む。
考え込んでいると、遠くから冒険者らしい三人組がやってきた。それがどんどん近づいてきて。
「おうおう!?こんな寒村に兵士らしきやつはっけーん!」
青髪をツンツンに立たせた男がバカにしたような物言いで声を掛けてきた。
なんだか腹が立つが、まだ、敵意は無いので通常の対応を心がける。
「冒険者だと見えるが村に何か用か?」
すると先ほどとは違う茶髪のパーマがかった男が返答をしてきた。
「はぁ!?なんだよ!こっちはこんな寒村まで移動してきて疲れてんだよ!休みに来たんだよ!」
ぐっ、まあ言ってる事は間違ってない、、か。
「冒険者ならカードを見せてくれ」
青髪と茶髪は悪態をつきながらカードをこちらに見せてくる。
そしてもう一人赤髪の女が後方からカードを見せてくる。
青髪がDランク、茶髪もDランク、赤髪がAランク
なんだか凄いパーティーだな。
「協力に感謝する。目の前の建物が宿になっている。そこで疲れを癒すと良い。あとは問題は起こさないでくれよ?」
言いながらカードを返す
『わかったわ、丁寧にありがとう』
赤髪の女が返答をくれた。後の二人はブーブー言ってはいるが特に害はなさそうだ。
喧嘩とかしてくれてしまいそうだが、、、
そういやさっきの冒険者は魔法を使えるのだろうか。
そして夜
案の定やってくやがった。
「てめえ!村民ごときが冒険者様に何してくれてんだぁ!?あん!?」
青髪の男が狩人の男に噛み付いている。
「なんだとぉ!村民ごときとはなんだ!」
狩人の男も引かない。
そんな狩人に冒険者の右ストレートが炸裂した。
倒れる狩人の男にさらに左の拳をお見舞いしようとしている。
がそれはさせない。
「暴れるな、と言ったはずだが?」
左手を掴み上げ捻りあげる。
「いでぇ!いででで!離せ!この兵士が!」
冒険者は勇敢にも腕を捻り上げられながらローキックをかましてきた。がノーダメージ。
後ろで殴られた狩人がヨロヨロと立ち上がる。
「いててて、すまんマシュー、、危ねぇ!」
ん?と狩人が見ている方に振り向くと
茶髪の男が両手をこちらにかざしている。
そして
「火の精霊よ!力を顕現させよ!ファイヤーボール!」
なんだ今の言葉は!?というか建物の中で火球を打ってきた!?馬鹿野郎!俺は避ける事なく素直に当たる。
「けっ!兵士ごときが図にのるからだ!」
青髪が腕を掴まれながら悪態をつく
「まさか避けねぇとは思わなかったけどな」
茶髪も呼応するように口を開く。
「兵士の野郎死んじまったか?腕離してくんねぇけど?」
逆に村民は口をあんぐりと開けてただマシューが魔法を食らった場所を見ていた。
「マ、、マシュー?」
「大丈夫か?」
漂っていた煙が晴れた
「なんだ?それ?」
俺にダメージはない、そして同時に怒りがこみ上げてきた。家の中での火球、そして村人を馬鹿にしてきたこいつらの態度、そして何より威力が、低すぎる魔法!
「ちょっと扉を開けてくれ!」
飲み屋の入り口にいた二人が扉を開け放つ
そして
ブォン!!
ガシッ!
ブァ!
ドサ!ドサ!
「ってぇ!このバケモンがぁ!」
「魔法食らって無事なんてありえるかよ!?」
店の外に放り投げた二人の冒険者に怒気を含ませ威圧する。俺が鍛錬してきた魔法はこんな時にも有効で
魔力を意識的に相手に向けて放出する。
「な、、な?」
「う、!動け?!」
この馬鹿モンがぁ!
渾身のゲンコツ×2
冒険者二人は泣きながらその意識を飛ばした。
店の中では歓声が沸き起こっている。
「よし!」
てか魔法、弱かったなぁ。冒険者でもこんな弱い魔法しか使えないのか。
すると後ろから声をかけられた。
『面倒かけたわね』
「予想はしていた、気にすることはない」
赤髪の女はクビを振って。
『私はサラ、一応Aランクの冒険者よ、面倒かけた分は何か無償で償うわ。ただし夜のお相手とかは無しね?』
ほほう、じゃあ
「世の中の魔法について教えてくれ」
は?とした顔のサラ
『本当にそんなことでいいの?』
「今はそれが一番知りたいんだ」
サラは色々と教えてくれた。
魔法には詠唱が必要であること、手をかざすなり媒体がなければならないこと。
体内魔力の消費が激しいため媒体は必要なのだとか
それが魔力を帯びた杖なんかであるとより良いのだと
「身体強化魔法なんてものはあるのか?」
『身体強化なんて普通は使わないわね』
やはり使用後の反動が激しいせいか?
『魔力を身体の表面に纏わせて補助させるなんて効率が悪すぎるのよ、一部分とかやる人はいるかも知れないけれど』
ん?魔力を纏わす?根本的に何かが違うな。
「魔力を身体の中で循環させたりはしないのか?」
サラが驚いた顔をして
『そんな事が出来る人間いないわよ、きっと魔力に負けて身体が爆散してしまうわ』
「いや、ほら。こんな感じなんだが」
サラは呆然として
『そ、、そんな、、、』