兵士の休息
気がつくと俺はベッドの上にいた。
どうやら死んではいないらしかった。
『お、門兵君!気がついたか!?』
そう聞いてくるのは村にやってきた青年
「もう!無理しちゃダメだよ!?マシュー!」
こちらは村長の娘メリッサだ
しかし、声が出ない、体もそこら中痛すぎてまともに動けない。二人の声に応えようと思ったが無理だった。
『門兵君、いやマシュー君。君は一体何者なんだい?』
は?とメリッサと俺
「マシューはこの村の立派な門兵です!それ以上でも以下でもありません!」
メリッサが答える。
『ああ、ごめんよ。マシュー君が出会った魔物はね
下級の魔族なんだよ、あまり賢くはないけど。強さは本物さ。』
ああ、そうか、見たことの無い魔物だとは思っていたがあれが魔族か。
恐ろしい強さだったな。あんな奴がうじゃうじゃしているのか?王都や市街地というのは。
「ま、、魔族、、ですか?何故この村に、、」
青年は肩を竦めて
『さあ、何故ここにいるのかはわからない、ただ一つ言えるのはマシュー君の強さは王都の近衛兵にも匹敵するということ。魔族と戦い僕が気づいて助けに行くまで、死なずにいたのは本当に凄いよ。』
メリッサも俺も目が点になった。
そもそもこの青年名前はなんというのか?そしてその魔族を倒した?のか?一体何者なのか。
こちらが逆に聞きたいくらいだ。
しかし声が出ない、身体が満足に動かない。
「アルスさん、マシューはまだ動けも声も出ないみたいですので」
アルスと言われた青年は納得した顔をして
『そのようだね、じゃあ僕は魔族も倒せたし、次の街に向かうことにするよ、色々とマシュー君と話ししたいことはあるけどね。』
では、とアルスは家を出て行く。メリッサは頭を下げて見送った
「アルスさんがマシューを背負って帰ってきてびっくりしたんだから!絶対無理しちゃダメだよ!」
さっきも言われたような気がするが
心配してもらえるのは嬉しいな。
少し時間が経って誰かが部屋に入ってきた。
「マシュー!死にかけたんだって!?マジウケるな!」
笑いながら入ってきたのは村出身で年齢が一個上の
ダインだ。普段は森での狩りを主としているが、俺とは訓練仲間である。お互いなかなか時間が合わないので毎日とは行かないが週に一度は打ち合っている。
狩りで弓は上手いし斧なんかは大分使える、周囲の魔物は弱いので訓練してくれるのは助かる。
「ん?なんだ?動けないのか?」
俺はほとんど動かない身体で頷く。
「そっか、魔物じゃなくて魔族だったらしいな。
良く生きてたよ、全く。」
ダインはこの話をアルスから聞いたこと、マシューと訓練をやって少しでも街の危機に備えたいこと。
そして訓練では手を抜かれていた事を責められた。
しかし最後は涙目で良かった良かったと声を掛けてくれた。
ダインと話をしていると村の皆がお見舞いに来てくれた。門兵として村に貢献できているのか些か不安だったが、皆が来てくれて力にはなれているんだなと思えることが出来た。
翌日
声が出るようになり、身体も日常生活に支障が無いくらいまで回復した。魔力もほぼ全快しており、身体の治癒能力向上をさせている。
「メリッサ、ありがとう。助かったよ」
ベッドから出て、メリッサに挨拶に行く
メリッサは俺が帰って来てからずっと家で看病していてくれた。
「マシュー、良かった。本当にもう無理はしないでね?」
メリッサは本当に心配してくれているようだった。
「ああ」
と返しておく。家を出てリハビリがてら村を回り皆にお礼をして行く。一日中寝ていた事もあり少し身体を動かしたい。
皆が野菜や果物、肉を分けてくれた。
しかし、、、何故こんな寒村にいきなり魔族なんてものが現れたのか、そしてあの強さ、これから先あんなのが出てきたら、、。
トレーニングは魔力ありでやる事にしよう。
もっと扱いに慣れていかないとな。
「しかし、たまの休みもいいものだな」
門兵は休日を謳歌するのであった。