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異世界転生者の為のスタントマン

作者: 雪月花

この物語はフィクションです。実在の異世界転生及び異世界転移、またはそれらに準ずるであろう全ての現象とは一切なんの関係もございません。その辺を理解した上でお読みいただく事を強くお勧め致しております。

田中くんはごく平凡な何処にでもいる中学生の男の子。目立ったところもないような田中くんはある日トラックに轢かれて死んでしまいました。

するとどうでしょう?田中くんは異世界転生をして元いた世界では考えられないような身体能力と世界をひっくり返すかもしれないチート能力を得たのです。


なーんて、都合の良い事が起こるわけもなく

異世界転生したところで田中くんのスペックは何も変わりませんでした。


「ではどうすれば田中くんは素敵な異世界ライフを送る事ができますか?」

そう訊かれて俺は答えた。

「はい、それは我々異世界スタントマンが田中くんの変わりに様々なアクションをこなしソレを見ている皆さんに、あたかも田中くんが凄いと思わせる事です」


そう。此処は無能な異世界転生者達の代わりに様々な事をこなす人材を教育する為の場所。『異世界スタントマン養成所』である。勿論転生者だけではなく異世界転移者のスタントも同時にこなせるようにしてくれる。



「それでは、そんな無能な異世界転生者達の為に我々が出来る事は何ですか?」

再び訊かれて俺は答える。

「はい。それは転生者の元いた世界の文化を知る事です」

「そうですね。ですがまだまだです」

講師が更に続ける

「いいですか、大切なのは流れです。流行です。最新の文化です」

「では、ソレは一体なんですか?」

そう訊かれて俺は答えた。

「スマホです」

「正解です」

「正解ですが、」

講師が俺の方を睨む。そしてこう続けた

「では何故貴方はスマホではなくガラケーを手にしているのですか?」


俺が今のこの世の中において未だにガラケーを使っている理由。それは

「スマホは何か色々と難しそうなので」

「それにガラケーですら使いこなせない俺にはスマホなんてとても」

俺はこの携帯電話と呼ばれる機械がどうも苦手だった。

手の平に収まるこんな小さなもので、通話やメール。ゲームにSNS。その他様々な事が出来るなんてそれこそチートではないだろうか?


「そんな事言っていてはいつまで経っても卒業出来ませんよ」

ハァと講師がため息をもらした。

「今日はこちらで貸し出しますから次までにちゃんと自分のスマホを用意してくださいね」

そう言って講師は俺に貸し出し用のスマホを渡してきた。


「えーとでは、スマホを使った授業を始めていきたいと思います」

「それでは皆さん此方のスクリーンに映し出された映像をご覧ください」


『はじめてでも分かる。スマホ講座』

部屋に取り付けられているスピーカーから綺麗な女性の声が流れてくる。

『みなさんこんにちは、今日はスマホを使った召喚魔法についての勉強をしていきましょう』


「はい、というわけで映像は以上となります。15分間の休憩の後、実技訓練を行います」


授業が終わり俺は荷物をまとめて部屋を出ようとした。しかしそこで

「貴方はちょっとコッチに来なさい」

講師が俺を呼んだ。

何事だろうと思い行ってみると講師は俺の、いや俺が借りているスマホを取り上げ何か操作を始めた。

「これでいいぞ」

そう言って渡されたスマホの画面に映し出されていたのはIseTubeイセチューブだった。

「これは?」

俺が訊くと

「貴方は少し他の人より遅れてるみたいだからコレを見て少し勉強しなさい」

動画の再生時間は約11分。実技場への移動時間も考えると、俺の貴重な休み時間は見事につぶれた。


休み時間が終わり、実技の授業が始まった。


「それじゃお前らスマホだせー」

先ほどまでとは違い今度はいかにも体育会系な感じの講師だった。

言われて生徒達は次々とスマホを取り出した。

「それじゃまずはストアに行って魔獣召喚アプリを落とせ」

言われるがままにアプリを落とし、授業は進んでいく


「じゃあまずは俺が手本を見せる」

そう言って体育会系講師はスマホの画面をタップした。

するとスマホから何やら音がなり、暫くして声が聴こえてきた。

「ただいま電波の届かないところにいるか、電源が切れている為」

「だー、くそ繋がんねーじゃねーか」

そう言って体育会系講師はスマホを地面に叩きつけた。

その後なんども色々なところにかけては繋がらないを繰り返し

「あ、もっしー。超久しぶりじゃーん」

やっと繋がった相手はとても軽いノリの小悪魔だった。


「えー、召喚魔法の実技授業とかマジヤバじゃーん。ソッコー行くからちょい待ちー」

電話の向こうの小悪魔は一方的に電話を切った。


「と、このようにアプリを通じて知り合った相手に連絡をして呼び出すのが俗に言う召喚魔法だ」

何事もなかったかのように体育会系講師は続けた

「それじゃまずは初回無料の10連ガチャを引いてみろ」

そう言われてみんな次々にガチャを引いていく

「よっしゃSレアゲット」

「美少女モンスターきたー」

喜びの声もあれば

「なんだよコレ、カスばっかじゃねーか」

落胆の声もあった。

そんな風にみんながガチャを引いている時にそれは起こった。


プップー。クラクションの音が聞こえソレは勢いよくこの敷地に突っ込んできた。

「おまたー」

誰かがトラックの運転席から降りてくる。聞き覚えのあるその声の主は先ほどの小悪魔だった。

「まって、召喚ってそういう風にくるの?」

「なんでトラック?」

生徒が次々に叫んだ。

「先生―」

ひとりの女子生徒が体育会系講師を呼んだ。

「おい、どうした」

「トラックに轢かれた人がいます」

見るとそこにはトラックに轢かれて今にも死にそうになっている生徒がいた。

「トラックに轢かれるとかチョーヤバイじゃーん。ウケルー」

轢いた本人に反省の色はなかった。

「こっちは異世界転生者を迎える側なんだよ。送り出してどうするんだー」

体育会系講師が叫んだ。


こうしてグダグダのまま実技の授業は終わった。


ハァ。帰り道俺はため息をついた。目の前には携帯ショップが見える。

俺はポケットからガラケーを取り出すと、携帯ショップとガラケーを交互に見比べた。

「他の仕事探すか」

俺はひとりそう呟くと、ガラケーをポケットにしまい込んで職業案内所へと足を運んだ。


設定思いついたけど、連載するのには少し難しい気がしたので今回短編として掲載しました。感想お待ちしております。

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