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#4 ウサギの捕食

「頑張らなきゃ……」


 それが気持ちの整理をつけたティアの第一声だった。

 トイレを出た時、意を決した顔つきをしていた。

 結局、逃げるのか、それとも、立ち向かうのか。

 ティアが向かったのは、洋館の裏口だった。

 外に出るということは、逃げるのか。

 それが正解だと思ったのだが、寮に戻る様子がない。

 向かったのは洋館裏にある広場で、さっきの教室に集っていた生徒が顔ぶれを合わせていた。


「アルテミシアさん、参加なさるのですか?」


 生徒の中心にいたのは、恰幅のいい女性だった。

 教授、だと思われる。

 どうやら、教える側にも制服があるようで、先の老人と似通ったアンティーク調のローブを着ていた。

 胸元の記章は教授の証か、眩しくキラキラしている。


「はい……」

「魔人形の用意ができているとは聞いておりませんが」

「こ、ここに」


 グッと、カバンの中から引っ張り出された。

 耳! 耳は掴まないで!


「あら。可愛らしい媒体を用いたのですね。見覚えのあるぬいぐるみですけど……実験用に作成した魔人形でしたら、参加はお勧めできませんよ」

「……に」


 ティアの声が上ずる。


「……人形祭で、繰る、予定、です……」

「そうでしたか。だとしても、能力は期待できそうにありませんね。再制作のお勧めはしておきますよ」

「……はい」


 恰幅いい女性は、爺さんとは違ってあっさりと興味を外した。

 またジロジロ見られるかと思ったのだが、もしかしたら、爺さんの趣味なのかもしれない。

 だが断じて、俺の方にそんな趣味はない。


 教授が話を始めると、ティアは俺をぎゅっと胸元で抱きしめた。

 こちらとしては、押し付けられる感覚を楽しむのはやぶさかではないのだが、手が震えてるのが直にわかるから、そんな気分にもなれない。


 不安なら逃げればいいのに。

 ったく。

 誰だよ、俺のご主人様をいじめるのはヨォ。


 首は動かせないから、目だけで相手を探したが……わかりやすい。

 ニヤニヤとこちらを見る女子グループがいた。

 うわぁ、いじめの香りがする……。


「それでは、今、お話しした通りに、二人一組で防水陣の実践をおこなってください」

「アルテミシアさん」


 教授の合図で、生徒らが各々に散り始めた中、女子グループの一人が真っ先に声をかけてきた。


 ティアに高圧的に迫ったのはこの子だ。声が同じだから分かる。

 この子も、それなりに可愛らしい女子だった。

 小柄で、強気な目つき。それと金髪ツインテール……ツンデレかどうかはわからない。

 生意気な小娘といった感じだ。

 おそらく彼女自身、自分の可愛さに気づいているタイプだ。


 しかし、俺はティアの方がタイプだ。


「このネル・グリーンフォールドがお相手しても?」


 にこやかに話しかけてくるが、その目が笑ってない。

 っで!

 いででででででッ!

 ティアさん、強く抱きしめないで!

 中の綿がずれて、体が歪む!


「……します……」


 かすかに頭をさげるティアさん。

 声が震えてるし、もういいんだと逃がしてやりたくなるわ、こんなの。

 見てるだけで可哀想になってくる。

 ネルといったか、小娘が空いてる場所を見つけて移動すると、ティアも肩を落としてついていく。


「それでは、私のリリィがお相手します」


 お互いに距離を開けて向き合う。

 で、リリィってのは俺と同じ魔人形のことなんだろうがどこにいるんだ……と探そうとした次の瞬間、空から何かが降ってきた。


 砂埃をわずかに舞い上がらせて姿を見せたのは、ドール人形とでも呼べそうな女の子だった。

 実際、元ドール人形なのだろう。

 無表情で、動きも不自然。

 明らかに生きた人間とは異なる空気を纏っていた。


 こいつがリリィ。

 腰に四本の長剣を下げ、背中にも二本の長剣を背負っている。

 ……な、なんかカッコいいぞ。


「さぁ、そんな風に抱きしめてると、アルテミシアさんが怪我しますわよ」


 自分を抱きしめる腕の力が抜ける。

 胸元から離されて、お互いに目線を合わせる。


「ごめんね」


 また謝る。

 そんな顔は見たくないのに。

 目をそらすとティアは、俺の体を地面の上に、そっと離した。

 今更だが、俺は何をさせられるんだ?

 実は状況がまったく読めていない。

 他の生徒らは何をしてるのだろうとチラと視線を向けて、言葉を失う。


 一人の生徒に、一体の人形が一緒にいた。

 そして、二人の生徒が一組になって向き合っている。

 そこは俺たちと同じだが……片方の人形が腕を振るうと周囲に水の塊が生まれて、相手めがけて襲いかかっていた。

 水の塊は、ぶつかる直前になって砕ける。

 砕けずに直撃を受けて、吹っ飛ぶ人形もいた。


 俺にもあれをやれ、というのか。

 痛そうなんだが。


「それでは、リリィに水撃の式を与えます」

「……」


 ネルの宣言に、ティアは頷くだけだった。

 その仕草に、どこか不満げな表情を浮かべるネル。

 おもむろに片目へと手のひらを当ててみせた。

 俺は置いてけぼりだ。

 向こうの生気にかけた魔人形は、何か思うところはないのだろうか。


「其が流れは、境外に通ず」


 何か急に唱え始めたけど……。


「……其が想いは、此を御す」


 遅れて、ティアも口を開いていた。

 響きとしては、ティアの方が澄んで耳に心地いい。

 ただし、呑気に聞き流している余裕はない。

 何が始まるんです?


「内なる熱を解き、爆ぜろ」

「流れは抑圧に屈し……え」


 ティアが驚きの声をあげていた。

 どうしたのだろう、と振り返ろうと思ったのだが……そのために跳ねようとした瞬間だった。

 リリィがこちらに手のひらを向けているのに気づいた。

 その動きは、他の人形がしているものと同じだが……。


 やばい。


 空気が破裂するのを見た。

 動けなかった。

 危険が迫っていると分かっていても、体が動かなかった。

 目前に炎の塊が迫っても……何かが視界を遮った。


「っ!」


 ティアだった。

 苦悶に歪む顔がそこにはあった。


「何をしているのですか!」


 教授の怒声。


「すみません、式を間違えて、しまって……」

「グリーンフォールドさん、あとで私のところに来なさい! アルテミシアさん、大丈夫ですか?」

「……はい」


 ティアが起き上がると、ずぶ濡れの地面が視界に入った。

 それはティアも例外ではない。

 何が起きたのか、未だに理解が追いつかない。


 ……ただ。


 教授に支えられて立ち上がる瞬間、赤く引きつった首元が見えた。

 火傷。

 ローブは耐火性でもあるのか、燃えていないが……むき出しの肌は直撃を受けたのだ。

 さっき自分を襲うはずだった炎を庇って、ティアが火傷した。


 どうして、火傷?

 俺を襲ったのが炎の塊だったからだ。

 どうして?

 他の生徒がやってるのは、水弾のぶつけ合いだ。


 わかってる。

 あの小娘、わざと、違うことをしやがった。


「ふーふー」


 うめき声が漏れた。

 自分では思い通りにならない口だが、感情に合わせて動くらしい。

 そんな発見は、今はどうでもいい。

 

 ……やられっぱなしで、引き下がれるわけがない。

 俺の可愛いご主人様に怪我を負わせやがって。

 舐めた真似しやがって。


 クソ女を睨む。

 俺の可愛らしいヌイグルミボディでは格好つかないだろうが。

 一歩、一歩、詰め寄る。


「フルル……?」


 大丈夫、ティアはそこで見てればいい。

 こんな体の俺に出来ることがあるかは分からないけど。

 立派な耳はある。


「あ、あんた、何の式を与えたのよ……!」


 クソ女が吠えていた。

 どうして吠える。

 どうしてそんな目で俺を見る。

 俺はただ、怒っているだけだ。


 間合いに入れただろうか。

 体に力を込める。

 どれだけの威力になるかも、距離を詰められるかも分からないが。


 一発でいい。


 体を跳ねさせた。

 ネルが慌てていた。


「いやっ!」


 腕で顔を庇おうとしていたが、遅い。

 弾丸とまではいかないが、体は跳ね飛んだ。

 空中で体をひねり、耳を振り上げ……叩きつける!


「ガァッ!」


 ネルの顔面を殴りつけるつもりだった。

 ティアは首に火傷を負ったんだ。

 これぐらい受け止めてもらわないと、気が済まなかった。


 手応えはあった。

 ……だが、間に割って入った奴がいた。

 俺がぶん殴っていたのは、リリィだった。

 体全体でぶつかって、リリィと一緒に地面へと衝突してしまう。


「ふーふー」


 痛……くはないんだな、これが。

 ぴょんと跳ねて起き上がると、地面に伸びたままのリリィがすぐ目の前にいた。


「リリィ……」


 ネルが腰を抜かして、地面に座り込んでいた。

 そこで見てろ。

 全部、テメェが舐めた真似をしたのが悪いんだ。


 テメェの人形は食われるんだ。


 そうだ。

 食ってしまえ。

 少し足りないが、餌に変わりはない。

 ちょうど、小腹が空いていたところだ。


 餌。


 俺の一撃が効いたのか、リリィは立ち上がれずにもがいていた。

 そうやって、這いずり回っていればいい。

 まずは二の腕からだ。

 ……いただきまうぐッ。


 体が動かなかった。

 なんで?

 異変も兆候もなかった。

 自慢の耳も動かそうとすると、何かに引っかかる。

 まるで縛り付けられているかのようだ。


「もしやと思って来てみれば」


 耳を掴まれた。

 持ち上げられると、俺を拘束した人物が視界に入った。

 目の前にいたのは、爺さん教授だった。

 鋭く恐ろしい顔で、自分を睨んでいた。

 その顔は怖い、やめてほしい。


「アサシネイルズ殿、どうしてこちらに」


 女性教授が驚いた顔で、駆け寄ってくる。

 おい、まだティアを治療してなかったのかよ。


「うむ。テオドールさん。この魔人形に用ができた。持ち主はアルテミシアさん。彼女を預かってもいいかな?」

「それはいいのですが、彼女は怪我を……」

「火傷、ですか。私の方で治療しておきましょう。行きますよ」



 ※ ※ ※



 耳を掴んだまま、爺さんは歩き出す。

 そのあとをずぶ濡れのティアがついて歩いていた。

 首の火傷が痛むのだろう、顔を歪ませていた。

 おい、クソジジイ、治療するっていうなら、早くしろ!

 こんな可愛い子を苦しませたまま放置するような、そんな腐れ外道趣味があるのか、ぶん殴るぞ!

 それにこのままだと風邪ひくだろうが、着替えさせろ!


 ……いくら息巻いたところで何もできないのだが。

 耳を掴まれては、俺も弱い。

 体を揺らすことはできても、それ以外にできることがない。

 あーもー、この体、どうにかならないかな。


「そこに座りなさい」


 やってきたのは洋館の地下だった。

 薄暗いし、陰気な爺さんにはお似合いの場所だ。

 そう思ったのだが、いざ入った部屋は小綺麗に片付けられていた。

 部屋の隅には精巧に作られた、可愛らしい小鳥の置物もあるし、シンプルにまとめられた趣味のいい個室だ。


 爺さんはティアに椅子を一つ勧めると、室内を横切って、隣の部屋に繋がる扉をノックしていた。

 扉が開くと、巨大な影がぬっと姿を見せた。


 テディーでベアーなぬいぐるみだった。

 ただ、三メートル近くはあるのではないか。

 部屋に収まりきっていない。


「ベア。アルテミシアさんにタオルと、首の治療を頼む」

「曖昧な式は受け取れないクマ。めんどいクマ」


 反抗的なぬいぐるみだった。

 中に人が入っているのかと見まごうほどの、滑らかな動きでぽりぽりと頬を掻いていた。

 しかし、ぬいぐるみの簡略化された手だ。

 指もないし関節もない。

 痒いところが、本当に掻けているのだろうか。


「……ん?」


 クマが爺さんの手に捕まったままの俺を見た。


「コスティ。その人形はクマ?」

「彼女の魔人形だ」


 椅子に腰掛けて所在無げにしていたティア。

 巨大クマに見られて、かすかに会釈をしていた。


「治療するクマ。コスティにやられると部屋が散らかるしクマ」


 何を思ったのか、爺さんの言うことを聞くらしい。

 それにしても、今の言い分だと、この部屋を整頓してるのはこの着ぐるみなのか。

 語尾が雑すぎて気になる存在だ。


「色々と聞かせてもらおうか」


 奥からタオルと薬箱を持ってきたクマが、のっぺらな手で器用にティアの濡れた髪を拭って、首の手当てをしていた。

 それと並行して爺さんはティアの前に腰掛けると、俺の耳を掴んだまま口を開いた。


「アルテミシアさん。君はこれが黒魔人形だと気づいていたね」

「……申し訳ありませんでした」


 ティアが謝った。

 今のどこに謝る要素があったのかはわからない。

 とにかく、また俺を置いてのやり取りだ。

 本当に勘弁してほしい。


「君は優秀な子だ。黒魔人形を見逃すはずがないと思っていたが……母からのプレゼントを媒体にしたことで、躊躇したのかね」

「……申し訳ありません」

「いやいい。君の入学理由を知っているから、少し驚いただけだ。アウラ君の救出は諦めたのかね」

「……」


 何も答えず、ただ俯いてその表情を隠してしまうティア。

 膝の上に揃えた手のひらが、強く握りしめられていた。


「コスティ」


 クマが口を挟んだ。


「できる範囲の治療は済ませたクマ。あとはクマがやるにしても、コスティの式が必要クマ。制服も濡れたまま。着替えはどうするクマ」

「其が望みを受けん。内なる眠りを誘い、治癒とせん」


 クマへの返事の代わりに、爺さんは呪文を口にする。

 唱え終わると不意に部屋が明るくなった。

 光源はティアの首、クマが手のひらを当てている首の後ろあたりからだった。

 温かい光はしばらくすると、やんだ。


「申し訳ないが、ここに着替えはない。タオルで上から拭くだけで我慢しなさい」

「後で風邪を引いたら、コスティに治療代を請求するクマ。首の方の治療は済んだクマよ。君は優秀な魔術師クマ。体は大事にするクマよ」


 やわらかそうな手でティアの頭をボンボン叩くと、タオルをティアに渡して奥の部屋へと戻っていった。

 扉が、バタン、と閉じる。

 ティアの首は……確かに、治癒しているように見えた。

 俺から見える範囲では、だが。


「……優秀なんかじゃ、ありません」


 ふと、ティアから苦しげな声が漏れた。


「母を救うことが私の願いでした。でも、私は……願いを叶えられるほど、優秀じゃ、なくて……」

「うむ。確かに。君の実力では窮王祭を勝ち抜くことはできんだろうな」


 窮王祭?

 人形祭はどこへ行った?


「だから、これで魔人形を作って、慰めとしたか」

「……」

「責めはせんさ。そう言う目的で魔人形に携わる者は少なくない。人形とは本来、そう言うものであろう」


 ティアの背中がどんどん丸くなっていく。

 責めないと言っても、この爺さんの物言いは厳しい。


「だが、残念には思う。君は優秀だ。アウラ君のように天才とまではいかないが、努力はできる。諦めなければ活路は見出せたであろう」

「……私には、無理です」

「そのようだな」


 嫌な空気だった。

 肩身を狭くして、辛そうにしているティア。

 期待に応えられなかった生徒に失望を向ける教授。


 もうあれだ。

 暴れるしかなかった。

 耳を掴まれて、できるのは体を揺することぐらいだが。


「む、また暴れだしたな。アルテミシアさん。黒魔人形がどう言うものかは知っているね」

「……はい」

「説明できるな?」

「魔力回路を開いた瞬間から特異の意思を持つ魔人形、です」

「それだけか」

「……持ち主の式に逆らい、魔人形を襲い……喰らうと読みました」

「模範解答だ。さて、その原因がどこにあるかは知ってるか?」

「……申し訳ありません」

「謝る必要はない。そこまでわかっているなら、黒魔人形が破棄されるのが一般的だと言うことも知っているな。つまり、こうして残存する黒魔人形は数が少ない。ゆえに研究例もまた少ないのだ」


 暴れていたら、いつの間に、講義が始まっていた。

 《黒魔人形》という、魔人形とは異なる人形の話をしているらしい。

 その特徴は、確かに、俺にも当てはまりそうだった。

 しかし、破棄される?

 ティアの様子からして、俺がその黒魔人形だと知っていたみたいだし、どうして破棄しなかったのだろう。

 ……破棄してほしい、というわけではないのだが疑問には思う。


「なぜ、黒魔人形が式を受け付けず、魔人形を襲い、しかもその媒体を喰らうのかは分かっていない」

「……そうだったん、ですか」


 どこか、ホッとした吐息が混ざっていた。


「このぬいぐるみに声帯を実装していれば、面白い話が聞けたかもしれんな」

「も、申し訳ありません」

「黒魔人形の発生を予想できる繰り師はおらん。本題に戻ろう。この黒魔人形はグリーンフォールドさんの魔人形を襲った。君はこれをどうするつもりだね」

「……それは」

「母親からのプレゼントだとしても、だ。これは危険だ。暴走されても困る。一生徒に任せる気にもなれん」

「……」

「もし破棄できんのなら、私が預ろう」

「……」


 爺さんの言葉に、ティアはただ黙りこくるばかりだった。

 確かに、俺は魔人形を襲った。

 でも、そのつもりはなかった。

 殴ろうと思ったのは、あのネルとか言う小娘の方で、あの魔人形が割り込んできたから、こう言う結果になった。


 ……もし、ネルの方をぶん殴ってたら、どうなってたんだ?

 魔人形を襲う、と言う話では済まなかったのではないか?

 まさか、繰り師とやらに逆らう人形は即解体、とかないよな……。


 と、とにかく、結果は結果として、俺は危険な魔人形にちがいない。

 残念だし、怖いが……ティアも破棄を選ぶにちがいない。


 そう覚悟はしたのだが、ティアの方に頷こうとする気配がなかった。

 じっと俯いて、耐えている。


「アルテミシアさん。君は次の魔人形制作に取り掛かりなさい」

「……っ」


 タオルを強く握りしめすぎて震えていた拳が、動きを止めた。


「今日は寮に帰って休みなさい」


 爺さんが立ち上がって、廊下への扉を開けた。

 ティアはタオルを椅子の上に置くと、力なく立ち上がっていた。

 そのまま、部屋を出て行こうとする。


 あ、あれ。

 俺、置いていかれるのか?

 この爺さんと暮らしていかないといけないのか。


 ティアなら、自分を庇ってくれると思ったのに。

 いや、俺はそれだけのことをしでかしたんだ。

 そう言うことだ。


 だから、ティアは何も言ってくれない。


 自業自得。

 ティアが選んだのなら、俺は甘んじて受け入れるしかなかった。

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