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虹ハピ(旧)  作者: 杠 捺月
7/10

ハーピーさんの名前

復活しました。

 「で、どんな名前がいいですかね。」

ララは何事もなかったようにハーピーに質問した。

「え、ちょっと、ララ?」

エインティアは慌ててララに掴みかかろうとして、固まった。

「貴女は黙っていて下さい。」

ララは最大限の笑顔でそういった。

エインティアは知っている。ララは怒るときにだけ目を細めて笑うことを。

そんなことは知らないハーピーさんは、

(仲良いなぁ・・・。)

などとほのぼのしていた。



 「さて、と。お名前、どうします?」

ララの問いにハーピーさんは困惑した。

名前を決める。しかも自分の。

(この二人の名前を聞くに外国人っぽい名前じゃないと変だよね?

ハーピーさんは考える。トム?ジェイソン?トーマス?

いや、これ全部男の人だ!えっと、バーバラ?

ハーピーさんは改めて自分の姿を見る。

セクシーな名前は似合わないよね。

じゃあ可愛い系で・・・みるきぃ?

・・・・・・絶対ないわ。

ピカチュ・・・ダメだ、ドラ・・・ロボだ。

名前を考えるのって大変だなぁ、私の両親はどんな意味で私の名前を・・・。

そうだ、外国では神話の神様とか英雄から名前を取るって言ってた気がする!)

「あの、神話のハーピーさんは何というお名前で・・・。」

「!そういえば、名前って。」

「えぇ、虹色のハーピーとしか・・・。」

エインティアとララは顔を見合わせた。

(ちょっと!?いや、なら私もそれでいいかな?)

ハーピーさんは提案する。

「なら私もそれで・・・」

「却下。」

堂々とエインティアは拒否した。

「今、私の父、先程貴女が訪れた街の領主が貴女を探しておりますわ。見つかれば即、貴女は王都に連れていかれ、王城でずっと崇められながら良いように使われますわよ。」

エインティアの言葉にハーピーさんは固まった。

「お嬢様、その言い方では色々と御幣があります。今の王は比較的良い方ですし、少なくとも衣食住は保証されます。というか、豪華なドレスに沢山のご馳走が保証されます。」

「ちょっと、ララ!」

ご馳走という言葉に反応したハーピーさんを見てエインティアは慌て出す。

「で、でも、一生孤独になりますわよ!ハーピー様とお友達なんて恐れ多いとか言われて!」

「孤独なら慣れてますけど・・・。」

中学に入るまで友達というものを知らず、慣れない人付き合いに疲弊して高校で再び一人を目指していたハーピーさんは一人というものに慣れ切っていた。

「お嬢様、貴女は何がしたいのですか。ハーピー様の人生を保証できるのですか?貴女はハーピー様とお友達になりたいとおっしゃられていましたが、どう考えても不可能です。ご自分と相手の立場、身分を考えて下さい。」

ララの言葉にエインティアは俯いた。

(えっと、何か険悪に、というかちょっとまって?友達?状況がわからないよ!)

ハーピーさんは混乱しながら質問する。

「私と友達になりたいのですか?」

「え、えぇ。」

慌てて返事をするエインティア。

「半分ホント、半分嘘ですね。」

ハーピーさんは真顔で堂々とそう言った。

「「えっ・・・。」」

「本当のことを話して下さい。」

二人が驚いているのを無視し、ハーピーさんはエインティアに真顔で迫った。

「私は嘘がわかります。」

堂々と言い放つ。

ハーピーさんには何故か見えていた。

食材の危険度同様、人間から出る謎のオーラ。

それはゴブリンと話しているときに気付いたものであった。

そして街から逃げ出したあと、自分のオーラを見ながら色々と確認していたのだ。

「私は・・・。あの家から逃げ出して、自由の身になりたかったのですわ。貴女を旅の道連れに、理由に、盾に、利用して・・・。」

ララは絶句し、その後俯いた。

エインティアもまた、絶望していた。ハーピーさんの有無を言わさない問い詰めについ本当のことを、ララの目の前で話してしまったことに。これで一生、私に自由はなくなったのだろう、と。更には神様の使いを冒涜したのである。もしかしたら、死ぬかもしれない、と。

だが、ハーピーさんには好印象だった。

それどころか、喜んでいた。

(旅!絶対、楽しい!!少なくとも崇められるよか遥かにマシ!しかもこの人凄い正直者だし!!)

ハーピーさんが疲れて嫌いになった友達付き合いとは、気遣い合う事だった。

常に相手に気を遣い、周りに合わせて振る舞う。それが、イジメを避けるコツでもあった。

変わっている人間は集団の中で標的になりやすい。

それを避けるには上に立つか、周りに合わせるか、圧倒的に変な人になって無視されるかの三択だ。



 「でも、なんで逃げようと?やっぱり領主様の家だと何かと厳しいのですか?」

怒ることもなく平然と聞き返す、それどころか少し嬉しそうなハーピーさんに二人は困惑した。

ララが口を開く。

「オーリストル家は二男六女。お嬢様は五女に位置します。」

うわっとハーピーさんは顔をしかめた。

「どうせ私なんて政略結婚の道具ですわよ。」

エインティアの悲しげな表情をみて、ララが呟く。

「私が純愛ものや冒険ものの物語を見せたり聞かせたりしたばっかりに・・・。」

(ん?それって戦犯ララさんじゃない?)

「私も恋ってものをしてみたいし、自由に青空の元を旅したいのに。」

「お嬢様の秘密の魔法訓練を手伝ったり、屋敷の抜け出しを援助したのがいけなかったのでしょうか。」

(ララさんのせいだよね!絶対、絶対ララさんのせいだよ!!)

「純愛はフィクションだと何度も言っているでしょう。平民の婚姻は大体親が決めるものですよ!」

「でも、冒険・・・。」

「それこそ一般人だって出来ないことですし、明日の食事への不安に怯えながら寒空の下、土の上で眠らなければならないのですよ。」

「・・・それでも!」

ハーピーさんは理解した。

エインティアはお転婆さんなのだ、と。

(おてんばって漢字で書くと婆さんみたいにみえるね。)

ハーピーさんは決心した。

「私は別に構いませんよ。お友達になることも、旅することも。」

ここは学校ではないし、エインティアは正直な人だ。

何より、王城は最悪だ。

(やっと始まる?私の異世界生活!)

「駄目ですわよ、ララに聞かれてしまいましたもの。」

「え・・・。」

(あ、そっか、ララさんはメイドさんか。そりゃあ許してくれるわけもないか。)

ハーピーさんはため息をついた。

「確かにローゲン様を言い包めるのは無理ですね。あの方は家庭を持つことこそが女の幸せと考えてる方ですし、というかそれが世間一般の考え方ですしね。」

(流石、何か中世っぽい。)

「そういうのに疲れた方が冒険者になるのですが、流石に許しては貰えないでしょうね。」

ララの言い方に二人は違和感を覚えていた。

「いっそのこと置手紙に、いや、死んだことに、いや、それも厳しいかな?ですが、お嬢様は何も心配することはございません。このメイド、ララにお任せを。」

「「え!?」」

「い、いや、ララ、正気?そんなことしたら一番ヤバいのはララよ?最悪本当の意味で首が飛ぶわよ!?」

ララはにこりと微笑んだ。

「人生は一度きりなんですよ?したいと思ったことはすべきです。私はローゲン様にとんでもなく大きな恩がありますが・・・あ、今になって決意が揺らいできました。お嬢様やはり今の話は無しで・・・。」

「そんなわけにはいかないですわ!ララには大きな恩がありますけども、うっ・・・。」

二人とも、恩で決意が揺らぎまくっていた。

だが、このまま今の話が無くなっては困るハーピーさんは・・・

(どどど、ど~しよ~!?ど、どうすれば一緒に旅してくれるかな!?かっ、神様の命令とか言って旅してもらう?で、でも友達に神様権限使って命令とかそれ友達!?)

ただただ混乱していたのだった。


 

 「「「やっぱり旅、しましょう!」」」 

三人の声が重なった。

互いに驚き、笑いあう。

「ローゲン様への対処は私が行います。それと、旅をするのであれば国境を越えるために身分証が必要となります。一番手頃に作れるのは冒険者ギルドのギルドカードでしょうが、これが最初の関門となるでしょう。」

(車の免許証みたいな感じかな?)

ハーピーさんの考えは甘かった。

一般人ならば、車の免許を取る以上に冒険者になる方が遥かに簡単だ。

実力を示し、それに見合ったランクの冒険者になるだけなのだ。

問題になるのは責任の所在だ。

交通事故を起こした場合、責任は事故を起こした個人のものだ。

だが、ギルドカードを持つものの不祥事による責任はギルドのものでもある。

この世界の一般人は住民カードや商業ギルドなどのカードを持っているので、態々冒険者ギルドのカードを必要としない。冒険者は訳ありの人がなる危険な職業だ。だからこそ、冒険者は大きな不祥事は起こさないし、起こせないのだ。起こした場合、行き場が無くなるのだから。



 「ギルドカードは欲しいが冒険者はやらずに身分証に使います、なんて人間にギルドがカードを作る理由がありません。先ず、そこの口裏を合わせましょう。この街のギルドマスターはしっかり者の女性です。」

「え、女の人!?基本ギルマスって・・・。」

エインティアは驚いた。

「えぇ、どうやら前のギルマスが不祥事をして解任されたときにギルド職員の男性は皆グルだったらしく、女性しか残らなかったのが原因らしいです。それで、特例として最も働き者で実力があり、冒険者や街の人達からも推薦されていたセリアという女性がギルマスになったそうです。」

「そ、そんな人がギルドカードを作ってくれますかね。」

「かなりの堅物らしいので、本当にそれが最初にして最大の関門ですね。」

最初から難易度が高すぎるミッションだ。

「と、取り敢えずさ、私達、まだろくに自己紹介もしてないし、そこからじゃない?」

エインティアが提案する。

「そうですね、では、私はララ、元、オーリストル家のメイドです。二十代です。知識量だけでいうとこの世界で5本の指に入る自信があります。」

元、といったのは、もう決意は固めたからであった。

ララは銀髪ショートにメイド服、胸は小さめ、ナイフを携帯している。

(背、高いなぁ。170超えてる?)

ハーピーさんは顔を見るのに見上げる形となった。


「じゃ、私ね。私は元、エインティア・オーリストル。今はただのエインティア。エインでいいわ。十六歳、得意魔法属性は火、水、風よ!よろしくですわ。」

エインティアはツインドリル気味ツインテールの金髪で・・・

(あれ?胸の膨らみが見当たらない?)

「もしかして男せ・・・」

「女よ!何?まな板とでも言いたいわけ!?」

胸を気にしていた。


「わ、私はハーピーで、歳?はわかりません。魔法は一応使えることは使えますが使えません。」

「どっちよ!」

ハーピーさんの羽根や毛、爪は全て虹色で、ももは太く、下半身は鳥のものだ。

髪はボブカットであった。背はエインティアよりやや低いが、胸は下着が必要な程度にはあった。

(ただでさえ翼のせいで肩がこるのに巨乳じゃなくてよかったよ。)

胸が普通サイズなのは神様の唯一無二の善意と、ハーピーさんは勝手に解釈した。


 「さて、と。問題は私とおじょ、いや、エインさ・・・エインの苗字とハーピーさんの個人情報の全てですね。」

旅に出るということは、貴族として振る舞えなくなるということ。

呼び捨てされたエインティアは満更でもなさそうだ。

「ララは本名じゃないの?」

ララは首を振る。

「私はローゲン様に救われ、ララという名前を頂いたのです。」

そして、笑った。

「それでも、ずっとローゲン様の元にいる気はなかったですし、これは私への・・・。」

そこで言葉を濁した。

「兎にも角にも、私はララですから。」

「分かってるわ。貴女が訳ありなことくらいは。」

ハーピーさんはそこに、謎の鬱陶しくない気遣いを見た。

(これが・・・本当の友達っていうのかな?それとも、親友?)

そして、それを少し羨ましく思った。


 「私の名はイリスです。歳は、取り敢えず十五歳にしときます。三人で素敵な苗字、考えましょう!」

唐突に、ハーピーさん、イリスは口を開いた。

安直にも虹の女神の名前をそのまま使った。

驚いている二人に、イリスは微笑んだ。








「え、ハピ男じゃないの?」


バシッ!


ララの一撃でエインティアは倒れた。

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