5話 夢
説明回です。
「....勝君!忠勝君!」
誰かに呼ばれているのが聞こえる。もう朝なのかと思って忠勝が目を開けるとそこは真っ白な空間だった。どこか既視感を覚える...というか昨日も同じように目を覚ましていた。
「起きたかい忠勝君、昨日ぶりだね」
昨日と同じ空間に昨日と同じイケメン、アベルが立っていた。
「?神様?なんで...?」
「ああそうだよ。これは君の世界で言う、夢枕に立つってやつだよ。つまりここは君の夢の中だ」
「そうなんですか。...それでなんで今回は夢の中に?」
「ああ、そうだ。実はね.....」
アベルが言うには忠勝達を最後に転移させたときに下級の神が悪戯をしたらしい。
その悪戯とは忠勝達転移者を他の姿に変えるというものだ。
姿を戻そうにも地上に送ってからではすでに遅く戻すことができないという。
悪戯をした神は神界を追放され、教国にあるダンジョンの最奥に幽閉されたそうだ。なんでも、ダンジョンの奥地には神の力を抑える空間があるらしい。それに、ダンジョンの最奥は普通の人間がクリアできるような難易度ではないので安心だという。
そこまで聞いたところで忠勝は気になっていたことを聞いてみる。
「それで、俺はどんな姿になってるんですか?」
「ああ、それはね」
アベルは答えながら、何処からか大きな鏡を取り出して見せてくる。そこには、年は18〜20ほど、赤髪の短髪、身長180cmほど、少し鋭い眼が特徴のイケメンが映っていた。
これは...嬉しい変化だった。
こんなにカッコよくなるなら追放された神に申し訳ないくらいだ。と忠勝が考えていると...
「いや、君はラッキーだよ。転移者の中には性別が逆になった子までいるんだから」
いきなり不穏な言葉をぶち込んでくる。しかし、それを聞くと自分はなんてラッキーなんだと思えてくる。
「....ですよね。ラッキーですよ。イケメンになれたし、これでモテモテですね」
「そうだよ。姿どころか種族まで変わる中でその姿だからね!」
さらに不穏な言葉をぶち込んでくるアベル。
「つまり、ゴブリンになるなんて可能性もあったと?」
「あー、さすがに魔物にはならないよ。まぁ、ある意味悪い話じゃないよね。こっちの世界の容姿のほうが馴染みやすいだろうしさ」
忠勝は魔物にはならないと聞いて安堵する。他の転移者達がどのような姿になっているかはわからないが、忠勝にとっては良い変化だった。
「さ、とりあえずこれで説明は終わりだけど朝までまだ時間があるね.....。何か質問はないかな?答えられる範囲でなら答えるけど?」
と言われ忠勝は質問を考えると、そこでキャンディのことを思い出し聞いてみる。
「魔法ってどんなものなんですか?」
「あー、んー、そうだねー。まずはスキルの説明からしようか......」
説明によれば、スキルとは人の持つ能力を言葉にしたものらしい。
スキルには大きく分けて3種類あり、まず装備スキルは特定の種類の装備を装備することで発動するスキルで『剣術lv1』や『槍術lv3』といったように装備に対する熟練度のようなものだという。
次に気力を消費して発動するスキル。これが一般にスキルといわれるものだ。忠勝の『突進』などがこれに当たる。
最後に魔力を消費して発動するスキル。これは魔法といわれる。魔法はスキルとしては『火魔法』や『水魔法』のように大まかな括りとなっているが、想像力や込める魔力量によって形を変えるためそれぞれにオリジナルの名前をつけるなど自由度が高いそうだ。
これらとは別に特定の種族が持つ種族スキルというものまであるらしい。
ここまで説明を受けて改めて質問する。
「魔力とか気力の総量ってどうやったら増やせるんですか?」
「ああ、それは筋肉と同じで使って休むの繰り返しだね。まぁこれは上昇量や限界値がその人の才能依存なんだけど...」
アベルの答えを聞いた忠勝は、キャンディの特訓法を考える。キャンディの才能がどれほどのものかわからないが....
しかし、
「それなら俺は無限に強くなれそうですね」
「?」
忠勝には『不屈の男』がある。鍛える限りは上限無く強くなれるのだ。
「....お前いや忠勝君は『不屈の男』を持ってるんだね...」
アベルはどこか悲しそうな顔で呟いた。
どうやら神と言えど他人のステータスがわかるわけではないらしい。
神様も万能ではないということか....
「....これでだいたい説明は終わったね。そろそろ帰らせてもらうよ」
「え?」
アベルがいきなり告げたかと思うと、姿が消えていく。
アベルの姿が消えた後、取り残された忠勝はどうしたらいいのかわからず、目が覚めるのを待つことになった。
少し短めですが更新しました。
説明回となります。
これからもよろしくお願いします