目覚め
目が覚めると忠勝は真っ白な空間で横になっていた。寝ぼけているのかと目をこすりもう一度見るが変わらない。遠近感がつかめず、どれだけの広さなのかもわからない。
立ち上がり横を見ると、
「やぁ、忠勝くん。目が覚めたかい」
男が座っていた。
男は銀髪碧眼の細身でかなりのイケメンだ。20歳ほどだろうか、白い布を体に纏ったような服装をしており、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。
もちろん忠勝にはこんな外国人の知り合いの心当たりはない。
だが、この男は自分を知っている。そのことに疑問を感じつつ忠勝は男に話しかけた。
「あのあなたは誰ですか?」
初対面であっても誰ですか?などと聞くことは失礼だと言うのは忠勝にもわかっている。が何もわからない状況で知らない男と会話するには忠勝のコミュ力は低すぎた。
相手が20歳ほどの見た目で年下に見えたことも失礼な態度をとれた理由だ。
「ああ、私はアベル。神様さ」
「.......」
男の突然の神様発言に空気が固まる。
「...信じてないね?」
初対面の人にいきなり「私は神様です」などと言われて信じる馬鹿がどれだけいるだろうか。少なくとも忠勝は馬鹿ではなかった。
信じてはいなかったが、日本人故だろうか自称神の言葉に対し「はい」とは答えられない。
「.....まぁ、君の世界じゃ神様の力は希薄だからね。信じられないのも無理はない。....よし、それなら証拠を見せよう!」
「はい?」
「だから、信じられないなら見せてあげるよ。神の力をね」
と言うと男は指を一本出し指の先に火を灯し、どうだ!と言いたそうな顔で見ている。
....しょぼい手品だ。というのが忠勝の正直な感想だった。
忠勝の訝しむような視線に気づいたのか自称神は慌てて、
「ま、まだだよ!」
火を大きくした。30cm程噴きあがったところで丸まり火の玉になっていく。
これには忠勝も目を丸くした。神様と言うのは嘘ではないのか?と思ってしまう。
「これでわかったかな?改めて私は神、アベルだ」
「はぁ、神様?....ここはどこですか?」
まだ神様と信じきれず曖昧に返事をしつつ周りを見渡し思い出す。自分が普通では考えられないような白く広い空間に、ある種神秘的な空間にいることをだ。
見知らぬ神様に気を取られてしまったが、状況をつかむことが必要と考え、男に質問する。
「ここは神界にある私の部屋だよ」
「神様の部屋?」
神の部屋と聞かされもう一度見渡すが、殺風景と言えるほどに何もなくただ白い空間が広がっている。祭壇もなければ王座もない。
「.......神様の部屋に何故俺を?」
忠勝にとって当然の疑問だった。一市民どころか1モブだと自分を評価する忠勝には自分が神の部屋に連れてこられる意味など思い当たらない。
...いや、実際は(ラノベ等を嗜む忠勝)にはなんとなくわかっていた。だがその予感を忠勝の考え方がただの願望だと切り捨てる。
(俺はモブだ、主人公じゃない)
しかしその考えは、
「忠勝君には私達の世界に来てほしくてね。...魔王を倒すために」
今までの人生で作り上げた、作り上げられた考えは神の一言で崩れた。
よんでいただきありがとうございます。
更新はゆっくりですが、お付き合いください