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【書籍化】ヴェルシュタイン公爵の再誕〜オジサマとか聞いてない。〜【Web版】  作者: 藤 都斗


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遅くなりましたすみません。(´・ω・`)

 





 燃えてる。


 今が夕方で、夕陽が当たってそんな風に見えてるのかと思ったけど、違う。


 だって、外、青空だもん。


 いやいやいやいや待って待って待って、なんで燃えてるの。


 窓枠燃えるって何があったらそうなるの。

 ガラスが(いぶ)されてちょっと黒くなってるんですけど、なにこれ、突然火事って本当にどういう事なの。


 誰かに魔法使われたとか?、え、そんなのオーギュストさんのスペックなら気付きそうなもんだけど、書類に集中し過ぎて気付かなかったんだろうか。


 ていうかこんなんなってるのに執事さん達どこ行ったの?

 外に現れたこんな事した奴の対応でもしてたとか?

 とりあえず、こんな事する奴絶対面倒な奴だから、皆無傷で生還するようにそういう魔法掛けたい。

 でもどうしたらいいか分かんないから祈っておこう、皆無事であれ!!


 頭の中はパニックで、何が何だか分からないけど、でも今はそんな事をつらつらと考えてる場合じゃない事だけは分かった。


 急いで席を立って、部屋を出る。


 やっぱり窓の向こうは燃えていて、余計に焦った。


 慌てて外への扉の内側の鍵を開けてから、そのまま外へ足を踏み出す。

 絶対外になんか出ないって思ってたけど、これは仕方ないと思う。


 とりあえず消火活動だ。


 馬車から降りた足でそのまま振り返って、馬車全体をざっと観察。


 ...見事に火達磨である。


 オーギュストさんスペック高過ぎて熱気なんてひとつも感じないけど、木が燃える独特の香りが漂ってるので絶対燃えてる。

 こんだけ燃えてたらドアノブとかめっちゃ熱かった筈なのに、全く熱くなかった。

 オーギュストさんのスペックが凄いだけですよね、分かりたくないです。


 だけど、オーギュストさんの、この超スーパーな感覚的には、馬車は表面だけ燃えてる気がした。

 どうやら、馬車に掛けられていた魔法のお陰でか、最小限で済んでいるようである。

 だけど、それも時間の問題だろう。


 ...この炎、やっぱり魔法のようだから。


 放っておけば、この超絶高性能な馬車さえも、いずれ消し炭になるだろう。

 という訳で、オーギュストさんの知識から、一番安全な方法で消火活動開始である。


 どうやら、魔法の炎という物は、魔法の水などで相殺させるのが常識らしい。

 が、オーギュストさんのスペックでそんな事したら馬車が木っ端微塵になるので、別の方法。


 ...これが魔法って事は、酸素の代わりに燃えてるものがある筈だ。


 どういう原理か全く不明だけど、多分、あの魔素って不思議物質を使ってるんだろう。

 という事は、燃やす元になってる魔素とやらを霧散させれば、この炎は消える筈。

 どうやればそう出来るのか、説明なんて一切出来ないけど、感覚的には出来る気がした。

 何度でも言うけど、オーギュストさんのスペック凄いよね。


 まぁとりあえず、やるだけやってみよう!


 瞬時にそこまで考えて、何か動きっていうか、行動するモーションが必要だろうと判断して片手を上げる。

 消す事自体は、前に、お屋敷の運動場っぽい所で出した武器やら魔法やらを消した時みたいな、あんな感じで行ける、筈。


 いや、でもちょっと待って、こういう時って基本的にどういう動きしとけば良いの。


 えーと、あかん、もうコレしか浮かばない。

 マジシャンが良くやるやつ。


 なんだっけこれ、指をこう、カスタネットみたいに鳴らすやつ、なんて言うのこれ?

 やった事ないけど鳴るかな?鳴るよね?オーギュストさんの身体だし、出来るよね?

 いや、今はそんな事考えてる場合じゃない、やるならとっととやろう。


 よし、行くぞ!


 グッと、親指に中指をくっつけるように力を込める。

 ここからどうしたらいいのかよく分からないんだけど、どうしよう。


 とりあえず力を込め続けていたら、ふと、親指が外側へと、力で押し負けるみたいに外れて、思っていたよりも甲高い、パチン!という音が響き渡った。


 これ、こんな音するんだね。

 ていうか、鳴ったよ、鳴ったね。

 鳴るもんなんだね、めっちゃ見様見真似の適当にやったのに。

 オーギュストさんマジパネェっす。


 そんな事を考えながらも、この音が鳴ったら燃えてる魔素が消える、とイメージしてたお陰でか、目の前で燃え盛っていた炎が一瞬で消えてしまって、なんていうか、うん、何度も思ってしまうけど、オーギュストさんは凄いなあと思いました。


 ついでにさ、もっかい鳴らしたら、この黒焦げの馬車が元に戻ったりしないかな、しないよね、したら良いなあ。

 だって、こんな状態でオーギュストさんの実家帰るとか無理じゃん。

 ていうか、一応家宝だからこれ、勿体なさすぎるんだよ、直ってくれないかなマジで。

 なんて、ただの願望を考えながら、もう一度指を鳴らしてみる為に中指に力を込めた。


 すると一度でコツを掴んだのか、さっきよりもスムーズに音が鳴ってくれた。

 辺りにまた、パチン!という小気味の良い音が響く。


 馬車が直った。


 ............馬車、直った。


 いや、うん、マジで直ったよ、なんでもアリだな、魔法って。

 なんか、時間が戻されるみたいな感じで、しゅわーって直ってったよ。

 凄いね。


 まあ、絵本の魔法使いも、ドレスを綺麗にしたり、カボチャを馬車にしたりしてるんだから、オーギュストさんもそのくらい出来て当たり前なんだろう。


 さっきからオーギュストさんの知識から、通常有り得ないとか出てるけど気にしない!!

 気にしてたら身が持たない!!


 ていうか、そんな事よりも誰だよ!ウチの馬車燃やしたの!

 家宝なんだから早々燃えないように出来てるのに、それが燃えるくらいの勢いで魔法ぶっぱなすとか、どんな馬鹿だよ!

 こちとら公爵家当主だぞ!!首と胴がサヨナラしたいヤツはどいつだ!


 怖い現実から目を逸らす為、もとい頭を切り替える為にそんな事を考えながら振り返って、視界いっぱいに入ったソレに、私はつい、固まってしまった。


 『人間、貴様一体何をした!私の炎を消すなど、只者では無いな!?』


 ぐがるるおおお、みたいな、なんとも言えない鳴き声なのに、なんかそんな事を喋ってる薄青い色の、2tトラックくらいの大きさの恐竜が居た。

 プテラノドンと、ティラノサウルスを足して割ったみたいな、変な恐竜。


 なんで恐竜がこんな所で喋ってんの。


 呆然と眺める私の頭の中のオーギュストさんの知識が、これは恐竜じゃなくてドラゴンだと告げた事で、ようやく現実を理解した。


 ドラゴンって、あれだよね、絵本に出て来る怪物だよね?


 いやいやいや、だからなんでそんなのがこんな所に居るの。


 『さては貴様だな!?私達の大切な卵を盗んだのは!!』

 「一体何の話だ」


 『しらばっくれても無駄だ!!卵を返せ!!』


 聞き返したけど、話を聞いてくれませんでした。


 いや、だからマジで何の話ですか。

 え、何?卵、盗まれたの?


 考えてたら、目の前のドラゴン?の口から炎が噴射された。

 ごおお、という凄い音がするんだけど、全く怖くない。


 熱くもなければ痒くもないけど、視界が遮られて鬱陶しい。

 とりあえず、片手でぺいぺいっと払ったら掻き消えてくれたので、オーギュストさんのスペックは物凄いんだなあと思いました。


 何回目だコレ思うの。


 遠い目をしてしまいそうになったのは仕方ないと思うんだ。


 ていうかさ、初対面の人相手に失礼だよね、このドラゴン。


 「こちらの話も聞かずに火を吹くんじゃない、全く、親の顔を見てみたいものだ」

 『貴様、私を馬鹿にしているのか!!』


 嫌味を発したら中身の無い反論が返ってきました。


 でも、ぐがるおおお、とか喚かないで下さい、うるさいから。

 ていうか、ついでとばかりに火を吹かないでよ鬱陶しい。

 辺りに飛び火したらどうすんの、私が消火活動しなきゃいけなくなるでしょ、全く。


 また片手でぺいぺいっと火を払いながら、溜息を吐く。


 「現実的に、君は馬鹿だろう」

 『何だと!?』


 「四六時中、卵から目を離さなければ良いだけでは無いのか?何故それが出来ない?」

 『わた、私達だとて、それが一番な事は分かっている!!だが、産まれるまで一年中など、無理に決まってるだろう!!』


 冷静にツッコミを入れたら、なんかぎゃおぎゃお反論されてしまった。

 しかし、喚くたびに火が出るのはそういう仕様なんだろうか?、普段どうやって生活してるんだろう、このドラゴン。


 でも、孵化まで一年か、それはちょっと長い、のかな?

 でも人間も十月十日だからなあ、似たようなもんじゃね?


 ていうかさ。


 「夫婦で交代しつつ見守れば良かろう」

 『飽きるじゃないか!!』


 あ、駄目だコイツ。


 ぐおおお!じゃないよ、そんな断言すんな。

 大切なら大事に見守りなさいよ、途中で飽きんな。

 親失格だろソレ。


 『そんな事はどうでもいい!!私達の卵を返せ!!人間め!!』


 だから文句言いながら火を吹くなっつーの。


 また片手でぺいぺいっと火を払いながら、二度目の溜息を吐く。

 幸せが逃げるからあんまり吐きたくないけど、なんかもうどうしようも無かった。


 「...それで、何故私達が疑われているのだね?」

 『私は卵の安全の為に、ワイバーンの巣に卵を隠した!!』


 よっぽど説明したかったんだろうか。

 なんだか、人間だったらドヤ顔してそうな感じである。

 効果音を付けるなら、ドーン!とか、デーン!みたいな感じ。


 そんなドラゴンは、犯人を前にした探偵が、自分の推理を説明する時みたいな自信たっぷり具合で、偉そうに堂々と語り始めた。


 『そんな場所に入って卵を盗む事が出来るような生き物は、ドラゴン以外には人間しか居ない!!証拠に、小さい足跡が散らばっていた!』


 「...それで?」


 『つまり人間!!貴様だ!!』


 堂々と、偉そうに、間違った推理をされた挙句、何故か犯人に仕立て上げられてしまった。


 「貴様、よほど頭が悪いらしいな」


 『なんだと!?』


 「人間が、この世界に一体どれほど存在していると思っている?」

 『ふふん、有象無象がどれほど居るかは知らんが、貴様程の実力者でなければワイバーンの巣から卵を盗むなど出来まい。

 故に、貴様なのだよ馬鹿め!!』


 めちゃくちゃドヤ顔してそうな返答してる所申し訳ありませんが、一個いいかな。


 馬鹿はお前だよ。


 何をキリッとカッコつけてんだよ馬鹿か。


 いや、ホントにそんな表情してんのか爬虫類だからイマイチ分かんないけどこれ絶対してると思う。


 ...あー、これ、ダメだ。

 魔力偽装してるのがアダになったパターンだ。

 なんか知らんけど中途半端に隠されてるから、自分よりも弱いと判断されたんだろう。


 これ、どうやったら解除出来るのかな、そっちが早い気がするんだけど、方法が不明である。

 なんせ、普段から隠蔽してるなんて無自覚だからね。

 どうなってるんだろうね、このオーギュストさんのスペック。


 そんな事を考えながら、コイツ頭悪いなー、と思ってたらそのままそれが台詞として出ていってしまった。


 「馬鹿ではなく、阿呆だったか」

 『貴様...!まだ言うか...!』


 ぐるるる、という唸り声で、失言をしてしまった事を理解した私。


 やっちまったぜ!


 内心でそんなアホみたいな事考えながら、ちょっと焦る。


 もしかしてオーギュストさんって、思った事そのままちょいちょい口に出しちゃう癖でもあるの?と若干戦々恐々としてしまったけど、言っちゃったものはもう取り返しがつかない訳で。


 うん、まあいいや、いや、良くないけど良いって事にしよう。

 そんな事よりもこのドラゴンをなんとかしなきゃ。


 「では聞こう、私が卵を盗む理由は?」

 『矮小な人間の矮小な理由など、知った事か!!』


 ひでぇ言われようだな。


 『貴様ら人間は意味も無く私達ドラゴンを殺す事があるだろうが!!』

 「ふむ、意味はあると言っても聞かんか」


 意味無く殺したりはしないと思うんだよね、何かしらの理由がある筈だよ、人間側にも。


 ちなみに、オーギュストさんの知識では、ドラゴンってこの国を囲む山に住んでいて、しかもたまに発生する魔獣を倒してくれる益獣なので、意味も無く戦いを挑む人間は少ないらしい。


 そういう事するのは、他国から来たよっぽどの馬鹿達か、...よっぽど誰かを救いたいかだ。

 古来より、ドラゴンの血肉は万病の薬になると言われているし、皮や鱗もめちゃくちゃ丈夫で極上の素材。

 ものすごいお金になる。


 つまりはそういう事なのだが、...まあ、よく考えなくても人間側のエゴなんだろうなぁ。


 『人間の言葉など耳を傾ける価値もない!!』


 やっぱり、私の言葉なんて聞く気が無いらしい。

 ぐがるるおおお!!という唸り声だか鳴き声だか不明な音を発しながら、ドラゴンが後ろを向いた。

 すると、尻尾が鞭のようにしなりながら、私の身体の側面へと叩き付けられる。


 まあ、そうだよね、後ろ向いたら尻尾が来るよね。

 衝撃で轟音と土煙が上がって、視界が悪くなった。


 でも、私にとっては、クッションが投げ付けられたくらいの衝撃しかなかった。


 何コレ。


 とか思ってたら、なんか知らんけど小さな風の精霊達がやって来て、私の周りをくるくる回り始めた。


 『ねえねえなにしてるのー?』

 『あそんでるのー?』

 『たのしいー?』


 いやいやいや、遊んでる訳じゃないよ、ていうかちょっと待って、なんでわざわざ今来たの君達。

 私めっちゃ尻尾攻撃されてたよね?


 そんな私の気持ちを察してか、きゃっきゃと笑いながら、精霊達が宣う。


 『わたしたちねー、ひまなのー!』

 『なのー!』


 「そうかね。」


 そっか、ひまなのか、それは仕方ないね。

 でもね、今ちょっと忙しいから、あっち行っててくれないかな。


 『あそぶー?』

 『あのトカゲとあそぶー?』


 どうやら、どっかいって欲しいという気持ちの方は察してくれなかったらしい。

 私の周りをくるくると回りながら楽しそうに笑う精霊達。


 可愛いから許す。


 ていうか精霊にトカゲとか言われてるぞドラゴン。


 まあとりあえず、視界が悪いので精霊に魔力と引き換えに何とかしてもらおうと思います。

 そしたら多分帰るでしょ、この子達。


 「君達、すまないが、風でこの砂を払ってくれないか」

 『いいよー!』

 『ついでにあのトカゲやっちゃうー?』


 「それは大丈夫だ」


 こんなちっちゃい子達にやってもらうのは気が引けるので、却下です。

 そっちは私が頑張ってやるんで、気にしないで下さい。


 一体何をどうすりゃ良いのかさっぱりだけど、こうなったら仕方がないと思う。

 だって、先に手を出して来たのはあっちの方なんだから。


 私が卵を盗む理由なんてないし、むしろ意味が無いって事を分からせる為に


 「...実力の差を、理解させてやらなくてはな」


 そんな事を言っていたら、ブワッと風が吹いて、土煙が吹き飛ばされた。


 精霊達のお陰で視界が良くなったようである。


 魔力、ホントに持ってったのかな、減った気がしないんだけど。


 『ふはは!そう来なくてはな!!』


 全くの無傷な私の姿を見てか、ドラゴンが何故か楽しそうに笑う。


 いや、なんで喜んでるんだよコイツ。

 やだわー、今から私をフルボッコに出来るとか思ってんのかな。

 全く怖く感じないし、全く痛くなかったから、多分コイツ私より弱いんだけどな。


 見た目めっちゃ怖い筈なのに、なんでこんなに怖くないんだろう。

 なんか、トカゲとかそういう小さい爬虫類を相手してる気分なんだけど。


 まあ、そんな事はどうでもいい。


 『では、これならどうだ!?』


 なんか楽しそうな声と共に、今までよりも強い炎がドラゴンの口から噴射された。

 その証拠に、炎の色が少しだけ青い。


 一瞬、さすがにこれは私も燃えちゃうかとビビって内心身構えてしまったけど、実際どれだけ炎を被っても全くそんな事も無くて、...なんか逆に怖くなった。


 『ふはははは!どうだ!手も足も出まい!!』


 ドラゴンの、そんな無駄に楽しそうな発言に、なんかイラッとした。


 「...躾が必要なようだな」


 イラッとした気持ちをそのまま台詞として口に出しながら、一歩、足を踏み出す。


 『はっ、苦し紛れか?無様だな、人間』


 踏み出した足を軸に地面を蹴って、炎をそのまま突っ切り、前へと出る。


 『へ?』


 前へ出る為に踏ん張った分だけ、それが跳躍力となって発揮されてしまったのか、ドラゴンの目の前に出た私の身体は空中にあった。


 さすがに無傷で向かって来るなど思ってもいなかったのか、ポカーンとした間抜けな顔のドラゴンと目が合う。


 爬虫類なのに表情が分かるくらいの間抜け面になるって、一体どれだけ予想外だったんだろう。


 そんな事を考える余裕すらある私は、


 「伏せ」


 冷たく言い放ちながら、ドラゴンの横っ面を引っ叩いた。


 『ぶぇあ!?』


 パァン!という乾いた音が響くと同時に、ドラゴンが奇声を発しながら地面へと叩き付けられ、体重とその他諸々の衝撃により地面が揺れる。


 「...全く、服に砂埃が付いてしまった」


 すたっ、と優雅に着地した私は、独りごちながら埃を払う。


 執事さんにクリーニングしてもらわなきゃだわ。

 端っことか、焦げてなきゃいいけど、どうなんだろう。

 後でちゃんと確認しないと。


 そんな中、ドラゴンが勢い良くガバッと起き上がった。


 『なっ、ええ!?』


 口の中が切れてしまったのか、血を垂れ流しながら驚くドラゴン。


 だがしかし、このままだとまた調子に乗って暴れるかもしれない。

 そう考えた私は、この戸惑った状態から畳み掛けて、なし崩し的に私が強者だと認めさせてしまおう、と判断した。


 「こんな簡単な命令も聞けないのかね?本当に躾がなっていないな」


 冷徹に言い放った後、私も何をやったかさっぱりだけど、一瞬でドラゴンの巨体を足で踏み付け、その顔をもう一度引っ叩いた。


 『ぶへあ!?』


 その勢いで、またしても地面へと叩き付けられるドラゴン。


 「伏せ、と言っているだろう。寝るんじゃない」

 『ぶへぅああ!?』


 向きが違う、とばかりに顔の反対側を叩くと、今度はその勢いでゴロゴロと地面を転がる。

 土煙というか、土埃というか、砂が舞い上がって、ただでさえ悪かった視界が更に悪くなった。


 あ、やべ、ちょっと距離空いちゃった。


 『き、貴様ぁあ...!!人間の分際でぇえ!!もう許さん、絶対に許さん...!!』


 案の定、起き上がって来たドラゴンが、血反吐と怨嗟を吐きながらさっきまでとは正反対の魔力を溜め込み始めた。

 周囲の温度が下がっているのか、足元の地面から霜柱が上がっていく。


 『驚いたか?、炎を吐いたからそれしか能がないと勘違いしていただろう!!

 ふはははは!真の強者というものは、奥の手というものを持っているものなのだ!

 私は誇り高き龍族!!人間などにコケにされてたまるものか!!』


 不敵に笑いながら叫んだドラゴンの身体に、最大限にまで溜まった魔力がその口から噴射される。


 それは白い光となって、辺り一面を凍り付かせた。



 私以外。



 『..................へ?』



 .........いや、うん、なんかごめん。





 

ドラゴンカワイソス。

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